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都が新たなベビーシッター策~利用者拡大で「待機児童は減るのか」「質の担保はどうなる」~

吉田大樹労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表
ベビーシッターを活用したい利用者にとって都の新たな施策は朗報となるだろうか(写真:アフロ)

東京都が来年度から新たなベビーシッター施策に乗り出す。

2015年度から始まった「子ども・子育て支援新制度」では、「居宅訪問型保育事業」についても認可事業の対象としていた。しかし、これまでその多くは、障害児ケアや通常の保育が困難な場合に限定されたものとなっていた。

原則として3歳未満の保育を必要とする乳幼児であって、次のいずれかに該当すると市町村長が認めたもの

  1. 障害、疾病等の程度を勘案して集団保育が著しく困難であると認められる場合
  2. 保育所の閉鎖等により、保育所等による保育を利用できなくなった場合
  3. 入所勧奨等を行ってもなお保育の利用が困難であり、市町村による入所措置の対象となる場合
  4. ひとり親家庭の保護者が夜間・深夜の勤務に従事する場合等、保育の必要の程度及び家庭等の状況を勘案し必要な場合
  5. 離島その他の地域であって、居宅訪問型保育事業以外の地域型保育事業の確保が困難である場合

出典:厚生労働省

待機児童対策でベビーシッターの活用が可能に

都は2018年度から居宅訪問型保育、いわゆるベビーシッターの認可の活用を広げ、待機児童対策でも利用できるように、新たに「区市町村認可居宅訪問型保育促進事業」を始める。

これまで都内区市町村の財政的な負担が4分の1必要だったが、これを都が全額負担する形にして、認可型の居宅訪問型保育を始めやすい環境づくりを区市町村に促すことになる。

実際に事業を始めるかどうかは住民のニーズを把握した上で区市町村の判断にはなるが、財政上の負担がなければ、区市町村もスタートが切りやすくなる。

認可外のベビーシッターも拡充へ

また、認可外のベビーシッターに対しても、「ベビーシッター利用支援事業」を拡充させる。

対象は、

  • 保育認定を受けたにもかかわらず保育所などに入所が認められずに待機児童となっている子の保護者
  • 子が0歳児で保育認定を受けず、育児休業を1年間取得後に復職する保護者

ーーが入所決定までの間、認可外のベビーシッターを利用する場合だ。

都では利用料の一部を区市町村と連携して助成する形となるが、2つのパターンが用意されている。

  1. ベビーシッター事業者連携型:認定した一定の基準を満たす事業者から、ベビーシッターを派遣(利用者は割引券で支払い)
  2. 区市町村バウチャー型:保護者が支払うベビーシッターの利用料を区市町村を通じて助成

そして、待機児童か育休満了者の子かによって都・区市町村の負担の割合が異なる。前者は都が8分の7で区市町村が8分の1の負担、後者は都の全額負担だ。

これによって利用者はベビーシッターを月最大で160時間まで活用できることになるが、この場合、公費負担は月額で最高28万円にも及ぶ。財政状況が豊かな都ならではの思い切った施策と言えるだろう。利用者の自己負担は4万円で済む。ただし、所得に応じた負担ではないため、低所得者世帯が仮にこの制度を使わなければならない状況に陥った場合、この負担は決して安いものではない。ただし、基本的には低所得者世帯は中・高所得者世帯よりも認可保育所などに入りやすいため、こうした事態は想定しにくいと都では見ている。

質の高いベビーシッターの養成へ

都では「待機児童の保護者に加え、育児休業を1年間取得した保護者を対象とし、保護者の多様なニーズに応える」としているが、利用が増えることで懸念されるのが質の問題であろう。

質を担保する観点から、都は「居宅訪問型保育者養成のための研修」を拡充し、単に量を増やすだけではなく、質も担保できるように施策を盛り込んだ。

都内のベビーシッター業者は公益社団法人全国保育サービス協会に加盟している団体だけでも35にも及ぶ(2018年3月8日現在)。利益を著しく優先するような悪質な業者が生まれないように都はこれまで以上に眼を光らせる必要があるだろう。居宅訪問型保育の拡大に舵を切る都の責任はきわめて重い。

ベビーシッターの質を担保するために、認可外のベビーシッターのあり方などについて検討をした厚生労働省の専門委員会がベビーシッターの届出制を決めてから3年以上の月日が経った。筆者も同委員会で委員を務めさせていただいた。

その後、児童福祉法が改正され、2015年4月から、認可を受けずに乳幼児の居宅等に訪問して保育を行う場合、都道府県などに届け出ることが義務づけられ、立入調査や行政処分(事業停止命令や施設閉鎖命令)が指導監督の対象となった。さらに、翌年4月からは、法人や個人、事業の規模を問わず、すべての事業者に対して届出が義務づけられている。

研修がさらに充実し、質が担保された上でのベビーシッターの拡大となれば当然利用者は歓迎だろう。基本的に送迎の負担がなく、1人の保育者が1人の子の面倒を看る形の居宅訪問型保育に目を向ける保護者も増える可能性が高い。ただ、1対1という保育の中で、解消の見通しが立たない都の待機児童を果たしてどこまで受け止めきれるかは未知数と言わざるを得ない。

2014年3月に発生したベビーシッターによる預けられた子どもの殺害事件から4年の月日が経った。再び同様の事案が発生することがないように今回の都の取り組みが質・量の両面を確実に実施できるように、利用者は注視していく必要があるだろう。

労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

1977年7月東京生まれ。03年3月日大院修士課程修了(政治学修士)。労働専門誌の記者、父親支援団体代表を経て、16年3月NPO法人グリーンパパプロジェクトを設立。これまで内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を歴任。現在、こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ち部会」委員、「こどもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、東京都「子供・子育て会議」委員などを務める。設立したNPOで放課後児童クラブを運営。3児のシングルファーザー。小中高のPTA会長を経験し、現在鴻巣市PTA連合会前会長(顧問)。著書「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)。

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