日本の炊飯器を買って帰国“疑惑”も。中国で大注目のアジア最速の男
東京五輪の陸上男子100メートルで9秒83のアジア新記録を出した中国の蘇炳添選手。国内での注目度がすごい。本人はコロナ対策で隔離中だが、リモート取材などで見せる屈託の無さと謙虚な人柄が、人気と好感度の秘密のようだ。
まさか日本の炊飯器を買って帰国か?
中国で話題をさらったのが、成田空港で蘇選手が帰国の際に撮影された映像。中国の赤いユニフォーム姿の蘇選手が、ほぼ立方体の箱を右手にぶら下げて歩いていた。その荷物が、ちょうど炊飯器の箱のように見え、蘇選手が日本から炊飯器を買って帰ったのでは、という“疑惑”が浮上した。
ファンたちからは、日本製品として炊飯器と並んで人気の「(温水洗浄機つき)便座は?」という声も上がれば、広東省出身の蘇選手が、地元の特色料理でもある鍋でコトコト煮込んだスープを日本でも食べられるように、炊飯器を持ち込んだに違いない、などという“推理”まで飛び交った。
コロナ対策で帰国後も隔離中の蘇選手は、リモートチャットに応じた際にその点を突っ込まれ、思わぬ“釈明”に笑顔で応じた。
「炊飯器だなんて一言も言ったことはないですよ。あれはプリンターです」
他の人の荷物を運ぶのを手伝っただけで、箱が炊飯器のものとさえ気づきもしなかったという。
中国メディアは、「炊飯器事件が解決」などと面白可笑しく報じた。
授業を逃げ出しても追いつかれる?
蘇選手は、広東省の曁南大学で准教授を務める。地元の新聞「南方都市報」によれば、最近、蘇選手の受け持つ科目で、学生の募集があった。オリンピックを終えて、大学で授業が始まるらしい。
学生たちからは、こんな書き込みがあったという。
「蘇選手の授業は、絶対にエスケープできない。絶対逃げ切れないよ」
「多分、授業をサボっても先生に追いつかれる」
「卒業の条件は、走りで蘇先生に勝つこと」
先生の凱旋を心待ちにする学生たちの気持ちが伝わる。
蘇選手は8月1日に行われた陸上男子100メートルの準決勝を、9秒83というアジア新記録で突破。3時間を待たずして、同じ日に行われた決勝では6位。メダルには届かなかった。
タイムでは銀メダルも狙えた?と言われたら...
国営中国中央テレビの人気対談番組「面対面」の取材に、やはりリモートで応じた蘇選手は、試合を振り返り自らの弱点も謙虚に認めた。
「準決勝の後の2時間で直ぐに調整して、決勝でうまく力を出せるのが最も重要だが、自分に一番足りなかったのは、この能力だった」
蘇選手が、準決勝で出したタイムは、アメリカのフレッド・カーリー選手が決勝で銀メダルを獲得したタイム9秒84を上回る。
しかし蘇選手は、「決勝に進んだ時、おそらくメダルを獲得する力はすでに残っていなかった」と冷静に分析した。
メダルを取れず残念だ、と一部で報道されていることについて、蘇選手はこう言って笑った。
「みんな私への期待が高すぎますよ」
パリ五輪への意欲については、「まだ走れていれば挑戦する」という32歳の蘇選手。中国での期待と話題は、まだまだ続きそうだ。