中国人客が台湾人スタッフに「台湾は中国のもの」と発言するよう強要
日本のホテルで中国人の客が、台湾人のスタッフに対し、「台湾は中国のもの」と無理やり言わせようとしたトラブルがあった。台湾側では反感を買っている。
中国人の男が台湾人のスタッフに対し...
男性客 「中国人と言えよ」
スタッフ「台湾人です」
男性客 「台湾人は中国人じゃないのか」
スタッフ「台湾人は中国人ではありません」
SNS上の動画を見ると、そんなやり取りが撮影されている。この一幕を、台湾メディアも取り上げ、「中国人客が日本のホテルで騒ぎを起こし、台湾人スタッフに中国人と認めるよう強要した」などと報じた。
「政治の話はやめましょう」と対応するも...
舞台となったのは9月末の日本のホテルという。中国人の男性客がフロントのスタッフが台湾人であることを知り、このようなやり取りになった。
動画は中国人の男性客自身が撮影したようだ。「私は台湾人です」と答えた台湾人のスタッフに対し、撮影しながら回答を要求している。
男性客 「もう一度聞くぞ。台湾は中国のものか」
スタッフ「台湾は中国のものではありません」
男性客 「あなたに言っておく。台湾は中国のものだ。あなたは台湾独立派だな」
スタッフ「政治の話はやめましょう」
威圧的な口調の男性客に対し、台湾人スタッフの方は静かな声で冷静に返答している。だが男性客は、怒りを鎮められなかったらしい。
中国の旅行予約サイトに映像を投稿し、「(ホテルを)チェックアウトして、以後は泊まらない」と“武勇談”を投稿した。
中国と台湾では意識が違う
中国と台湾では主張が異なり、人々の考え方も違う。中国は国内外で「台湾は自国の一部」と主張し、将来的な統一を目指しているが、台湾は「台湾はすでに事実上の独立国家」という立場。民主主義が定着した台湾で、大多数の人は共産党が支配する中国に統一されることは望んでいない。
ネット上の中国人によるものとみられる書き込みには「台湾は中国のものだ」と中国政府と同じ主張をするものや、男性客の行為を称えるものがある。
一方、台湾人によるものとみられる書き込みには、「台湾人は台湾人」「当然、中国のものではないですよ」というのがあるのも当然と言えば当然。その他にも、中国人の行き過ぎた民族主義をたしなめるものも多い。
「中国人はそんなに愛国なのに、なんで日本に行ってお金を使うの?中国に留まってこそ自分の国を愛するのでは…」「宇宙全部が中国のものです、それで嬉しい?」等々。
台湾人は中国人の「愛国」にうんざり?
台湾人が中国の「愛国」に辟易とした例で、記憶に新しいのは、8月に中国で起きた台湾系のホテルに対するボイコット騒ぎだ。きっかけは、フランスのパリにある台湾のエバーグリーングループのホテルで、五輪参加国の国旗として飾られていた中に中国の国旗が含まれていなかったことだった。これに中国人客が抗議するなどした際の動画が拡散し、ボイコットにまで広がった。
今回の騒ぎについて、台湾での報道の中には、「全世界で中国政府を除けば、皆、台湾は台湾だと知っているものの、最近こうした過激な人が増えているのは、中国当局が繰り返し強調しているからだ」と分析したものもある。
確かに習近平国家主席の台湾統一への意欲はつい最近も繰り返された。中国建国75周年を祝う式典の場で先月30日に行った演説でも「台湾は中国の神聖な領土」として「祖国の完全統一の実現」は「大義がある」などと主張した。
中国では指導者や政府の主張が「正解」とされる。その環境に晒され続けた結果、中にはその正解を声高に主張することで、まるで「正義」の体現者のように振る舞う人が現れる。
中国社会における「反日」も似たような位置にある。