K-POP界の新星クレヨンポップ、新曲はまさかのポンチャック!
いまなぜポンチャック!?
先月、現在のK-POP状況の一端に触れた記事を書いたが、そのなかで紹介したクレヨンポップが4月1日に新曲「オイ」(英題"Uh-ee")を発表した。そのミュージックビデオは、なんとも驚くもの。
なぜならポンチャックだったからだ!
なんと言っても印象に残るのは、その音楽である。
ポンチャックは、昔の安価なシンセサイザーを使った打ち込みのテクノサウンドだが、80年代に流行った日本のテクノブームとは違い、決して若者向けのものではない。2拍子のリズムで合いの手を入れる中高年向けの大衆歌謡曲だ。トロット(演歌)を自由に解釈したすえにたどり着いた、独自の表現美学を持つジャンルなのである。
この第一人者が、日本でも知られるあのイ・パクサ(李博士)だ。日本では90年代中期に電気グルーヴが見出し『ひらけ!ポンチャック』という曲を発表し、広く知られることとなった。
ただ、韓国では若者向けのグループアイドルや中高年向けのトロット、あるいはインディーズロック(ホンデ系等)などとは別種の、極めて傍流の位置に追いやられていたジャンルだといっていいだろう。そもそも、イ・パクサが日本に紹介された時点で、かなりマイナーだったらしい(そもそもカルトマンガ家・根本敬が見出した)。
しかし、それをいまもっともK-POP界でもっとも勢いのあるガールズグループ・クレヨンポップがやってしまったのだ。
「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」的意味不明さ
前回も触れたように、この曲は視覚重視のミュージックビデオとレトロ要素にこだわったすえにたどり着いたものである。衣装は、割烹着というか給食着のような白装束に赤いほっかむり。ダンスは、小刻みなブレイクダンスにサビの部分では片足を持ってピョンピョン飛び跳ねる。いやー、まるで意味がわからない!
それはオレンジキャラメルの新曲「Catallena」のように、ヒネりにヒネりを加えた末に辿り着いた地点なのでもあろう。ただ、オレンジキャラメルよりもさらに意図的にこちらは笑いを目指している。完全にコミックソングと言っていい。もしかしたら、レトロブームの極北なのかもしれない。
個人的に連想したのは、絶望的に意味不明な歌詞ながらも子供を中心に大ヒットしたミニモニ。の「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」(2001年)である。そんな感じである。
この曲がヒットするかどうかはわからないが、K-POP界のレトロブームは急激に変な方向に向かっている。しかし、この予期できぬ変異こそがなんともサブカルチャーらしい。
同時に音楽そのものに強い意味を求めないことは、日本の80年代のように社会的な成熟を意味しているようにも感じられる。たとえ、彼女たちが一発屋として終わったとしても、後年確実に思い出される一曲となるだろう。
なお、この曲は4月1日に発表されたので、エイプリルフールの可能性は捨てきれない。ただし、さすがにミュージックビデオまで創り曲も販売しているようなので、ウソではないと思われる。