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読売巨人軍で「ヘビ万」なる新たなる野球賭博の発覚

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

「文春」改め「センテンススプリング」からの砲撃が鳴りやみません。以下、週刊文春からの転載。

野球賭博で無期失格選手が告白「巨人では“ノック練習”も賭けの対象だった」

http://news.livedoor.com/article/detail/11247935/

「“ファンゴ”というノックがあるんです。それぞれのポジションが1か所に集まって順番にノックを受けるんですが、このノックの時に賭けたりとかはありました。エラーしたら、同じ組の人に1万円ずつ渡すんですよ。

賭けるときには“ヘビ”っていう名称になるんですが、練習がファンゴになると、『じゃあ、今日は“ヘビ万”いきますか』っていう感じで始まります。“ヘビ万”はレートが1万円ということです。レートが千円なら“ヘビ千”。ジュースを賭ける時は“へビジュー”って呼んでました」(松本氏)

松本氏もこの賭けに参加しており、一回あたり最高で「十数万円負けたことがある」(同前)という。

この巨人軍内で広く行われていた行為に関して巨人軍は「選手が技術向上を目指し、厳しい練習のモチベーションを維持するため、かなり以前から自然発生的に行われていたもので、賭博行為とは性質が異なる」などという見解を示しているそうです。

巨人軍自身も判っていてあえてそういう「苦しい言い訳」をせざるを得ない立場なのは理解していますが、根源的にその行為が賭博に当てはまるかどうかは、それが「偶然の勝敗によって、財物の得喪を争う」という法的要件に沿っているかどうかで決定するものであって、「技術の向上をめざし」とか「選手のモチベーションを維持する為」とか「自然発生的に」とかは全く関係ないんですよ。

本行為では、「ノックでエラーをするかどうか」という偶然性のある事象に基づいて、エラーした人とエラーをしなかった人の間で1万円という「財物の得喪が争われている」ワケですから、どう解釈しても賭博です。ていうか、これが賭博にならないんだとするならば、ゴルフでの「握り行為」も含めて世の中の多くのスポーツにまつわる賭博行為が「賭博ではない」ということになってしまいます。

ということで、ここで日本野球機構の定める「日本プロフェッショナル野球協約」を見てみましょう。

日本プロフェッショナル野球協約

http://jpbpa.net/up_pdf/1427937913-568337.pdf

第180条 (賭博行為の禁止及び暴力団員等との交際禁止)

1 選手、監督、コーチ、又は球団、この組織の役職員その他この組織に属する個人が、次の行為をした場合、コミッショナーは、該当する者を1年間の失格処分、又は無期の失格処分とする。

(1)野球賭博常習者と交際し、又は行動を共にし、これらの者との間で、金品の授受、饗応、その他いっさいの利益を収受し若しくは供与し、要求し、申込み又は約束すること。

上記規約に今回の「ヘビ万」なる賭博行為が抵触するかどうかは、この野球協約の定める「野球賭博」の定義が如何なるものか次第。試合の勝敗結果に賭けることのみをこの協約上で「野球賭博」としているのならセーフ、ホームランを打ったとか、三振を取ったとか、エラーをしたとか、野球にまつわる個別の事象に対して賭けを行うことまでを広く「野球賭博」としているのなら、本事例はほぼ間違いなく「アウト」です。

巨人軍広報によれば、チーム内で「かなり以前から自然発生的に行われていた」とされていますが、どのように対処が行われるのでしょうかね。「プロ」としての身の処し方が問われる問題です。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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