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サンウルブズ流大、2点差負けに「よくやった」は疑問。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
判断力に長けるスクラムハーフ。チーフス戦の出場も狙う。(写真:松尾/アフロスポーツ)

 試合直後のテレビ用インタビュー。聞き手に「勇敢なプレーを見せてくれました」と問われても、流大は険しい顔つきだった。

「ありがとうございます。ライオンズを追い込むことはできましたが、最後に勝てなかったのは実力がない証拠なので、また練習を頑張っていきたいと思います」

 現地時間3月17日、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズは、南アフリカのヨハネスブルグで前年度準優勝のライオンズと激突。昨年の直接対決時は7-94と大敗していた相手に、38-40と競り合った。

 サンウルブズは過去2年で通算3勝、今季もライオンズ戦終了時で開幕4連敗中だ。強豪クラブとの接戦は、観方によっては善戦に映るかもしれない。

 もっとも、今季から参画した共同キャプテンの流はただただ悔しさを露わにする。

 続けて「昨季のファイナリストであるライオンズをここまで追い込めたのはポジティブなことではないでしょうか」と水を向けられても、この調子である。

「そうですね。敵地でこれだけのパフォーマンスをできたことはよかったですけど、勝ちを目標にしていただけに、この勝ちゲームを落としたことはすごく残念です」

 チームは19日に日本へ戻り、24日の第6節(東京・秩父宮ラグビー場)に向け調整を進める。あのインタビューの時は、どんな心境だったのか。帰国した流が、勝利を目指すリーダーとしての思いを明かす。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ライオンズ戦後のインタビュー、印象的でした。本当に悔しいと思い、あの発言をしたのですね。

「もちろんそうです。多分、いい試合をしたと思われたのだと思うのですけど、勝ちに行っていたので率直に悔しい気持ちでした」

――「よくやった」「いい試合だった」という感想は、「本当は負けると思っていた」とほぼ同義。当事者には、いい気持ちにならない方もいるかもしれません。

「そうですね。(サンウルブズにとっては)アウェーゲームで、相手は昨年の準優勝チーム。条件的に難しいと踏まえたうえでの評価だったのだと思うのですけど、実際にロッカーへ帰った時は皆も下を向いていて、悔しそうでした。これが次へのステップにはなるな、と思いました」

――ただ第3節のシャークス戦(3月10日、ダーバンで22―50と大敗)と比べ、内容的な向上が見られたのも確かです。修正点は。

「ディフェンスでアグレッシブに行ってボールを奪えて、アタックも自分たちのやって来たプランで得点できた。セットプレーからもトライを獲れましたし、裏にボールを落とすというプランもはまった。フォワードはモールディフェンスでも頑張ってくれました」

 実際に、そういう試合だった。

 特に目立ったのは、自軍キックオフ直後の鋭い防御。「ライオンズは自陣ゴール前からアタックしてくるアタッキングチームだという分析をしていたので、あそこでプレッシャーをかけよう、と(話していた)」との言葉通り、相手スタンドオフのエルトン・ヤンチースをパニックに陥れたようだった。

 もちろん、要所でエラーを重ねるなどして負けたことも確か。だからこそ流は、安易に善戦をよしとしない。ロッカールームで目視した仲間の「悔しそう」な顔も「ステップアップ」のきっかけとしたいと言い、こう続ける。

――ツアーを通してチームがまとまるという感覚はありましたか。

「1戦目の前よりも2戦目の前の方が、練習の質もアティチュード(態度)もよかった。ただ、今週はショートウィークですし、相手も強い。徐々にではなく、今日からスイッチオンしてやろうという話をしています」

――長旅の疲れは。

「僕はないです。フライト時間に寝る時間をコントロールしたので。今回の帰りで言うと、南アフリカからシンガポールまでの飛行機でちょっと多めに寝て、シンガポールから日本へ帰る飛行機では寝ずに、という感じです。南アフリカを出たのは、向こうの時間で昼の1時くらいで日本時間でいうと夜。(日本時間で言う)朝方に起きて、あとは寝ずに映画や試合の映像を観ていました」

――飛行機に乗った瞬間から、日本時間に合わせた暮らしをイメージしていたのですね。

「はい。難しいという選手もいたと思うのですが、僕は、そうできました」

――チーフス戦に向けて。

「大きなプラン変更はないです。ただ、相手はアンストラクチャーが強い。そこに付き合いすぎると相手のペースになるので、ディフェンスでプレッシャーをかけ、ボールを奪ってからのアタックで(得点を重ねたい)」

――日本に残っていた選手の合流などで、次戦のメンバーは過去2戦と比べるといくらか入れ替わるかもしれません。

「さらに今週はショートウィークで、練習期間が1日短い(月曜が移動日だった)。オフフィールドでのコミュニケーションが大事になるので、しっかりとトークします。さっきも言ったように大きなプラン変更はないので、ツアーへ行ったメンバーがしっかり落とし込めればと思います」

 国内の帝京大学、サントリーではキャプテンとして各カテゴリーのタイトルを獲得。スーパーラグビーの舞台でも、「いい試合だった」に満足する気はない。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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