ヤングなでしこ、国内最後のトレーニングマッチ。U-20ワールドカップ前に浮かび上がった課題とは?
【最後のアピールの場】
静岡県内で行われているU-20日本女子代表候補合宿で、U-20日本女子代表チーム(以下:U-20女子代表)は12日、地元の藤枝明誠高校(以下:藤枝明誠高)とトレーニングマッチを行った。
「日本が世界に立ち向かう上で、シンプルな体のぶつかり合いとか、瞬間的なスピードは、いつも課題になります。そういう面で、スピード感のあるチームや選手との試合は、大会に向けた良いシミュレーションになります。男子選手とはいえ、フィジカルコンタクトで当たれられてよろけるような弱さでは困ります」(高倉麻子監督)
このトレーニングマッチは、今年11月13日に開幕するU-20ワールドカップのメンバー選考への、最後のアピールの場でもある。
「ここでアピールしないと終わっちゃうよ!」
試合前、コーチ陣が選手たちにハッパをかける。
U-20女子代表の1本目のメンバー(※)は、DFは左から北川ひかる、市瀬菜々、羽座妃粋、守屋都弥。ダブルボランチに杉田妃和と大久保舞を置き、MFは左に水谷有希、右に西田明華、トップ下に三浦成美が入り、トップに籾木結花が入る4−4−1−1(4−2−3−1)でスタートした。
※試合は30分×3本で、U-20女子代表は、GKの松本真未子、平尾知佳、浅野菜摘の3人が30分間ずつ出場。フィールドプレイヤー10人が45分間ずつの出場となった。
スピードのある相手に対し、序盤はバタつく場面もあったが、時間の経過とともに、U-20女子代表は積極的にボールを動かしながらゲームをコントロールできるようになった。
「もうちょっとラインをあげよう!」
積極的に声を出し合い、前線から相手のパスコースを限定していく。中盤ではボランチの杉田が安定したボールキープで捌(さば)きながらリズムを作り、前線では籾木が積極的に裏を狙うアクションを見せた。だが、相手の速い出足でパスをさらわれる場面が続き、なかなか良い形でシュートまで持ち込めない。中盤で奪われるとDFラインの裏のスペースに長いパスを送られ、スピードで振り切られてピンチに直結する。
一進一退の展開の中、U-20女子代表に決定的なチャンスが訪れたのは20分過ぎ。中央で縦パスを受けた籾木が、右に展開。オーバーラップした守屋が絶妙のグラウンダーのクロスを入れると、中央で大久保が右足で合わせた。しかし、わずかに枠を捉えきれない。
2本目の開始早々の33分、ペナルティエリア付近でボールを奪われてミドルシュートを決められ、先制を許す。その後は攻め急がずにゲームをコントロールする藤枝明誠高に対し、U-20女子代表は前線からプレッシャーをかけていった。40分過ぎには、籾木から左の水谷に展開し、最後は再び中で杉田が受けてミドルシュートを放つが、これはGK正面。
2本目の途中で、U-20女子代表はフィールドプレイヤー10人を総入れ替え。メンバーはDFは左から畑中美友香、宮川麻都、乗松瑠華、清水梨紗、ダブルボランチに隅田凜と林穂之香、MFは左に松原志歩、右に塩越柚歩、トップ下に長谷川唯が入り、トップに河野朱里が入った。
長いパスを入れてくる相手に対し、日本は中央でCBの乗松が1対1の強さを見せる。攻撃ではその乗松のロングフィードから、河野がゴール前に抜け出し決定的なチャンスを迎えたが、相手GKが一足早く飛び出してキャッチされてしまう。2、3本ダイレクトパスがつながると一気にチャンスになるのだが、肝心のフィニッシュが決まらない。
78分には、FKからこぼれ球を押し込まれてリードを広げられる。U-20女子代表はトップに高さのある上野真実を入れてゴールを狙いに行った。右サイドを駆け上がった松原のクロスに河野がボレーで合わせた場面も決定的だったが、このシュートもわずかに枠を外れてしまう。逆に、85分には、コースをついた技ありのシュートを決められ、0−3でゲームは終了。
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【トレーニングマッチを通じて見えたもの】
試合を通じて見えた課題の一つが、シュートの意識と精度の向上だ。MFの長谷川は振り返る。
「遠い距離からでも足を振って(シュートを狙って)行く、というのは、チーム全体の課題だと思いますし、個人的にもミドルシュートは練習しています。相手を抜いた瞬間など、もっと速いタイミングや余裕がないところでも積極的にシュートを打って、決めていきたいです」
U-20ワールドカップでは、どんな相手に対しても日本がボールを持つ時間は長くなることが予想される。その中では、一つのミスが即失点につながる可能性が、常につきまとう。特に、グループリーグ初戦のナイジェリアは男子高校生並みの身体能力の高さを持っており、カウンターやセットプレーには十分に注意したい。そして、相手に流れをつかませないためにも、しっかりとシュートを決め切ることが不可欠だ。大会前の段階で、課題をしっかりと見つめられたことは大きい。
一方、個々ではサイドや前線での積極的な仕掛けや、味方を動かすコーチングなど、それぞれに持ち味をアピールしようという意図が伝わってきた。
「選手の組み合わせや、どのポジションで起用するかということ、パズルをどうはめるか。そのあたりの重心の置き方で少し変わってくると思いますが、(21人のメンバーは)おおよそは決まっています」(高倉監督)
大会前最後の国内合宿となったこの5日間を通じて、チームとしての一体感がより強固なものになったのは確かだ。選手それぞれの言葉からは、ワールドカップにかける強い思いも伝わってきた。
チームは11月の大会本番直前にオーストラリアで合宿を行い、そのまま大会入りする。その前に、今月末、大会に臨む21人のメンバー発表を楽しみに待ちたいと思う。