GP2王者のバンドーンも登場!ヨコハマ初のスーパーフォーミュラはいきなりの好タイム!
11月25日(水)、三重県の鈴鹿サーキットでは「スーパーフォーミュラ」の2016年シーズンに向けた合同テストが始まった。今回のテスト走行は来季よりタイヤを供給する「横浜ゴム」の専用タイヤを全チームが装着する初のテスト走行であり、まずそのタイムに注目が集まった。それに加えて、数多くのルーキードライバーたちがテストドライブするとあって話題豊富なテストになっている。
GP2王者バンドーンが初テスト
初めてスーパーフォーミュラのマシンを駆るルーキードライバーたちの中で最大の注目は、2015年のGP2でチャンピオンに輝いたストフェル・バンドーン(ベルギー)の参加であろう。バンドーンはF1の「マクラーレン・ホンダ」でリザーブ(控え)のドライバーであり、F1傘下のGP2では圧倒的な強さでチャンピオンを獲得しただけに、来季以降の参戦が実現するならば楽しみだ。
注目のバンドーンは初走行を終えたあとの会見で「GP2でチャンピオンを獲りましたが、来年の選択肢にF1は無い状態です。その中で、スーパーフォーミュラでテストをすることになりました。ホンダのスーパーフォーミュラチームであるドコモ・ダンデライアンでテスト走行をするというのは自分にとっても良い経験になると考えていますし、僕にとってマクラーレン・ホンダF1チームと近いところにいられることは良いことです」とテスト参加への状況を説明した。
ただ、来年参戦するかについては「来季についてはまだハッキリとは決まっていません。ただ、このテストは来年に向けてマシンや選手権を知る良い機会です」と語り、参戦については明言を避けた。
バンドーンはマクラーレン・ホンダの育成ドライバーとしてGP2を制し、近い将来のレースドライバーの昇格が期待されている逸材。アブダビGPが週末に控えているため、今回のスーパーフォーミュラのテストは25日(水)のみの参加だが、鈴鹿サーキットには新井康久・ホンダF1プロジェクト総責任者の姿もあり、マクラーレン・ホンダと密接につながったテストだったことがうかがえる。
とはいえ、来季マクラーレン・ホンダのリザーブドライバーを務めることが既に発表になっており、現時点では2016年の開幕戦・鈴鹿はF1中国GP(4/17)決勝、第2戦・岡山はF1モナコGP(5/29)、そして最終戦・鈴鹿はF1メキシコGP(11/6)と日程がバッティングしている([www.jaf.or.jp/msports/msinfo/image/ms_news273.pdf 11/6のJAFモータースポーツニュース参照])。世界選手権のスケジュール変更に影響を受け、今後の日程調整の可能性もあるが、出場するならフル参戦を期待したいドライバーだ。
関口雄飛が好タイムをマーク
ルーキードライバーとしては、バンドーンと同じドコモ・ダンデライアンからフォーミュラルノー3.5シリーズ参戦のジャズマン・ジャファー(マレーシア)、インディカー参戦のステファノ・コレッティ(モナコ)がドライブ。さらにホンダエンジン勢ではTEAM無限の2台目にGP2参戦のリッチー・スタナウェイ(ニュージーランド)が。さらに、トヨタエンジン勢では全日本F3王者のニック・キャシディ(ニュージーランド)がKONDO RACINGのマシンを。そして、TEAM IMPULのマシンにはSUPER GTで活躍する関口雄飛(せきぐち・ゆうひ)が乗り、それぞれのルーキーのドライブに注目が集まった。
そんな中、既に路面が濡れた状態で始まった午後のセッションでは、関口雄飛が果敢にスリックタイヤで攻め、午後のセッションのトップタイムをマーク。その後、雨量が増えたため、午後はそのまま関口がトップとなったが、最後は関口がS字コーナーでスピンしてストップ。午後のセッションはそのまま終了となった。闘将・星野一義監督から「ガンガン行け!」と言われた関口はアグレッシブに攻めた。「走り始めは(トップと)2秒あった差が1秒差まで縮まったものの、ダウンフォースのあるマシンに久々に乗ったので、自分の壁を作っている部分もあるので、さらに攻めていきたい。雨は得意なんで、非常に満足しているし、自分の実力は出せたかなと思います」と初テストを振り返った。
「結果を出せば乗れると思っていますし、明日も結果が出せると思っています」と最終日に向けたポジティブな気持ちを語った関口。これまでなかなかレギュラーシートのチャンスに恵まれなかった関口だが、アグレッシブな走りのキャラクターに期待するファンも多いだけに、彼のパフォーマンスがチャンスにつながるか期待が高まる。
横浜ゴムの新タイヤもコースレコードの1秒落ち
2016年からのタイヤサプライヤーとなる横浜ゴム。その初の合同テストということで、やはり注目されたのは各車のベストタイムだが、ドライ路面で行われた午前の走行では早くも好タイムが連発。TEAM IMPULのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが1分37秒831で初日のトップタイムをマークした。
アンドレ・ロッテラーが持つコースレコード(1分36秒996)からは約1秒落ちとなるタイムだが、今季の最終戦で記録された最速タイムが1分37秒963だったということを考えると、走り出しとしては上出来というよりは期待以上だったと言えるだろう。
とはいえ、ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル株式会社の秋山一郎・開発本部長は「高速耐久性と荷重耐久性を重要視してタイヤを作ってきました。短期間での開発で、およそ20年ぶりのトップフォーミュラ復帰で、当時と比べると10秒以上速くなっているので、自社のベンチテストのクライテリア(判定基準)を決めるところからやっていましたから、大変でしたね。タイムも一概に比較はできないんですが、37秒台に入ったことは嬉しかったし、ホッとしました」と慎重にコメント。
基本的には今回のテストで使用するタイヤが開幕戦でも使用される方向とのこと。また、「通年で競技ができるタイヤをまず目指しました」と秋山部長が語るとおり、シーズンを通じてドライ、ウェット各1種類ずつのコンパウンドのタイヤが使用されることになりそう。F1やインディカーのような異なるコンパウンドのタイヤを併用するのは、まだ先の話になりそうだ。
コーナーによってはF1を凌ぐコーナリングスピードを誇るスーパーフォーミュラにはGP2王者のバンドーンはじめ、海外のドライバーたちが数多く興味を示し、今回のテストにも参加している。スーパーフォーミュラの高いスピードレンジはタイヤが変わる来季以降も維持されることがまずは明確になり、今後、来季のシートを巡るストーブリーグにも目が離せない。