韓国経済3紙が元徴用工問題の駐日韓国大使の「最高裁は日本企業資産現金化を凍結すべき」の発言を支持!
元徴用工問題に関する韓国大法院(最高裁)の日本企業資産現金化判決が迫っている最中、日韓関係が取り返しのつかない状況に陥るのを避けるため現金化を回避すべきとの尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日大使の発言は元徴用工訴訟代理人(原告団)や支援団体から反感を買っているが、韓国の経済紙3紙が揃って尹大使の発言を支持する社説を掲載していた。
尹大使は8月8日に東京特派員らとの懇談会で「現金化されれば、日本が報復に乗り出す。そうなれば、日韓の企業が莫大な損失を被る。双方で数十兆ウォン、数百兆ウォン(数兆円、数十兆円)に上るビジネスチャンスを失うことになりかねない」などの理由から「現金化を凍結して韓日間の外交が可能になる空間を設けて欲しい」と訴えていたが、「韓国経済」(8月10日付)は「外交で解決すべき徴用工賠償 大法院に『司法自制原則』の熟考を求める」との見出しを掲げ、以下のように論じていた。
「尹大使が指摘したような『外交空間』の必要性に共感し、最高裁に2点注文したい。第一に、今回の件は個人の権利に関する問題ではあるが、国益に甚大な影響を及ぼす事案であるだけに『法的助言者』(Amicus Curiae)制度の趣旨に沿って政府の意見を最大限考慮すべきである。外交部はこの件を審理中の大法院民事第2及び第3部に対して外交的解決を希求しているので司法判断の留保を求める意見書を先月下旬に提出している」
「第二に、外交・安全保障上の訴訟は国際的に通用される司法自制の原則に立脚すべきである。米国の最高裁判所は『条約解釈時は行政府が一貫して支持してきた立場に大きな重きを置くべきである』との判決をしている。英国とフランスの裁判所も条約を解釈する際には『行政府の意見照会』を必須の手続きとしている。三権分立の原則が厳存しているものの裁判所が外交問題を特別に扱う場合は相手国に対する司法効力が限定的であることが多い。国家の全体的観点から一貫性を堅持する必要性が高いからである」
「現在、徴用工賠償と関連して『代位弁済』案など多角的な解決策が議論されている。現政権は前政権と異なり、日本側と問題解決のための協議を積極的に進めている。外交問題が外交領域で解決する時間を与えるため(大法院は)判決を留保すべきである。一つの判決が取り返しのつかない国家的損害を招くようなことにでもなれば、それは大法院が手に負える問題ではない」
「ファイナンシャルニュース」(8月10日付)も「駐日大使、外交による徴用工賠償の解決を」と題する見出しを掲げ、以下のように主張していた。
「我々は早ければ来週にも大法院が三菱重工業の資産の一部を現金化する問題を決定することから尹大使の発言に留意している。大法院民事第3部は19日までに審理を行うかどうかを決定する予定だ。大法院が三菱側の再控訴を棄却すれば、現金化プロセスが始まり、韓日関係は戻ることのできない破綻の道を歩むことになる」
「尹大使は日帝強制労働者問題に関連して韓国政府が被害者に代位弁済する案を考慮できるとの個人的意見を提示している。日本企業が裁判所の判決に従い、強制動員被害者らに賠償するのを韓国政府が代わりに弁済し、後に日本政府が金額を補填する案である。尹大使は外交官ではなく、学者出身の対日外交専門家である。従って、誰の目も気にせずに果敢に自らの所信を明らかにしたものと思う。このままにしておくと『最悪の状況』が目に見えてる状況下にあって駐日大使の原論的な所信発言をあげつらっている場合ではない。時間がないのである」
最後に取り上げるのは「毎日経済」(8月12日付)で、同紙の社説「強制徴用現金化迫る 大法院は外交解決のための時間を与えるべき」は以下のように尹大使を擁護していた。
「日韓関係の将来を決定するかもしれない強制徴用賠償の件に関して大法院は勇断を下すべきだ。現在、大法院民事第3部は日帝強制徴兵賠償と関連した2審判決に不服従として三菱が再控訴した事件を審理している。仮に大法院が審理の必要性を感じないと判断した場合、案件が提起されてから4か月目の8月19日までに『不続行』棄却判決を出さなければならない。即ち、戦犯企業の資産のキャッシュアウトプロセスを開始することを意味する。資産の強制売却を『レッドライン』としている日本が事態を傍観することはあり得ない。自国企業の保護という名目で報復措置をとれば、我々も黙ってはいられない。結局、報復が報復を呼ぶ悪循環にエスカレートするに違いない。だからこそ尹駐日大使は『両国の企業が数十兆~数百兆ウォンの損害を被る可能性があるので、現金化プロセスの凍結が必要である』と警告しているのである」
「外務省が大法院に対して『外交努力をしているのでそのことを考慮してもらいたい』と意見書を提出し、司法に自制を求めるのは至極当然のことだ。『決して負けない』と叫び、反日扇動していた前政権はこうした司法への要請を問題化しただけで日韓関係の正常化のためにやったことは何一つなかった。国家間の利益が複雑に絡み合う外交・安全保障問題に限っては国政に責任を負う政府の意見を司法が最大限尊重するのは正常なことだ。それは国益のためである。(中略)世界的に外交と安全保障の国益を考慮に入れた司法の自制は長年の慣行である。また、(大法院は)韓国と日本のすべての国民が二国間関係の改善を望んでいるという事実も直視すべきである。全経連が実施した『日韓国民意識調査』によると、86%と68%が『両国政府は関係改善に努力すべきだ』と答えていた。大法院は何が国益にかなうのか、二国間関係の改善に何が必要なのかを判断すべきである。政府が合理的な解決策を創出できるよう外交的時間を与える次元から大法院は司法上の自制を発揮すべきだ」
「毎日経済」が言及した日本の経団連(日本経済団体連合会)にあたる韓国の全経連(全国経済人連合会)の日韓関係に関する「韓日国民意識調査」は昨日(11日)公表されていた。
日韓両国の成人男女1632人を対象に5月と7月、2度実施されたこの調査によると、「両国の関係改善のため両政府が共に努力すべき」という声は日本では67.6%、韓国では85.8%もあった。昨年の調査(2021年4月)よりも日本では2.9%、韓国では7.8ポイント上昇していた。
また、尹錫悦(ユン・ソクヨル)新政権発足後の日韓関係については日本では33.4%と、3人に1人しか楽観的に見ていないが、韓国では半数以上の51. 0%が「改善する」と楽観していた。
その一方で「両国の関係改善は経済発展に寄与するか」との設問では日本人の63.0%、韓国人の81.0%が「寄与する」と回答していた。
この調査では韓国が求めている日本の半導体輸出厳格化措置の解除に関しても「規制解除が両国の経済発展にプラスになるか」と、問い質していたが、韓国では61.0%が「プラスになる」と回答したのに対して日本は39.5%しかなかった。日本人の半数に近い45.2%が「変わらない」と答えていた。
日韓首脳会談の早期開催が両国の関係改善に及ぼす影響については韓国では50.7%が「良い影響をもたらす」と回答したのに対して日本では43.8%が同様の回答をしていたものの「変わらない」とみている回答も多く、日本では46.6%もあった。(韓国は40.9%)
この世論調査では「関係改善のため過去と未来のどちらを優先的に志向すべきか」との質問も出されていたが、韓国では53.3%が「未来」、46.7%が「過去」と答えたのに対して日本では88.3%が「未来」と回答し、「過去」と回答した人は11.7%しかなかった。
最後に、日韓関係が未来志向に向かう上での先行課題については韓国で最も多かった回答は「過去史問題の解決も供わなければならない」で51.1%。「未来志向の関係を築くためには、過去ではなく未来に目を向けるべきだ」との回答は21.3%にとどまった。
一方、日本では60.8%が「すでに謝罪しているから、これ以上謝罪する必要はない」と回答し、32.4%が「過去の事態を解決するためには謝罪も必要だが、韓国政権で交代が行われる度に謝罪を要求するのは自制すべき」と答えていた。ちなみに「未来志向の関係のためには、ドイツ首相のナチス関連の謝罪の場合のように、追加の謝罪を行うべきである」と答えたのは6.8%しかなかった。
今回の調査では外されていたが、昨年の調査では相手国に対する好感度調査も実施しており、日本人の対韓好感度は「非常に好感を抱いている」(5.7%)と「好感を抱いている」(14.5%)合わせて20.2%なのに対して韓国人の対日好感度は「非常に好感を抱いている」(2.8%)と「好感を抱いている」(13.9%)合わせて16.7%しかなかった。