NBAのコートで奮闘する178センチの30歳ルーキー
NBA西地区セミファイナルは、フィニックス・サンズがデンバー・ナゲッツを相手に2連勝した。ホームの大歓声を背にしたサンズは、7日の第1戦を122-105、9日の第2戦は123-98で快勝した。2試合を見る限り、両チームの差は大きいと感じる。
しかし、敗れたナゲッツのなかで強烈な存在感を示しているのが、ポイントガードのファクンド・カンバッソだ。アルゼンチン生まれのカンバッソは、30歳のルーキー。今季からNBA選手となった異色のプレーヤーである。レギュラーシーズンは65試合に出場したものの、スターティングとしてのプレーは19回のみ。178センチの身長はNBAのなかで一際小さい。
それが、Playoffに入ってから全ゲームでスタメンとして起用され、コート狭しと縦横無尽なハードワークを続けている。
1991年3月23日、アルゼンチン、コルドバ生まれのカンバッソは、17歳にして祖国でプロ選手となる。国内のベストプレーヤーとして6シーズンを過ごした後、2014年からはスペインリーグを舞台に腕を磨く。そして2020年11月、遅まきながら世界最高峰の地、NBAに辿り着いた。
本コーナーのサッカー編で度々登場する元U20アルゼンチン代表のサッカーコーチ、セルヒオ・エスクデロは言う。
「アルゼンチンのバスケットボール選手といえば、まず挙げられるのが、サンアントニオ・スパーズで16年間も活躍したマヌ・ジノビリです。彼は25歳でNBA選手となり、4度もチャンピオンとなりました。素晴らしい功績ですよね。
他にもNBA選手は誕生しましたが、僕の国のバスケットボールファンのなかでは、ジノビリの次の成功者がカンバッソだと語る人が多いです。彼らは共にリオデジャネイロ・オリンピックに出場しましたが、以降のナショナルチームはカンバッソ中心となりました。替えが絶対にきかない大黒柱です。
2メートル近くあったジノビリと比べ、カンバッソはNBA選手として本当に小さい。リーグで一番背の低い選手じゃないですか。それであんなに堂々としたプレーができるのだから、バスケットボールを知り尽くしていると言っていいですよ。その裏で物凄い努力をしていますがね」
7日のゲームでは36分5秒コートに立ち、14得点6アシスト、9日は29分3秒のプレーで13得点したカンバッソ。30歳という年齢もあるが、プレースタイルも、とてもルーキーには見えない。幾つもの修羅場を潜って来た冷静さを感じる。
Playoff進出を決めた折、カンバッソは語った。
「私は考えて練習することが好きだ。どんなゲームでも100%の力を出そうと決めている。そのためには日々のトレーニングで自分の100%を注ぐ必要がある。ナゲッツのコーチが私を上手く使ってくれている点に感謝している。このチームは素敵だ。誰もがハードワークする。それが結果に繋がっているんだ」
現地時間、11日、13日に行われる第3戦、第4戦の会場はデンバーだ。フランチャイズ・ファンの熱い視線を受けるこのオールドルーキーが、何を見せるかに注目だ。