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天理大学・小松節夫監督、決勝進出決めたフィジカルと留学生について語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
球を持つシオサイア・フィフィタは日本代表入り目指す。後方右はタックラーの岡山。(写真:築田純/アフロスポーツ)

 ラグビーの大学選手権で9連覇中の帝京大学を制したのは天理大学。関西大学Aリーグ3連覇中の黒いジャージィは、2019年1月2日、東京・秩父宮ラグビー場での準決勝で王者を29-7と制した。

 メンバーの平均身長で約4.3センチ、平均体重で約5.2キロも劣るなか、スクラム、ブレイクダウン(ボール争奪局面)などフィジカルを要する局面で引けを取らなかった。

 天理大学がファイナリストとなるのは7季ぶり2度目。初回は2011年度で、いまはなき東京・国立競技場で実施された。当時の天理大学は、立川理道キャプテンを擁して帝京大学の3連覇阻止へ12-15と迫った。立川は大学卒業時に日本代表入りし、2015年のワールドカップイングランド大会などで活躍した。

 今度のファイナルは1月12日、秩父宮でおこなわれる。相手は明治大学だ。

 試合後、小松節夫監督が共同会見および単独取材に応じた。まずは会見中の問答から紹介する。「もともとは打倒関東と思っていたのですけど…」のあたりに、チームの進化したさまが伺える。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「きょうは10連覇がかかる帝京大学さんがチャンピオンチームとして相当な圧力をかけてこられると思っていました。監督さん(岩出雅之監督)のコメントを見ましても、『厳しさを出す』というようなことを仰っていて、それがどれくらいのものかと感じながら、ゲームに入りました。前半は風下ながらイーブンに試合ができていた。ただ、スペースを与えすぎていた。(ハーフタイムには)そこを修正して、規律を守ってディフェンスしようと話しました。結果として、1試合を通して規律のあるディフェンスの力(を保てたこと)が勝利に繋がったと思います」

――「打倒・関東」という意識について。

「もともとは打倒・関東と思っていたのですけど、最近は打倒・東海大学、打倒・帝京大学と、具体的に目標を定めることができまして。大くくりの関東ではなく、帝京大学に勝つにはどうしたらいいかというのを準備してきました」

――では、帝京大学に勝つためにどんな準備を。

「帝京大学と試合をすると色んな学びがありまして。夏合宿におこなった練習試合でいうと、1人ひとりの体幹、ブレイクダウンの強さを感じました。今日の試合では特にブレイクダウンで、2人いるところには2人、3人いるところには3人が入る。そこの厳しさは感じたので、そこで負けずにやろうと話しました。大東文化大学さんとの試合(12月22日の準々決勝)ではスクラム、きょうはブレイクダウン(がキーだった)」

――決勝戦へ。

「決勝は明治大学さん。春と夏にゲーム(練習試合)をしていまして、2回ともうちが勝っているんですけど、明治大学さんはそれを踏まえて準備される。(勝ったことは)忘れる。うちのチーム力をいかに出すかにかかってくる。大観衆のなかでチーム力を出せるかがポイント。決勝でも、自分たちの力を出せるようにしたい」

 会見後、小松監督は選手や報道関係者のごった返すミックスゾーンも通過。ここでは過去の強化プロセスや留学生の位置づけなどについてややざっくばらんに語った。

――小柄な選手を並べながら、帝京大学とのフィジカルバトルでほぼ互角だったような。ウェイトトレーニングの意識について伺えますか。

「(2011年度の)準優勝のご褒美にウェイトトレーニングルームを大きくしてもらって、器具もたくさん入れてもらって。それ以降、以前からもやっていたトレーニングを本格的にガッとやるようになりました。6年前に寮ができて、そこにもちょこちょこ(トレーニング器具)を入れて、色んな所で(トレーニングを)できるようにしました。

 トレーニングコーチは山下大輔というOB。彼は『そこ(フィジカル強化)をやったら天理大は勝てますよ!』とOBの目線から言ってくれたので、『じゃあ、(指導を)やってみろよ』となり。選手のウェイトに対する意識は変わりました。オールアウトという気持ちでやってくれていると思います」

――学生時代の立川選手はウェイトトレーニングが苦手だったと話したことがあります。その時と比べたら、天理大学の鍛える意識は高まっているのですね。

「あの頃のうちは、フィジカルどうこうという意識は劣っていましたね。スクラムも弱かったですし。ただ、いまはそこ(フィジカル強化)をやらないと、ということで、一生懸命、取り組んでくれています」

――海外出身選手についても伺います。天理大学は2008年入学のアイセア・ハベア選手、シオアシ・ナイ選手を皮切りに留学生を迎えるようになりました。彼らには何を求めていますか。

「もちろんフィジカル、パワーを出して欲しいとは思いますが、彼らは『助っ人的』な感じではあまりなくて。入ってみると、チームの一員としてやることはやるという感じでやっていますよね」

――確かに現在の留学生選手はボールを持って走るシーン以外でも光っています。ロックのアシベリ・モアラ選手は、接点上の相手ボールに何度も絡んでいました。「助っ人」ではなく「チームのパーツ」としての役割を全うしているような。

「そうなんですよ。ですから、わざと外国人選手を当てさせるようなサインプレーもあまり用意していません。中(下働き)で目立ってくれたらいいですよね」

 天理大学の魅力は、低くて強いプレーと理詰めのパス攻撃、何より特定の留学生選手が孤立して見えない統一感だろう。身長167センチのフランカー(岡山仙治、佐藤慶)から身長187センチのナンバーエイト(ファウルア・マキシ)が、ほぼ同じ態度でハードワーク。打倒・帝京大学を目指してきた明治大学にとって、手ごわい敵となりそうだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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