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政治とカネの問題で揺れる今こそ考えたい選挙。取材歴25年のライターの肩越しにカメラを置いて

水上賢治映画ライター
「NO 選挙,NO LIFE」の前田亜紀監督   筆者撮影

 「なぜ君は総理大臣になれないのか」にひっかけるわけではないが、「なぜ君は選挙へ行かないのか?」「なぜ君は選挙に無関心なのか?」。

 そう問うのが、ドキュメンタリー映画「NO 選挙,NO LIFE」といっていいかもしれない。

 実は、「選挙」には、筋書のないドラマ以上にドラマティックで、そう簡単には目にできない人間の心からの喜怒哀楽が詰まっている。フリーランスライター・畠山理仁氏の選挙取材を追った本作は、そのことを物語る。

 でも、実際の選挙の現実はどうだろうか?

 「選挙」について、「関心がある」と答える人は、いまの日本にどれぐらいいるのか。

 正直、「関心はない」というのが現実ではなかろうか。

 その現実を表すように、投票率の低下が言われて久しい。政治への無関心もよく聞く話である。

 投票の時間の延長や期日前投票、選挙年齢の引き下げなどが実施されてはいるが、いずれも投票率のアップにはつながっていない。

 それが日本の実情だろう。

 しかし、選挙がこのままでいいのか、関心を寄せなくていいのか、その結果、いま政治はどうなっているのか?

 そのこともまた「NO 選挙,NO LIFE」は物語る。

 選挙取材歴25年を超える畠山氏を通して、何を見て、何を考えたのか?

 「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川1区」「劇場版 センキョナンデス」「国葬の日」ではプロデューサーとして手腕を振るった前田亜紀監督に訊く。全七回。

「NO 選挙,NO LIFE」の前田亜紀監督   筆者撮影
「NO 選挙,NO LIFE」の前田亜紀監督   筆者撮影

2022年7月に行われる参議院選挙で意を決して取材を打診

 前回(第一回はこちら)、畠山氏を取材しようと思ったきっかけを語ってくれた前田監督。

 「いつか畠山さんの見ている選挙戦を見てみたい。畠山さんの肩越しにカメラを置くことはできないかと考えました」とのことだが、いろいろな理由が重なって、なかなか取材のタイミングがつかめないでいたという。

「『いつかこの人を取材してみたい』と思ったのが2020年のこと。

 ほんとうはすぐにでも取材したい気持ちがありました。

 ただ、『香川1区』のプロデュースなど、わたし自身がけっこうあわただしいことが続いてしまって……。

 なかなか畠山さんの取材に踏み出すことができないでいました」

この機会を逃したら、いつチャンスが巡ってくるかわからないと

 意を決したのが2022年だった。

「2022年7月に参議院選挙が行われる。

 この機会を逃したら、いつチャンスが巡ってくるかわからないと思いました。

 そこで、もう意を決して畠山さんに取材の打診をしました。

 メールで『取材をさせていただけないか』と」

「NO 選挙,NO LIFE」より
「NO 選挙,NO LIFE」より

取材への畠山氏のリアクションは?

 畠山氏のリアクションはどうだっただろうか?

「いや、それがレスがなかなかこなかったんですよ。

 それまでに何度か原稿を依頼したことがあったんですけど、そのときは即返信があったんです。

 締め切りを守るか守らないかは別として(笑)、連絡するとすぐ返してくれる方でした。

 ところが企画の主旨を書いて取材のお願いをメールしたんですけど、返信がなかなかこず、プツンと連絡が途絶えてしまいました。

 『嫌なんだろうな』と思いました。

 取材を生業としている人はわかると思いますけど、自分が取材しているところを取材されるというのは嫌なモノです。

 わたしも基本は取材をする側の人間なので、その気持ちはわかります。なんともいえないやりづらさがある。

 だから、断られるかもなと思いつつも、こちらとしてはもう待つしかない。

 すると少ししてメールへの返信が来ました。『ありがとうございます。こんなありがたいお話しはありません』と書かれていて、いくつかの条件を守ってくれるならばということで了承いただきました。

 たぶんかなり迷った時間があったんだろうなと想像するんですけど、まずOKをいただけてひと安心。

 『肩越しにカメラを置かせてください』ということで撮影が始まりました」

取材条件としてつきつけられたことは?

 つきつけられたいくつかの条件はなんだったのだろうか?

「こちらをけん制するような条件ではないです。

 たとえば、選挙期間は候補者への取材に集中したいので、(わたしのことを)お構いは出来ませんといったこと。あとは、基本的に朝8時から夜8時まで、候補者の選挙運動中は話しかけないでほしい、とも。

 さすがに『話しかけないで』はちょっと取材にならないので困ったなと、思いましたけど、畠山さんは全候補者に取材することをモットーとしている。全候補者に取材をしないと記事を書かないことにしている。

 なので、作品をみていただければわかりますけど、変な話、候補者よりも畠山さんの方が分刻みのスケジュールで、時間に追われている。

 都内各所で行われている街宣を巡って、候補者たちに直接会って話をきかないといけない。

 毎日、選挙の現場をかけずりまわっている状況ですから、そんなところでわたしに、たとえば『少し時間をとって話を聞かせてもらえませんか』と言われても困るわけです。ですから、そこは機会を伺いながら話を聞ければいいのかなと思いました。

 そういった選挙取材の妨げにならないよう、いくつかお願いをされました」

(※第三回に続く)

【「NO 選挙,NO LIFE」前田亜紀監督インタビュー第一回はこちら】

「NO 選挙,NO LIFE」ポスタービジュアル
「NO 選挙,NO LIFE」ポスタービジュアル

「NO 選挙,NO LIFE」

監督:前田亜紀

プロデューサー:大島新

公式サイト:https://nosenkyo.jp/#

ポレポレ東中野ほか全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて(C)ネツゲン

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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