クラシコで「勝負強さ」を見せたレアル・マドリー。「レジスタ化」するメッシを止めるためのジダンの策。
今季初のクラシコの勝敗が、決した。
現地時間24日にリーガエスパニョーラ第7節のバルセロナ対レアル・マドリーの一戦が行われ、バルセロナの本拠地カンプ・ノウでマドリーが3-1と勝利した。245試合目のクラシコで、マドリーは通算成績を97勝52分け96敗としている。
この試合でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の是非を論じるのは簡単だろう。だが勝利と敗北には理由がある。マドリーは勝利するべくして勝利し、バルセロナは敗れるべくして敗れたのだ。
バルセロナはアントワーヌ・グリーズマンとセルジ・ロベルトがスタメンから外れた。ペドリとセルジーニョ・デストが先発起用され、ロナルド・クーマン監督に右サイドの制圧を任された。
今季から【4-2-3-1】を使用しているバルセロナだが、クラシコでは守備時【4-4-2】になる戦い方を選んだ。この選択の狙いは2つだ。ひとつは、リオネル・メッシの守備負担の軽減。もうひとつは、マドリーのビルドアップ封じである。
■クロース潰し
とりわけ、トニ・クロースに対するプレッシングだ。バルセロナは2トップの一角に入ったアンス・ファティがプレスの先鋒になる。ファティがセルヒオ・ラモスとクロースのラインを消すようにプレスを行い、また場合によってはダブルボランチの一人であるセルヒオ・ブスケッツがクロースにプレスを掛けた。
マドリーはフェデリコ・バルベルデ、クロース、カゼミーロで中盤を形成してきた。ルカ・モドリッチのいない状況でクロースが担う役割は大きかった。センターバックとサイドバックの間に落ちる得意な形で、クロースが後方からの球出しを円滑にしようとした。これをファティが潰すことで、マドリーのプレーリズムを破壊するのがクーマン監督の目的だった。
そして、もう一点、注目は「メッシのレジスタ化」だった。
今季クーマン監督の下で新たなポジションを与えられているメッシだが、得点数が減っている。クラシコ前の段階のリーガ直近3試合で0得点0アシスト。リーガの3試合でまったく得点に関わらないのは2014年1月以来のことだ。また、リーガ開幕から4試合1得点は2005-06シーズン以来のワーストの数字である。
■ピッチの中央に君臨したメッシ
ただ、近年メッシのアシストは増えている。2019-20シーズン、メッシはリーガで21アシストを記録。2008-09シーズンのシャビ・エルナンデスの20アシストを上回るアシスト数を記録した。メッシの「レジスタ化」が進むなかで、クーマン監督の敷いた布陣は彼に恩恵をもたらした。時折、【2-3-4-1】の形を採るバルセロナで、メッシはまさにピッチの中央に君臨していた。
時間の経過と共に、バルセロナはボール保持率を高め、メッシとファティが縦関係になっていく。ファティのゼロトップ、メッシのトップ下になる。ポゼッション率(バルセロナ52%/マドリー48本)、パス本数(バルセロナ528本/マドリー473本)と主導権を握っていたのはバルセロナだった。
対して、マドリーは守備を重視していた。
マドリーが昨季のリーガで優勝した大きな要因は守備力にあった。38試合25失点とリーガトップの数字を誇った。また、19試合を無失点で終え、1986ー87シーズンと1987-88シーズンのクラブ記録に並んだ。
■バルベルデの起用とS・ラモスの存在感
特筆すべきはバルベルデの起用だろう。前線からのプレッシングと、バルセロナの攻撃起点である左サイド(ジョルディ・アルバーデ・ヨングーファティーメッシ)を無効化するために、右インサイドハーフにバルベルデで配置された。加えて、この試合では負傷で交代を強いられたナチョ・フェルナンデスの代わりに入ったルーカス・バスケスが好パフォーマンスを見せ、右サイドの強化に助力した。
また、攻撃面においてもバルベルデの起用は当たった。2列目の飛び出しで、バルセロナ守備陣を翻弄した。しかしながら勝負を決めたのはセットプレーだ。VARの介入は物議を醸した。だがクロースの正確なプレースキックでゴール前で「何かを起こす」のは、守備を念頭に置いていたジダン監督のプラン通りだったはずだ。
そして、PKで決勝点を挙げたS・ラモスの存在感は圧倒的だった。ビッグマッチにおいて、S・ラモスはマドリーに必要不可欠な選手になっている。マドリディスモを体現する彼のリーダーシップなくして、現在のレアル・マドリーは成り立たない。
カディス戦とシャフタール・ドネツク戦の連敗で、指揮官の解任の可能性さえ浮上していた。だがジダン監督は勝負強さを見せ、カンプ・ノウのクラシコ6試合で3勝3分けと無敗を貫いている。マドリディスタに歓喜が届けられ、ジダン・マドリーの航海は続く。