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あなたの血圧が下がらないのは「腸活に良い」と言われている「酪酸」のせいかも【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

酪酸に血圧上昇作用の可能性

「酪酸」と聞いて何を思い浮かべますか?「お腹に良い」と答える方も多いと思います。大腸で酪酸を作れる唯一の菌である「酪酸菌」は「善玉菌」とされるのが一般的ですね。

でもこの「酪酸」、血圧には悪い影響を与える可能性が、7月22日(2024年)、明らかになりました [文末文献1] 。

報告したのは、アムルテルダム大学医療センター(オランダ)のバーバラ・J.H.・フェルハール氏たち。掲載された学術誌は高血圧関連では世界一読まれている「ハイパーテンション」です。編集を担当する世界的専門医たちが選りすぐりの研究を掲載します。この研究も目を引いたということですね(加えて信頼性が高くないと載せてもらえない)。

酪酸サプリで上の血圧が「10」、下も「5」mmHg上昇

フェルハール氏たちは当初、「酪酸サプリ」で血圧が「下がる」と考えていました。

そこで高血圧の人を23人集め、降圧薬の影響を除去するために4週間薬をやめてもらい、その後、「酪酸サプリ」を飲む群と「偽サプリ」を飲む群にくじ引きで分け、4週間飲み続けてもらったのです。

その結果、予想とは真逆の結果が観察されました。

「偽サプリ」群では上の覚醒時血圧が「138→139 mmHg」とほぼ不変だったのに対し、「酪酸サプリ」群では「135→145 mmHg」へ跳ね上がったのです。

「酪酸サプリ」群では下の血圧も、5 mmHg上がっていました。

「酪酸」が血圧を上げたとしか考えられない

酪酸サプリにはナトリウムが含まれているため、ナトリウムによる血圧上昇を疑う「鋭い」読者もいらっしゃるでしょう。しかしフェルハール氏たちもこの点は考慮しており、「偽サプリ」にも「酪酸サプリ」と同量のナトリウムを配合していました。

したがって「酪酸サプリ」群で見られた血圧上昇は、「酪酸」によるものと考えざるを得ません

ただしこの試験に参加したのは23人という少人数。結論を一般化するには少なすぎるのも事実です。そこは注意が必要でしょう。

では仮に「酪酸」で血圧が上がるとすれば、なぜなのでしょう?

はっきりしたことは分かっていませんが、フェルハール氏たちは「レニン・アンジオテンシン系」という、血圧を上げる仕組みが作動した可能性を指摘しています。

この系が作動すると血管が収縮します。なので血液が血管壁にかける圧力(血圧)が高くなるのです。

まとめ

いかがでしたか?酪酸サプリが高血圧患者の血圧を大幅に上昇させたという研究をご紹介しました。

もしもあなたが高血圧や高めの血圧で悩んでいたら、酪酸サプリや酪酸菌サプリをしばらく控えてみませんか

それで血圧が下がればラッキーですし、下がらなければお腹のために再開するもよし、です。

高血圧については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 酪酸サプリは高血圧患者の血圧を大幅に上昇させる。

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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