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「ここがゴールではない」。ラグビー日本代表FB松島が語るMVPが取れた理由と、サンウルブズとW杯

斉藤健仁スポーツライター
トップリーグの年間表彰式で笑顔を見せるFB松島(撮影:斉藤健仁)

 1月21(日)、2017-18シーズンのジャパンラグビートップリーグの年間表彰式が東京都内のホテルで行われ、トップリーグMVPには、2年連続2冠を達成したサントリーサンゴリアスから、FB松島幸太朗が初選出。24歳11ヶ月のMVP受賞は過去最年少で、松島は2年連続3度目の「ベスト15」にも選ばれ、チームのトップリーグ優勝と合わせて「3冠」に輝いた。

 松島はアタックではリーグ戦と日本選手権兼総合順位決定トーナメントの計15試合中13試合に出場して8トライを挙げ、FBとしてディフェンスでも最後の砦として身体を張り、ロングキックも光った。

 MVPは優勝したチームから選ばれるのが恒例であり、FB松島はキャプテンCTB流大、元オーストラリア代表SO/CTBマット・ギタウ、攻守でチームを支えたCTB村田大志らを抑えての初受賞となった。

◇テストマッチでの経験が糧に。「満足できるシーズンでした!」

 「どこかで自信もありました!(優勝した後、MVPに)選ばれてもいいように心の準備をしていました。僕かなと思っていました(苦笑)」

 と語っていたFB松島は「たくさん素晴らしい選手が数多くいる中で、この賞をもらえて光栄です。サントリーのチーム、スタッフのおかげで今季は個人として成長できた。チームの調子も良くていい形でボールがまわってくることもあって、自分なりにいいプレーができました」とサポートしてくれたチームや仲間に感謝しつつ、初受賞に笑顔を見せた。

 トップリーグ4年目を迎えていた松島は、昨シーズンから続けてきたウェイトトレーニングの効果もあり、「トップリーグのシーズンは長いので、無理に1回でトレーニングするのではなく継続してやってきて、フィジカルの部分が良くなったので、大きな選手に対しても前に出られた」とプレーの幅が広がったことを実感している。

 ケガで長期離脱をしないようにコンディションに考慮して「監督やドクターとコミュニケーションを取れていた」、またメンタル的にも「ミスを引きずらないこと」を意識してプレーを続けた結果、13試合の出場につながった。

 

 さらに、今季自分が一番伸びた要因を本人は「日本代表でインターナショナルレベルの試合を経験したことで、サントリーに戻っても落ち着いてできている」と言うように、やはり、日本代表でアイルランド、オーストラリア、フランスと世界の強豪と多く対戦をしたことが、「(FBとして)大事なところでの判断が大事です」と強調するように、トップリーグでのプレーにも還元されていたというわけだ。

 もちろん24歳のFBはMVPを狙っていたわけではなく、「とにかく毎試合、いいアピールを心がけました。それが(MVPに向けて)自然とアピールになった」と言い、続けて「やっぱり(日本選手権の)決勝で、リーグ戦で1回負けているパナソニックに、勝てたことが一番うれしかった。満足できるシーズンでした!」とこの1年間を振り返った。

◇束の間のオフの後、1月末からサンウルブズの合宿に参加

 松島は、日本選手権決勝から2週間という束の間のオフを経て、1月28日から大分・別府で始まる日本を本拠地とするスーパーラグビーチーム「サンウルブズ」のキャンプに参加し、2月24日(土)の開幕(ブランビーズ戦)に備える。

 2015年はワラターズで、2016年はレベルズ(ともにオーストラリア)に在籍していたため、松島がサンウルブズでプレーするのは昨年に続き2年目となる。「メンタル的にはまだ準備しきれていないところはありますが、切り換えて、サンウルブズがどうしたら勝てるか考えながらやっていきたい」

 またサンウルブズが掲げる「トップ5」という目標に対しては「しっかりと選手一人ひとりがその気持ちを持っていないと無理だと思う。チームに入って『それでいいや』ではなくて、選手が勝ちたいという気持ちがあるかどうか(が大事)。(個人としては)しっかりスーパーラグビーに出て、それに値するプレーをしていきたい」と意気込んだ。

◇「勝ち癖をつけることが2019年の結果につながる」

 日本代表28キャップを誇り、2015年のワールドカップを経験しているFB松島は「もう(2019年ワールドカップは)来年なので自分の中では時間がないと思っている。今年、いかに(サンウルブズや日本代表で)勝ち癖をつけることが、来年の結果になると思う」と冷静に先を見つめた。

 また今季、サンウルブズや日本代表ではチーム事情でFBだけでなく、CTB、WTBとしてもプレーすることもあったが、以前から「15」番にこだわりを見せ、「(FBの方が)自分が活きる」と考えているため、「僕が決めることではないですが」と前置きした上で、「そろそろ(ポジションやメンバーを)固めることを考えてもらいたい。その方が連携もよくなるし、選手もやりやすい」と、今年からサンウルブズの指揮官も兼任することになった日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)に要望した。

 また、高校卒業後の18歳から南アフリカのシャークスアカデミーに在籍し、常に海外挑戦に身を置いてきた松島は、2020年以降は再び海外でのプレーを視野に入れつつ、「(2019年の)ワールドカップでいかに活躍できるかが、(自分にとっての)ターニングポイントになると思う。まずはワールドカップで結果を出したい」と2019年への思いを語った。

◇トップリーグのMVPが「ゴールではない」

 高校時代、桐蔭学園(神奈川)で花園を沸かせていたFB松島の勇姿が記憶に残るラグビーファンも多いことだろう。日本の大学に進学することなく、南アフリカやフランス、オーストラリア、さらに日本のトップリーグ、サンウルブズ、さらに日本代表でプレーすることで成長の歩みを進めてきた。

 「ここ(トップリーグのMVP受賞)がゴールではない。まだ先にいっぱい(世界が広がっている)。自分のプレーをどんどんして、こういう表彰式に出られるようにしていきたい」と語る松島の目には自信がみなぎっていた。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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