15戦全勝14KOの世界ヘビー級7位だが…
14戦全勝オールKOでWBO7位、WBA8位、WBC9位にランクされているヘビー級のジャレッド・アンダーソン(23)。2017年、2018年とアマチュア全米王者となった姿をボブ・アラムに認められ、TOP RANKと契約してプロに転向した。
WBCヘビー級王者、タイソン・フューリーのスパーリング・パートナーを務めたことで一躍脚光を浴びたアンダーソンは、先日、故郷であるオハイオ州トレドのハンティントン・センターに<凱旋>した。
対戦相手は、ミズーリ州セントルイス出身の元IBF最重量級王者で、サウスポーのチャールズ・マーティン(37)。
マーティンという選手は、身長196cm、リーチ203cmの恵まれた体躯を持ちながら、どうしても、それを生かし切れない。
彼は2016年1月に空位決定戦でIBF王座を獲得したが、3カ月後の初防衛戦でアンソニー・ジョシュアに2回KOで敗れている。2018年9月8日にはポーランドの人気選手、アダム・カナッキに10回判定負け。2022年の元日にも、ルイス・オルティスに6ラウンドでストップされていた。ボブ・アラムにしてみれば、マーティンはアンダーソンの踏み台とするのに最適な元世界ヘビー級チャンピオンだった筈だ。
が、期待の若手は、7234人の地元ファンを前にキャリア最大の試練を迎えた。14戦全勝オールノックアウトのパンチは、数字ほどの威力はなく、組み立てもアンバランスでヘビー級として一級品のパフォーマンスとはとても呼べなかった。
第5ラウンドにはマーティンの左を喰らい、あわやダウンという状態に陥った。98-91、99-90、99-90のスコアで勝者となり、試合後は客席のファンが差し出すシューズやキャップにサイン、そして記念撮影を繰り返していたが、その実力には疑問符が付けられる。これまでの14人の対戦相手は、EASYな選手をアラムが選んでいたことが証明されてしまった。
敗者は「アンダーソンは非常にいい選手だ。狡猾さを備えている。通常、相手にダメージを与えた際、俺はフィニッシュまで持っていける。でも、ミドル級選手のように速く動き、ピンチを凌いだ」と語ったが、トップ選手の技量で無いことは明白だった。また、第3ラウンド終了間際にアンダーソンはダウンを奪ったが、マーティンは立ち直り、仕留められなかった。
ヘビー級の低迷が問題視されて久しい。イキのいい若手の出現が待たれるが、現時点でのアンダーソンでは厳しいと言わざるを得ない。
ただ今回、オハイオ州トレドの地で、大きなボクシングイベントが行われたのは6度目であった。1919年7月4日のジャック・デンプシーvs.ジェス・ウィラード、1948年3月4日のシュガー・レイ・ロビンソンvs.オシー・ハリス、1948年1月17日のジョー・ルイスvs.アート・スウィデンのエキシビション、1960年4月9日にはアマチュア時代のモハメド・アリ(当時は本名のカシアス・クレイ)vs.ジェファーソン・デイビス、1968年4月6日にも、まだアマだったジョージ・フォアマンがヘンリー・クルンプと戦っていた。
郷里のファンから熱い声援を浴び、アンダーソンが当地を盛り上げたことは、間違いない。果たして、23歳の若きヘビー級世界ランカーは、どんな現役生活を送るか。