《珍事》ハリケーン・レズリーから変わった低気圧、南ヨーロッパに上陸
13日(土)ハリケーン・レズリーから変わった温帯低気圧がポルトガルを直撃し、被害をもたらしました。レズリーのように熱帯性の嵐のままでヨーロッパに接近することは珍しいことです。
1842年に記録が始まってからというもの、ヨーロッパはこれまでに一度しか熱帯生まれの嵐の直撃を受けたことがありません。その一度というのは、2005年にハリケーンから変わった熱帯低気圧「ビンス」がスペイン南部に上陸した時のことでした。
そのため先週末にレズリーがハリケーンのままイベリア半島に接近した際には、もしかするとハリケーンのままで上陸するのではないかとの憶測が流れ、話題となりました。幸いなことに、上陸直前に温帯低気圧へと変わったのですが、ポルトガルでは大きな被害が発生しています。
ポルトガルでは49メートルの最大瞬間風速が吹き、BBCによると30万世帯以上が停電、27人が負傷、また1,000本以上の木々が倒れたとのことです。
(↑リスボンの被害)
「温帯低気圧」と「熱帯低気圧」の違い
そもそも「温帯低気圧」と「熱帯低気圧」の違いはなんでしょうか。
「温帯低気圧」は冷たい空気と温かい空気の温度差から生まれるのに対し、「熱帯低気圧」は暖かい空気からできていて、大量の水蒸気をエネルギー源とします。
「熱帯低気圧」が強くなって、最大風速が17メートル以上になったものが「トロピカルストーム」、さらに34メートル以上になったものが「ハリケーン」です。
レズリーの軌跡
ハリケーン・レズリーは、何度も強まったり弱まったりを繰り返した上に、極めて珍しい動きをしました。「ゾンビ」という別名が付くのもなるほど納得です。
レズリーは9月23日に大西洋の真ん中で発生し、海上でくるくると旋回したのち、大西洋に浮かぶスペイン・マデイラ島に接近しました。この島で「トロピカルストーム」警報が発令されましたが、これは史上初めてのことのようです。その後13日(土)にポルトガル沖でようやく温帯低気圧へと変わり、首都リスボン周辺に到達しました。発生から消滅までの期間は21日以上で、驚異の長寿ハリケーンともなりました。
(↑マデイラ島を襲った大波)
海を渡る元ハリケーン
レズリーのように、トロピカルストームやハリケーンのままでヨーロッパに接近する嵐は大変珍しいといえます。それはハリケーンが大西洋を北上する際に温度の低い海の上を通るために、冷たい空気が流入して温帯低気圧へと変わるからです。しかし近年の海水温の上昇に伴って、ハリケーンのままヨーロッパに近づく嵐の数が増えているようです。
例えば2017年のオフィリアは、ハリケーンのままヨーロッパ西部に向かい、温帯低気圧となったあとにアイルランドに到達しました。専門家は、温暖化が進むと、こうしたハリケーンが益々増えるおそれがあるとしています。