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増田康宏六段(21)新人王戦決勝進出 早咲誠和アマ(46)は惜しくも敗退

松本博文将棋ライター
2017年、竜王戦本戦で対局する増田康宏現六段(写真撮影・画像作成:筆者)

 9月24日、東京・将棋会館において新人王戦準決勝▲早咲誠和アマ(46歳)-△増田康宏六段戦がおこなわれました。10時に始まった対局は17時45分に終局。結果は152手で増田六段の勝ちとなりました。

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 増田六段はこれで決勝三番勝負に進出。2016年、17年に続いて、3度目の優勝を目指します。対戦相手は、初優勝を目指す高野智史四段(25歳)です。

増田六段、戦機をとらえて制勝

早咲誠和アマ(46)史上最年長での新人王戦決勝進出なるか? 強豪・増田康宏六段(21)と24日に対戦

 近年は公式戦でアマプロ戦が増えました。将棋界全体がレベルアップするとともに、アマ棋界も手厚くなり、アマがプロに勝ってもそれほどニュースになる時代ではなくなりました。

 それでもプロがあまりに負け続けては、プロの存在意義が問われることにもなりかねません。棋士側、そして棋士を応援する側からは、増田六段にストッパーとしての期待がかかったことでしょう。

 策戦家として知られる早咲さんは先手番を得て、角換わりに誘導しました。早咲さんが手早く銀を前に進める「早繰り銀」を見せたのに対して、増田六段は現代風の右玉に構えます。

 早咲さんは「しゃがみ矢倉」(菊水矢倉)から「銀冠」(ぎんかんむり)に組み換えました。対して増田六段は右玉から中央へと玉を移動します。互いに角の交換を警戒しながら、長い手待ちが続きました。

 互いに神経を使う展開で、時間は増田六段の方が多く消費することになりました。しかしその中で、増田六段は的確に戦機をとらえます。本格的に駒がぶつかったところで、増田六段がリードを奪いました。

 早咲さんはここまでのトーナメント、三枚堂達也六段(現七段)戦や大橋貴洸五段戦など、苦しい展開を辛抱して逆転してきました。しかし本局では、増田六段の指し回しが終始的確でした。

 増田六段は終盤、残り時間が切迫しながらも、攻守にわたってミスがなく、最後は早咲さんの玉をきれいに詰めあげました。

 増田六段はこれで決勝三番勝負に進出。3回目の優勝を目指すことになりました。長い新人王戦の歴史でも、3回優勝は森安秀光九段、森内俊之九段、藤井猛九段の3人しかいません。それら名棋士の系譜につらなることはできるでしょうか。

 早咲さんは、惜しくも決勝進出は逃したものの、アマチュア第一人者としての存在感を改めて示しました。普段は地元大分県で、大学職員として勤務されている早咲さん。

「また11月に赤旗名人戦に来ます」

 早咲さんはそう言って、帰路に着きました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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