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大相撲九州場所で活躍、初場所は再小結の阿炎 師匠代替わり後の変化語る「いい方向に向かって歩けている」

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
冬巡業から帰京後、錣山部屋で取材に応じてくれた阿炎(写真:すべて筆者撮影)

大相撲九州場所で、大関・豊昇龍や大の里に勝って殊勲賞を受賞した阿炎。11勝4敗と堂々の成績で1年を締めくくり、来年初場所での三役復帰が決定した。先代の師匠(元関脇・寺尾)の逝去から約1年。現在の錣山親方(元小結・豊真将)の温かい指導のもと、変わってきたことや守られている伝統の両方を聞いた。

大活躍の九州場所 出稽古も積極的

――殊勲賞受賞の九州場所。ご自身で振り返っていかがでしたか。

「途中で集中力が切れることがあったので、そこが課題ですかね。技術面では、相手がいることなので、思った通りにできないし、そういう意味で反省点はないかな。思い切りよく相撲が取れて、各取組全部よかったと思います。いつも通りに臨めたからこそうまくいきました」

――大関相手にも関係なく、落ち着いていましたね。

「まあ、自分より後輩というか、後から入ってきた人たちですからね。自分はその前から、もっと先輩の大関たちと戦っているし、経験値が違うので、普通に臨めました」

――誰に対しても、あまり緊張していないように見受けられます。

「そう見せるのがプロだと思うんです。緊張していないことはないし、いい緊張感をもって臨めていると思います。何も考えていなかった頃は本当に緊張しなかったけど(笑)、責任ある立場としては適度な緊張感をもって相撲を取ったほうがいいし、それを見せずに抑え込むのがプロだと思っています」

――今年1年間の相撲を振り返って、総括するといかがでしょうか。

「着実に一歩ずつ進めてるんじゃないかな。今年30歳を迎えましたが衰えてもいないし、自分のスタイルで取れていると思います」

――いまいる場所よりもさらに強くなるために、どんなことをしていますか。

「基本は、ケガしないように現状維持が大切。加えて、上を目指して相手の研究をしています。自分の相撲の反省点も見るけど、この歳までやってきた癖はなかなか直りません。そう考えると、相手によってどう取り組むかが大事だなと思ってやっているつもりです。あとは、出稽古。九州場所だと、宿舎が一番近かった常盤山部屋や、時津風、阿武松にも行きました。東京では、力士会で横綱(照ノ富士)が、どこかで一緒にやろうと声をかけてくださいました。あとは、自転車で行ける距離なので荒汐にも行きたいです」

健康のためゴルフに本腰!? パパの一面も

――来年の抱負は。

「ゴルフでスコア100を切りたい」

――ああ、ゴルフ(笑)。私は一度もやったことがないのでわからないんですが、100を切るのはとてもすごいことなんですよね。

「自分もまだ何回かしかやったことないんですけど、最近血圧が上がっているから、私生活で運動を取り入れないとなと思っているんですよ、真面目な話。ウオーキングはつまらないし、せっかくならみんなもやっているゴルフで体を動かそうかなと。結構汗をかいて疲れるって聞きますから、好きなことで体を動かして、体力が落ちないようにしたいです」

――クリスマスはご家族で楽しく過ごしましたか。

「イヴは、子どもたちとシャンメリーを飲みました。本物のサンタさんが来てくれるレストランにも行って。プレゼントは、ちょっと小さかったからまた追加で買いに行きます(笑)」

師匠の代替わりで移り変わる部屋のいま

――先代の師匠が亡くなられて、約1年が経ちました。どんなことが変わってきましたか。

「稽古でいうと、ちょっと現代的になってきました。昔は根性と気合。やれば強くなるからやれ、という感じでした。いまは、ケガしたらちゃんと治そう、アドバイスはするけど自分で頑張ろう、っていうスタイルです。親方は、やる気のない子がいたらちゃんと『どうしたの』って聞く人だから、そういうところでいまの時代に合っているなと思います」

取材日、師匠の錣山親方(写真右)からクリスマスプレゼントを受け取った阿炎。「やっぱりいくつになってもうれしいですね!」と満面の笑みだった
取材日、師匠の錣山親方(写真右)からクリスマスプレゼントを受け取った阿炎。「やっぱりいくつになってもうれしいですね!」と満面の笑みだった

――逆に、先代の時代から変わらない教えや守られていることはなんですか。

「まずは『男の修行』。これは大事なことだからしっかり守っていこうと。あとは、古くからずっと先代が作って使っていた砂袋と、先代が用意してくれた運動をみんなでやっています。よきものは残して、変えたほうがいいところを変えながら、いい方向に向かってみんなで歩いています」

先代が大切にしていた「男の修行」の精神。これまで稽古の最後に全員でこれを唱和していた
先代が大切にしていた「男の修行」の精神。これまで稽古の最後に全員でこれを唱和していた

――年の瀬にお時間いただきありがとうございました。最後に、2025年の目標は。

「しっかり自分を忘れずに、自分のペースでやっていきたい。相撲の内容も、自分のペースにもっていけるようにしたいと思います。ゴルフはまだ下手ですぐ飽きちゃうけど、趣味でやっていきます。あと、来年は人の言うことを聞けるようになりたいですね」

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。新刊『おすもうさん直伝!かんたん家ちゃんこ』が1月18日発売予定。ほか著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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