本日最終日。いよいよ廃止、京急大師線産業道路駅前踏切。
京急大師線は京急川崎駅から分岐する距離わずか4.5kmの支線で、快特やエアポート急行が頻繁に走る本線に比べると都会の中にローカル線の雰囲気を残す「旅」を感じる貴重な路線です。
この大師線が横切る大きな道路が「産業道路」。その名の通り「産業道路」という駅前で片側4車線、3車線の上下7車線という大きな産業道路を京急の踏切が横切っています。
近くには首都高速の大師インターもあり、いつも渋滞しているような場所ですが、大師線は10分間隔で運転されて、上下線ですから約5分に1本電車が通る高密度の危険踏切です。
5分に1本の割合で通る京急の電車。
川崎大師への参詣鉄道
京急大師線の歴史は古く、明治末期に川崎大師への参詣客を輸送する目的で建設された路線ですが、沿線の工業地帯化で職員輸送という役割も担うようになってきた路線で、短い支線といえども観光(お参り)と地域の足(通勤通学、買い物)という2つの性格を持つ重要な路線です。
昭和の時代にはこの大師線の産業道路駅前の踏切のような国道や幹線道路を横切る踏切が幾つもありましたが、鉄道を高架化したり、あるいは道路を高架化、地下化することで改善されてきました。ところが、産業道路駅は大きな交差点が直近にあり、上には首都高速が走り、その首都高速のインターチェンジが近くにあるため、鉄道を高架化したり、道路を高架化、地下化することができないという地形です。
このため、京急の線路そのものを地下化するという大規模な工事にならざるを得ず、長年にわたって難工事が行われてきました。
そして、その工事がようやく終了し、明日3日には線路が地下に切り替わるということで、昨日、最後の姿をカメラに収めてきました。
大師線の各駅の構内にはこのように線路切り替えのポスターが掲示されています。
そして、工事の概略がお客様にわかりやすく解説されています。
工事でご不便をおかけするお客様に対して、こういう掲示があることで誰にでもわかりやすく進捗状況が解説されているのは、丁寧な会社の姿勢のあらわれだと言えるでしょう。
さて、筆者が一番興味があるのは「線路がどこから地下に入るのか」ということ。
地下鉄の漫才ではありませんが、建物が密集する地域で、今日までは地上を走っている電車を、明日には地下を走らせるわけですから、いったいどこから線路が地下に入るのだろうか、ということが実に興味深いところです。
全線を往復してみましたが、線路の両側に余裕がある土地はほとんどなく、地下への入口が口を開けているところはどこにも見当たりません。
1つ手前の東門前駅を出て、踏切を渡ったところから線路が板敷になっています。どうやらここから線路を地下に入れるようです。
駅構内に掲示されているポスターを見ると、本日の最終電車が終了した後、線路切り替え工事が開始され、明日の午前中には切り替えが終了し地下化されるとのこと。産業道路駅を挟んで川崎側と小島新田側の両方で同時に切り替え工事が行われますので、相当大がかりな工事になるようです。
東門前駅から産業道路駅側を見ると、こうなっています。
走りすぎていく電車は、明日からは多分あの辺りから地下に入っていくことになると思います。
こういう線路の切り替え工事は東急東横線の代官山や東白楽付近でも行われましたが、今回の大師線もわずかの時間にサッと切り替えるわけですから、相当大変な工事になるはずですね。
こうして写真を撮っていたら、「鳥塚さん、こんにちは。」と声を掛けられました。
筆者の友人で鉄道写真家の衣斐隆(えびたかし・44)さんです。
衣斐さんはお仕事として各地の鉄道を取材し、記録しているプロのフォトグラファー。
筆者と同じことを考えていたようです。
衣斐さんにとってはこの京急大師線の踏切を記録することも大切なお仕事ですからね。
「大師線産業道路駅の地下化は長年見続けていただけに感慨深いですね。車で産業道路を走行していて幾度となく踏切で引っかかって渋滞の原因となっていただけに、ようやくといった感じです。これで安全性が向上しますので安心です。」
と衣斐さん。
これだけの大きな道路の踏切ですから今まで鉄道会社も十分な対策を取って来ていましたが、念願の地下化で産業道路駅前の踏切が廃止されることは、大きな前進です。
京急さん、地下駅化完成おめでとうございます。
最後の難関が残っていますからもうひと踏ん張りですね。
今日は最終日とあって鉄道ファンの皆様で賑わうことが予想されますが、他の乗客や鉄道会社にご迷惑をおかけすることのないように気を付けて最終日を見送ってあげてください。
線路の切り替え工事についてはマスコミ各社が取材報道されると思いますので、そちらをご参照ください。
本日最終日を迎える産業道路地上駅のレポートでした。
▲衣斐さんのWeb Site。電車がたくさん出てきて楽しいです。
※注 文中の写真はすべて筆者撮影。