物価目標達成困難な日銀と国債買入の行方
総務省が2月27日に発表した1月の全国の消費者物価指数は、日銀が物価目標としている総合が前年同月比プラス2.4%、最も注目されている指数である生鮮食品を除く総合、いわゆるコア指数が前年同月比プラス2.2%となった。そして食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数、いわゆるコアコア指数は同プラス2.1%となった。
1月のコア指数から日銀が試算する消費増税の影響分を除くと前年同月比の上昇率はプラス0.2%程度となる。
内容をみると原油価格の下落を受けてガソリンや灯油が大幅下落となり、テレビや宿泊料、外国パック旅行も前年比での上昇率が縮小した。ただし、電気代は上昇し12月に比べてプラス幅が拡大している。
先行指標となる2月の東京都区部コアCPIは前年比2.2%の上昇となっていたが、全国の指数のほうがガソリンの占める比重が東京都区部より大きく、2月の全国コアCPIは1月よりも前年比のプラスが縮小すると予想され、ゼロ%近くになる可能性がある。また、4月からは電気料金の引き下げもあり、いずれ全国コアCPIは前年比でマイナスとなる可能性も出てきている。
FRBのイエレン議長はインフレ率の低下は原油価格の下落の影響で一時的なものと発言しており、日銀も同様のスタンスながら、1月はエネルギーを除く総合指数、いわゆるコアコアも消費増税の影響を除くとぎりぎりのプラスとなっている。
測定が難しい予想物価がどうなっているのかはさておき、実際の日銀が目標としている消費者物価指数は異次元緩和がスタートした2013年4月から2年程度で2%どころか、マイナスになる可能性が強まりつつある。4月からは消費増税の影響分もなくなり、昨年4月に便乗値上げがあったとすればその分も剥落することになる。
原油価格の下落は日本経済にプラスとの認識も強まったことで、日銀が2年で物価目標を達成できないかといって追加緩和を求める声は、少なくとも国内からはあまり聞こえてこなくなった。物価目標は引き下げるなり、時期を大きく先延ばししても良いとの声も、日銀の異次元緩和を先導したとされるリフレ派からも聞こえるようになってきた。
ただし、いつまでも目標が達せられない限り、いまの異次元緩和は続けざるを得ない。そうなると国債の市場機能を低下させている日銀の巨額の国債買入は半永久的に続けられることになりかねない。
富国生命保険の米山好映社長はロイターとのインタビューで「国債市場の流動性がほとんどなくなっており、仮に長期金利が2%を超えていても、そういうものは持つべきでない、危ないというのがわれわれの運用哲学」と述べたそうである。これに同意する市場関係者も多いのではなかろうか。国債の買い手がいずれ日銀しかなくなるような時が来たときには国債市場は完全な機能不全に陥りかねない。これは危機的な状況であることを認識すべきであろう。