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「負け犬の反乱」を支えた“日本サッカーの神童”…「悪魔の才能」と呼ばれる男とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
慶南FCの邦本宜裕(写真提供=FA Photos)

川崎フロンターレの2連覇、ジュビロ磐田のJ1残留で終わったJリーグ。奇しくも韓国KリーグでもKリーグ1は全北現代の連覇に終わり、リーグ戦11位と低迷した強豪FCソウルも、釜山アイパークとの昇降格決定戦を制して1部残留を決めた。

常勝軍団の連覇にかつての強豪の低迷という点で、日韓のプロサッカーリーグが共通した点は面白い。ただ、今季のKリーグで目を引いたのは地方の弱小クラブに過ぎなかった慶南(キョンナム)FCの躍進だ。

異彩を放ったベストイレブンにも3名選出!!

昨季のKリーグ・チャレンジ(2部リーグ)で優勝し、今季からKリーグ1(1部リーグ)に昇格した慶南は、序盤から上位勢を苦しめる快進撃を見せ、18勝9敗11分けの勝ち点65(優勝の全北は86点)でリーグ戦2位になった。

その快進撃は「アンダードックたち(負け犬たち)の反乱」と言われ、異彩を放った今季Kリーグ・ベストイレブンにも慶南FCから3名の選手が選出されている。

(参考記事:「Kリーグ大賞」受賞者発表。若き“96年生まれ”が韓国サッカーの中心に)

そもそも慶南は、特定の母体企業を持たない市民クラブとして2006年からKリーグに参戦した地方都市の新興チームに過ぎなかった。

韓国代表監督も務めたチョ・グァンレ監督時代は、のちにJリーグに移籍することになるカボレ(FC東京)やポポ(柏レイソル、ヴィッセル神戸、浦和レッズ、ジュビロ磐田)らブラジル人FWの活躍で、2007年にはリーグ4位になる大躍進を見せたが、その後はBクラスに甘んじ、2015年から3シーズンはKリーグ・チャレンジに甘んじた。

2015年11月にはクラブ前代表時代(2013〜2014年)に審判を買収していた事実が発覚し、チームの存在意義を問う声が市民たちの間で沸き起こったこともあった。

そんな慶南FCの今季大躍進を牽引したのが、リーグ戦26得点でKリーグ得点王に輝くとともに年間MVPにも輝いたマルコンだ。その圧倒的なスピードと決定力の高さは、前出したカボレ以上とされており、中国やJリーグのクラブも獲得に動いていると言われている。

(参考記事:J移籍の可能性も!? Kリーグは今年もスター選手を手離さざるを得ないのか)

歴代日本人Kリーガーの中でも異彩

このマルコンもさることながら、日本のサッカーファンたちにぜひ知っていただきたいのは今季から慶南FCに加入した日本人選手の存在だ。

邦本宜裕。かつて浦和レッズ・ユース時代に16歳8か月でトップチーム・デビューし、2015年にアビスパ福岡に加入。2016年にはJリ―グ初得点などを挙げるも、「契約条項違反」で契約解除となった21歳は、今季から所属する慶南FCで35試合に出場。5得点2アシストを決めるなど、チームの主力として活躍した。

「“悪魔の才能”邦本はいかにして生き返ったのか」(『FOOTBALLIST』(4月5日)、「慶南のヒット商品は邦本」(『朝鮮日報』8月8日)、「慶南で再起した日本サッカー界の神童・邦本」(『スポーツ東亜』8月16日)とシーズンを通じて邦本にスポットライトを当てた記事も多く報じられたほどだ。

韓国メディアでこれほどまでに好意的に取り上げられた日本人Kリーガーは、2015年から2016年にかけてFCソウルで活躍した高萩洋次郎以来だろう。

(参考記事:元日本代表から欧州組、有名タレントもそうだった!!歴代の日本人Kリーガー通信簿)

いずれにしても今季Kリーグで快進撃を見せた慶南FC。Kリーグ2位チームとして来季ACLへの出場権を得た韓国の地方クラブは、グループEに属する。Jリーグ勢がプレーオフを順調に勝ち上がれば属することになるグループだ。

来季ACLは本田圭佑を擁するメルボルン・ビクトリーとJリーグ勢の対決に大きな注目が集まりそうだが、慶南FCの主力として日本に帰ってくる邦本も話題になりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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