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日本代表キャプテンの坂手淳史、強豪に勝つ術は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
鋭い眼光。存在感抜群。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ラグビー日本代表は現在、別府で候補合宿中だ。今秋、おこなわれる計6つのゲームをにらむ。その視線の先には、1年後に開幕するラグビーワールドカップフランス大会がある。

「どの立ち位置でも自分の仕事をすることに変わりはない。ただ…」

 坂手淳史。今夏、日本代表のキャプテンとなり、9月からの候補合宿でも同職を担う。

「…今後もキャプテンを任せていただける。自分らしくやっていきたい。テストマッチ(代表戦)に勝つ、そのための具体的なことを浸透させる、同じページを見る、ということはやっていきたいです」

 7日にはオンライン取材に対応し、主将としての意気込み、日本代表の存在意義について話した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——今回の新たな取り組みは。

「いまは始まったばかりですが、(候補選手が)3チーム制で動いていて。いままでとは違う合宿での動き方になっています。そこに順応しながら、グラウンドでどんなパフォーマンスをするかに集中したいです。これからやることが明確になると思います。ブラウニー(トニー・ブラウンアシスタントコーチ)のアタック、ジョン・ミッチェル(アシスタントコーチ)のディフェンス、その他、ブレイクダウンのところも…。それらをかみ砕いて、チームに伝えられるようにはしたいと思っています」

——主将として、どんな色を出すか。

「あまり意識はしていないですが、僕らしくやっていきたい。一番、身体を張らないといけない。堀江翔太さん、リーチ(マイケル元主将)さんからもプレーのこと、メンタルのこと、色々教わっています。そこでキャパシティも広くなっています」

——同じワイルドナイツ所属の堀江選手も、様々な場所で主将を務めています。堀江選手からはどんな話をしてもらったのですか。

「翔太さんと話すのは、『こういう時に何を意識してますか?』と具体例で話してもらっています。僕が主将になってから日本代表で一緒になったのは前回(今夏)だけだったので、(リーダーとしての助言は)ワイルドナイツのメンバーとしての方が多いです。

 いまコミュニケーションを取るのはリーダーグループのメンバー、これまでに代表の主将だったリーチさん、ラピース(ピーター・ラブスカフニ)です。それらの経験は、実際にやった人にしかわからない。次になった人(自身)に影響を与える存在になってくれているので、ありがたいです」

 身長180センチ、体重104キロの29歳。スクラム最前列のフッカーを働き場とし、強烈なタックルを持ち味とする。

 帝京大学では大学選手権7連覇(記録は9まで伸びる)時に主将を務め、現所属先の埼玉パナソニックワイルドナイツでも主将を任されている。

 日本代表デビューは2016年。19年には、史上初のワールドカップ日本大会のメンバーとして史上初の8強入りを果たした。

——日本大会では『ONE TEAM』というスローガンが流行語になった。今回は。

「言葉は、僕たちが歩んでいった結果として出てきた。2019年も、それが流行語になると思って作ったわけではないです。努力して掴み取りたいものがあって、それがあの時は達成できて、その結果によって、あの言葉ができたと思っています。

(いまも)色んなところで言葉を大事にしている。色んなワークショップをして、言葉に意味を持たせて、それを自分たちの原動力にするということは、(以前と同様に)いまも継続しています。そうして結果が出たら、(何らかの言葉が)有名になるかもしれませんが、いまはそれを狙っているわけではなくて。共通認識として言葉を持っていればしんどい時に立ち上がれたり、もう一度、皆と繋がれたりする。そのあたりは、ゲームを見ていただければ」

——当時は、フッカーの堀江選手の控えに回ることも多かったです。いまと当時とで、坂手選手はどう変化しましたか。

「19年は憧れがあり、そこに選ばれることを目標に頑張っていました。当事者でしたけど、どこかふわふわした夢のなかで戦っている感覚がありました。ただ23年はチームをどうドライブするかを考えてできていると思います。僕らのラグビーでのフィジカル、理解度も19年の時より成長できていると思う。さらにここから成長する。

 僕がすべてをやる必要はないです。そもそも(日本代表が目指すのは)そういうラグビーではないです。ただ、僕がひとつの駒として動けるように、皆をドライブしていけるようにと考えている。ここが、成長した点かなと思います」

——2度目のラグビーワールドカップまであと1年。大会での目標は。

「前回を越えたいと、僕自身は思っています。最初のワールドカップでは選手層が厚くなかったこともあって、グループステージ(予選プール)4試合、フルで出ている選手もいました。選手層は改善点。ジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)も、僕も、ワールドカップ(日本大会)が終わった頃からそう思っていました。そこへのアプローチとして、今回の52人のスコッド(取材後の追加招集を含めると54名)はいい形で進むと思います。自分たちのラグビーを理解するうえで、これからのオーストラリアAとの3試合を大きなスコッドで戦えるのはいいことだと思います(10月。その頃には40名程度に絞られる見込み)。それをワールドカップ1年前にできる。その後、(国内の)リーグワンが終わってからワールドカップに向けて戦える。それは大きなアドバンテージになります」

 目標と、それを叶えるために解決したい課題を言葉にした坂手。では実際に、強豪国との大一番に勝つための必要項目は何と考えているのだろうか。

 そう聞かれてまず話したのは、反省点だった。

「ひとつの判断ミス、ディテールが、本当に大きくゲームに関わると感じます。キックを蹴っておけば、3点(ペナルティーゴール)を狙っておけば、あそこでラインアウトを選んでおけば。そういう判断ミスがどの試合でも出てきているので…」

 ラグビーの主将は、相手が反則を犯した後のプレーをいくつかの選択肢から選べる。坂手はすでに、今夏の対フランス代表2連戦で主将を担った。その間のプレーのチョイスで、悔やむ点があったという。結果は2連敗だった。

「僕自身、判断の基準を明確にしないといけない。リーダーとどんどん話し合い、いままで以上に『こういう時はこうする』について準備して臨めればと思います」

 さらに続けるのは「プレーのディテール(細部)も大事」。大型選手の多い強豪国を打ち崩すには、技巧を駆使したり、コンタクト時の低い姿勢を保ったりといった「ディテール」をおろそかにできないと続ける。

「僕たちは身体が大きくない。ディテールで相手を上回ることも大事。テストマッチでは、そういう細かいところが大切です」

 小さくとも勇敢なナショナルチームの価値を、改めて感じる。

——日本代表とはどういう存在か。

「日本のラグビー界のトップで、皆が目標にしているチームです。僕たちの戦う姿や結果が、今後の日本代表の未来にもつながると思っています。その意味でも、前回のテストマッチ(代表戦)で勝てなかったのは悔しかったです(7月、フランス代表に2連敗)。今回、ワールドカップに向けた大事なテストマッチがあります。ひとつひとつ戦って、勝つ。それを見てもらって、一緒に喜べる状況を作っていければ、日本のラグビーを盛り上げられると思います。僕たちはただラグビーをしているだけではなく、背負っている。それを理解することは(代表選手にとって)大事なのではないかと思います」

 ここでの「ワールドカップに向けた大事なテストマッチ」は、10月29日のニュージーランド代表戦(東京・国立競技場)、11月12日のイングランド代表戦(ロンドン・トゥイッケナムスタジアム)、20日のフランス代表戦(スタジアム・ド・トゥールーズ)を指す。10月の対オーストラリアA・3連戦を経て、挑む。

 ジョセフの母国であり長らく「世界最強」と謳われるニュージーランド代表、次回のフランス大会で予選同組となったイングランド代表とぶつかることができる。

 さらに、そのフランス大会時の試合会場となるトゥールーズで夏のリベンジマッチができる。

 貴重な機会だ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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