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シベリア森林火災の煙が全国へ

竹村俊彦九州大学応用力学研究所 主幹教授
(写真:ロイター/アフロ)

昨日(2018年4月27日)の記事「シベリア森林火災の煙が北海道へ飛来」で解説したとおり、昨日は、シベリアで発生している大規模な森林火災から出てきた煙が、風に流されて北海道へ到達しました。その影響でPM2.5濃度が急激に上昇し、空が霞んだり、少し焦げたようなにおいが広がったりしました。その煙は、その後、東北地方や日本海へも流れていき、今日28日には、日本の広い範囲、特に北日本と西日本のPM2.5濃度が高くなり、空が霞みました。この状況は、下の図で示すように、私が運用しているSPRINTARS PM2.5予測での予測結果を見るとよくわかります。

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森林火災の煙は国際的な問題

シベリアでの森林火災の煙が日本へ大きく影響を及ぼすのは、およそ数年に一度程度であるため、日本在住の人が森林火災の影響を気にすることはほとんどないと思います。しかし、国際的には、森林火災は、大気汚染物質だけではなく、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の大きな発生源でもあります。地球上で森林火災が大規模で起こる地域は、熱帯アフリカ・アフリカ南部のサバンナ・アマゾン・東南アジアです。これらの地域は雨季と乾季がはっきりしており、乾季に森林火災が毎年広がってしまいます。森林火災の原因として自然発火もありますが、現代では大部分が人間が火を付けることによると推測されています。

日本には中国からのPM2.5の越境飛来の問題があるように、国際的には森林火災によるPM2.5の越境飛来の問題が存在しています。特に、毎年9〜11月頃に、インドネシアでの森林火災の煙が、シンガポールやマレーシアへ流れるため、政治的な問題になることがあります。そのインドネシアの森林火災は、エルニーニョと重なると、一層大規模となります。エルニーニョが起こっている時期は、インドネシアなどの熱帯西太平洋の降水量が平年より少なくなる傾向にあります。雨は森林火災を効果的に消火してくれますが、雨が少ないと森林火災が収まらなくなるというわけです。この仕組みにより、1997年にインドネシアの森林火災が大規模化しましたが、当時私は大学院修士課程の学生で、指導教員の指示により現地へ観測へ行きました。帰国間際にお腹を下してしまい、苦しい思いをしたことを思い出します…。

九州大学応用力学研究所 主幹教授

1974年生まれ。2001年に東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。九州大学応用力学研究所助手・准教授を経て、2014年から同研究所教授。専門は大気中の微粒子(エアロゾル)により引き起こされる気候変動・大気汚染を計算する気候モデルの開発。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書主執筆者。自ら開発したシステムSPRINTARSによりPM2.5・黄砂予測を運用。世界で影響力のある科学者を選出するHighly Cited Researcher(高被引用論文著者)に7年連続選出。2018年度日本学士院学術奨励賞など受賞多数。気象予報士。

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