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センバツ組み合わせ決定。ベスト8を予想してみた

楊順行スポーツライター
昨年センバツの決勝、先頭打者本塁打を放った大阪桐蔭・藤原恭大(写真:岡沢克郎/アフロ)

 それにしても、トーナメント表の左、もしくは上からA、B、C、Dとゾーン分けすると、Aゾーンがずいぶん濃い。なにしろ9校中6校が、秋の各地区大会で優勝しているのだ。聖光学院(福島)、静岡、駒大苫小牧(北海道)、日本航空石川、明徳義塾(高知)、中央学院(千葉)……。静岡対駒苫、明徳対中央学院は1位同士のつぶし合いで、また明徳と中央学院は、明治神宮大会2回戦の再戦だ。

 そのときは、明徳のエース・市川悠太が7安打3失点で完投勝利。明徳はその後、準決勝と決勝も制して、秋のチャンピオンに輝いている。昨年春夏の甲子園を経験している市川が、秋の公式戦10試合をすべて一人で投げ抜いた。最速145キロのストレートと、やや横手から鋭角に曲がるスライダーを武器に、4完封を含み防御率は1・35と安定感抜群だ。

 ただ、名前からも"二刀流"として話題の中央学院のエースで四番・大谷拓海は、その試合で市川から左方向に2ランを放っている。これには「非凡なリスト。大したもの」と、明徳・馬淵史郎監督も舌を巻き、大谷は投げても最速145キロを計時する大器だ。両者の再戦は、3日目第1試合。この試合を制すると、次は航空石川対膳所(滋賀)の勝者との対戦で、ここも息が抜けない。航空石川の攻撃力も、なかなかのものなのだ。

 秋の優勝校以外では、東海大相模(神奈川)の評判が高い。昨秋の県大会で、7試合中5完封を演じているエース・齋藤礼二も故障から復帰した。新チーム結成からの秋の成績は、練習試合を含めてなんと62勝2敗の勝率・970。黒星のうちひとつは、県大会決勝で死球を受けた齋藤が登板していない関東大会のものだ。現状維持は衰退、というのは、2011年春と15年夏を制している門馬敬治監督の言葉。

「どんな選手が出てくるか、ワクワクしています」

 という冬を過ごし、秋とはスタメンががらっと変わる可能性もある。このゾーンで気の毒なのは、開幕戦を戦う東筑(福岡)と聖光学院。勝者は、5日目には東海大相模との2回戦があるのだ。Dゾーンのチームなら、その時点でまだ1試合もしていないのに、ここは2試合目を戦うのだ。まあ過去には、やはり記念大会で同じ日程だった13年の敦賀気比(福井)が、4強まで進出したケースもあるが……それらを踏まえ、Aゾーンでは東海大相模と、明徳義塾が8強進出と見た。

準々決勝で智弁和歌山vs創成館か?

 Bゾーンでは、智弁和歌山と創成館(長崎)が強い。智弁は、秋の公式戦11試合で9ホーマー、チーム打率・371という強打が健在で、しかも右ヒジの疲労骨折で主砲・林晃汰を欠いてのもの。その林も、いまや完全復活。昨夏に続く甲子園では、「ホームランを5本、打ちたいです」と大会記録更新をぶち上げた。ちなみに、新2年生ながら正捕手を務める東妻純平は、日体大のドラフト候補で智弁和歌山OBの勇輔を兄に持つ。

 創成館は、神宮大会決勝で明徳に敗れたものの、準優勝。準決勝では、「この世代では負けないのではないか」とまでいわれていた最強軍団・大阪桐蔭を7対4で下している。その試合では、左腕の七俵陸が先発。九州大会で出番はなかったが、「素材は、エースより上」というのが稙田(わさだ)龍生監督の評価だ。184センチのエース左腕・川原陸も、141キロの速球を軸に、公式戦では59回3分の2を投げて66三振のドクターK。左の陸コンビのほかにも、秋の県大会の途中から登録された右腕・伊藤大和は、神宮の1、2回戦で、計5回3分の2を2安打無失点の好救援を見せている。横手投げのフォームは、この夏に腰椎分離症になり、上手投げがつらいために試したもの。これがはまった。横からの球速140キロ近いストレートは、かなりえぐい。

 Cゾーンは、まず史上3校目の春連覇を狙う大阪桐蔭が文句なし。秋の敗戦は、練習試合も含めて、神宮で創成館に喫した1敗のみ。23勝1敗の勝率・958は、東海大相模に迫る。根尾昂、藤原恭大ら、ドラフト候補が6人ともいわれる最強軍団で、投手陣は根尾以外に柿木蓮、横川凱と将来性豊かな逸材がそろっている。西谷浩一監督は過去、甲子園で44勝9敗と抜群の高勝率。自身春2回、夏3回の優勝を誇り、春の連覇を達成すれば、これはもう大監督だ。もう1校は、東邦(愛知)を推す。センバツ4度Vは最多タイで、ここも秋の勝率を記すならば、なんと44勝1敗の・978と東海大相模をもしのぐ。

 Dゾーンは、1回戦からの登場でも日大三(東京)が頭ひとつ抜けているか。新2年生の井上広輝は140キロ超のまっすぐが持ち味で、強力打線が後押しすれば、センバツでの大化けがありそうだ。新2年生なら、星稜(石川)のエース・奥川恭伸もいい。秋の北信越では、最速146キロをマークし、公式戦の奪三振率は10・6に達した。中学時代に全国中学校軟式大会を制し、「ギアの入れどころなど、ピッチングをよく知っている」とは林和成監督だ。

 整理すると東海大相模、明徳義塾、智弁和歌山、創成館、大阪桐蔭、東邦、日大三、星稜が僕の8強予想。もっとも、「野球はなにが起こるかわからん。選手個々の能力だけで決まるんなら、試合前のフリーバッティングで勝負を決めればええ」とは、かの"馬淵節"の一節だ。準々決勝当日、もう一度この予想を見直してみてください。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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