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郷田真隆九段(50)熱闘197手で佐藤康光九段(52)を降し棋王戦挑戦者決定戦進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月13日。東京・将棋会館において第47期棋王戦・敗者復活戦2回戦▲郷田真隆九段(50歳)-△佐藤康光九段(52歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時40分に終局。結果は197手で郷田九段の勝ちとなりました。

 郷田九段はこれで挑戦者決定二番勝負に進出。勝者組から勝ち上がった永瀬拓矢王座(29歳)と対戦します。第1局は12月21日、第2局は28日と発表されました。永瀬王座はあと1勝、郷田九段は2連勝で渡辺明棋王(37歳)への挑戦権を獲得できます。

郷田九段、黄金世代対決を制す

 両者はベスト4に勝ち上がったところで対戦。佐藤九段は序盤から奇想天外な銀出を見せ、終盤で苦戦をしのいで138手の大熱戦を制しています。

 両者は敗者復活戦で再び相まみえることになりました。

 本局もまた郷田九段が先手。前局、佐藤九段の作戦はダイレクト向かい飛車でした。本局は2手目三間飛車から角交換のあと、向かい飛車にスイッチします。

 佐藤九段は穴熊。郷田九段は銀冠に組みます。郷田九段が穴熊に組み替えたところで駒がぶつかり、戦いが始まりました。

 郷田九段は相手の穴熊の金2枚をはがし、着実に佐藤玉に迫っていきます。対して郷田陣は取った金を1枚入れて、金3銀1の鉄壁穴熊に。郷田九段優勢のまま最終盤に入りました。

 佐藤陣は穴熊が崩壊し、すぐにも寄ってしまいそうな形。しかし佐藤九段は腕力でしのぎ続けます。やがて佐藤陣には2枚の龍(成飛車)が帰還。穴熊も次第に修復されるに及び、形勢はほぼ互角へと巻き戻りました。

 佐藤九段が反撃に転じると、今度は郷田九段が頑強にしのぎ続けます。113手目、郷田九段が8筋に歩を打って支えると、駒が9枚縦一列に並ぶ「駒柱」(こまばしら)ができました。

 佐藤九段は118手目、郷田九段は157手目で持ち時間4時間を使い切り、以後は1手60秒未満で指す一分将棋。佐藤九段の猛攻は延々と続きました。そしてついに郷田九段がしのぎきったところで、形勢は再び郷田九段よしがはっきりします。

 満を持して再び寄せに入る郷田九段。最後は佐藤玉を詰まし、197手の激闘に終止符を打ちました。

 長きにわたって第一線で戦い続けてきた両者の対戦成績は、これで佐藤33勝、郷田30勝となりました。

 郷田九段は2019年棋聖戦以来の挑戦者決定戦進出となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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