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投票に行って外食へ 広がる「選挙割」のメリットと注意点

山路力也フードジャーナリスト
投票所では忘れずに「投票済証明書」を貰おう。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

今年で10年目を迎えた「選挙割」

 10月31日は第49回衆議院議員総選挙の投票日。原則として午後8時まで投票が出来る(投票所によって異なる場合がある)。もうすでに投票を済ませた人もいれば、これから投票所に向かう人もいると思うが、これまで投票した時に「投票済証明書」を貰ったことがあるだろうか。なければ、今回はぜひ受け取って欲しい。

「選挙割(センキョ割)」という活動が全国に広がりをみせている。「選挙割」とは投票所で申告すると受け取ることができる「投票済証明書」や「今回の選挙の投票所の写真」などを店舗で提示すると、様々なサービスが受けられるというものだ。

 最初の呼びかけは2012年の衆議院議員選挙で、株式会社ワカゾウが横浜市を中心に社会貢献で行った企画「センキョ割」が発端。その後、賛同する店舗や企業、さらにはエリアも拡大し、今や全国に浸透。独自にサービスを始める店なども増えて来た。現在では『一般社団法人 選挙割協会』が中心になって、各地方の大学生なども参画する『センキョ割学生実施委員会』などが主催となり、その活動に広がりをみせている。今回の衆議院選挙では過去最大の2,000店舗以上が参加する予定になっている。

投票の啓蒙活動が飲食店の来店動機に

国政選挙や地方選挙など、様々な選挙に広がりをみせている「選挙割」(画像:一般社団法人 選挙割協会)。
国政選挙や地方選挙など、様々な選挙に広がりをみせている「選挙割」(画像:一般社団法人 選挙割協会)。

 2016年の参議院議員選挙より、選挙権年齢が18歳に引き下げられた。かつては70%を超えていた国政選挙の投票率は年々低下。「選挙割」は投票率の低下が叫ばれる中で生まれた、投票や政治参加への啓蒙が主たる目的の社会活動だ。

 実際、この活動をきっかけに初めて投票所に足を運んだという人も少なくなく、「選挙に関心を持ってもらう」「投票所に足を運んでもらう」という活動の目的は浸透しつつある。さらに停滞する経済活動を喚起させるという、副次的な効果も期待出来る。

 飲食店など参加する企業にとってもメリットは大きい。消費者に対して政治への関心を高め投票行動を促すことは社会的意義があり、社会貢献の一端を担うという企業イメージのアップにも繋がるほか、社会的に注目が集まっている選挙という一大イベントに関連させることで、独自にイベントを立てるよりも遥かに低予算で訴求力があり、効率良く新たな来店動機を生み出すことが出来る。

 また、長引くコロナ禍によって業績が下がっている企業は多く、中でもダメージが大きな飲食業界では「選挙割」によって、来客数が増えることに期待をかけている。

ラーメン、とんかつ、パンケーキなどがお得に

豚骨ラーメンの人気チェーン「一風堂」でも2016年より「選挙割」を実施している(画像:一風堂)。
豚骨ラーメンの人気チェーン「一風堂」でも2016年より「選挙割」を実施している(画像:一風堂)。

 豚骨ラーメンの人気チェーン店『博多一風堂』では、2016年の参議院議員通常選挙より「選挙割」を実施。全国127店舗で11月10日まで、替玉や玉子のサービスなどラーメン店らしいサービスを提供する。立川のラーメン施設『ラーメンスクエア立川』でも、各店舗でトッピング1品サービスを行っている。

 とんかつ店を都内などに展開する『平田牧場』では、対象商品の1会計分を半額にするサービスを実施。2019年の酒田市長選挙で初めて「選挙割」サービスを開始した『平田牧場』だが、今回初めて国政選挙での実施となり、全国の直営店での同時開催は初となる。

 ハンバーガーなどを提供する『ヴィレッジヴァンガードダイナー』では、パンケーキ半額やポテトの増量など店舗ごとにサービスを実施。『ミライザカ』『鳥メロ』などの居酒屋を全国展開する『ワタミ』でも、「ワタミの選挙割」と称したキャンペーンを企画。全国307店舗でドリンク一杯無料サービスを実施している。

 他にも個人店をはじめ数多くの飲食店や物販店、商店街、地方自治体などが「選挙割」の活動に参加している。詳しくは『センキョ割 全国版』のホームページを参照して頂きたい。

買収行為にならぬよう公職選挙法の遵守が必須

 今後、さらに広がりをみせていくであろうこの「選挙割」。一部には「サービス目的で投票に行くという行為はおかしい」という指摘もあるが、むしろ懸念される点はやはり「公職選挙法」との兼ね合いだ。

 例えば特定の政党や候補者を熱心に支持する人が経営する店舗でのサービスでは、選挙違反である「買収行為」とも取られかねない可能性がある。『選挙割協会』でも運用ルールを作成して、公職選挙法違反にならないよう注意を呼びかけている。選挙割を実施する店舗には、公職選挙法の遵守が求められるところだ。

 投票に行ってお得なサービスが受けられる「選挙割」。地域によっては投票済証明書が無い地域や配布終了の場合もあるので、「今回の選挙だと分かる投票所の写真」の提示でもサービスが受けられるとのこと。国や自治体の呼びかけだけではなく、「選挙割」のように民間からもアクションを起こすことで、今後ますます選挙や政治に関心を持つ人が増えることを願ってやまない。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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