本家とは違う選手も選出!?上原浩治が独断で選ぶ12球団ベストナイン2023
今季のプロ野球で活躍した選手たちを表彰する「NPB AWARDS 2023 supported by リポビタンD」が28日に開催される。今季も多くの名シーンが生まれたプロ野球で、今回は個人に焦点を当てて、私なりのベストナインを記したい。本来のベストナインはセ・パ両リーグでそれぞれ選出されるが、12球団を見渡してのベストナイン(パはDHも)を考えた。リーグが違えば、戦術なども違うなどの反論もあるかもしれないが、春に「世界一」に輝いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)もセだから、パだからという代表選考にはなっていない。皆さんにも、自分だけの12球団のベスト選手を考えるきっかけになってもらえれば幸いである。
投手はオリックスの山本由伸投手の一択で決めた。リーグ3連覇に貢献した右腕はこのオフ、メジャーでも群を抜いた高い評価を得ている。チームが優勝した3シーズン、山本投手は先発投手として最高の栄誉である「沢村賞」にも輝いている。結果を継続して出し続けるというのは本当に大変なことである。相手チーム、打者も攻略法を研究し、対策を練ってくる。その上を行くために、ときに「変化」も必要になる。山本投手も今季は投球フォームを変えて臨んだ。「自分で自分を研究する」。これができる選手である。
捕手は巨人の大城卓三選手を挙げたい。134試合に出て、打撃では打率・281、16本塁打をマーク。「打てる捕手」として打撃は魅力たっぷりだ。今後の課題はリード面だろう。同じ捕手出身の阿部慎之助新監督の下、投手陣をどう活かすかという経験を積んでほしい。近年はどのチームも正捕手が全ての試合にマスクをかぶるケースが少ない傾向にあるが、巨人再生の切り札として「一本立ち」をしてほしい。オリックスの森友哉選手も移籍1年目からリーグ優勝に貢献し、素晴らしい成績だったが、私は選考基準として「出場試合数」を重視した。
一塁手は阪神の大山悠輔選手とオリックスの頓宮裕真選手がおそらくセ、パそれぞれのベストナインに選出されるだろう。12球団で一人という今回のコラムでは、優勝チームの4番を外れることなく、全143試合に先発出場した「存在感」から、大山選手を選びたい。主軸が全試合に出るというのは、先発メンバーを固定できるという意味でも、チームの安心感にもつながる。広い甲子園を本拠地としているため、どうしても本塁打数が伸びにくいが、岡田彰布監督の方針のもとで四球も99、出塁率も4割を超えた。勝負強さに加え、どんな当たりでも一塁へ全力疾走する姿勢は「野球選手のお手本」である。頓宮選手も首位打者を取り、来季以降はさらなる活躍を期待したい。
二塁手は、セの牧秀悟選手と阪神の中野拓夢選手で悩んだ。チーム成績を考えると、優勝した阪神の中野選手の貢献度が高いが、チーム成績は個人だけでどうにもならないこともある。打点王と最多安打のタイトルを獲得した牧選手は全143試合出場で打率・293、29本塁打、103打点、164安打とコンスタントに上位の成績を収めており、やはり「個人」を表彰するベストナインとなれば、牧選手を推したい。牧選手と最多安打のタイトルを分け合った中野選手はフルイニング出場した二塁手の守備での貢献度も高く、ゴールデン・グラブ賞を獲得し、盗塁数も20をマークした。本音をいえば、2人とも選びたいポジションである。
遊撃手はオリックスの紅林弘太郎選手を選びたい。数字的にはもう少し欲しいが、他の選手と比べれば、チームがリーグ優勝していることも考慮すれば妥当ではないだろうか。
三塁手はセの岡本和真選手、DeNAの宮崎敏郎選手の争いとみて、私は41本塁打で2年ぶり3度目のタイトルを獲得した岡本選手を推したい。岡本は一塁や左翼も守っておりポジションごとのベストナインということになれば、三塁手としての成績だけで判断すべきということになるが、首位打者の宮崎選手の出場試合数が124ということも考慮した。宮崎選手も4年連続打率3割以上と安定感は抜群だった。岡本選手のように、他のポジションと併用されている選手をどう扱うかであるが、私は一番多く出場しているポジションだけで投票できる仕組みにしたほうがいいのではないかと思う。
外野手はパ・リーグからともにソフトバンクの近藤健介選手、柳田悠岐選手、日本ハムの万波中正選手の順に選んだ。近藤選手は移籍1年目から三冠王に近い圧倒的な数字を残した。柳田選手もコンスタントに成績を残し、出場試合数も多い。万波選手は低迷した日本ハムで25本塁打と気を吐いた。オフのアジアプロ野球チャンピオンシップでは日本代表「侍ジャパン」の全勝優勝に貢献し、来季以降の活躍も楽しみだ。
阪神の近本光司選手は、本来のセのベストナインには文句なしの選考となるだろう。死球の不運もあったが、出場試合数がやや物足りない印象だった。もちろん、中野選手とともに「優勝チームの1、2番」という貢献度は、個人表彰の域を超えて高い評価に値することを明記しておきたい。
DHはロッテのグレゴリー・ポランコ選手だろう。ただ、守備の負担がないポジションゆえに、もう少し出場試合数が欲しかった。
ベストナインとは別に注目したのはDeNAのトレバー・バウアー投手だ。「中6日」が定着した日本の先発ローテーションにおいて、「中4日」で完投勝利を挙げるなど短い登板間隔でもタフな投球を見せた。日本球界1年目ながら、メジャーで投手最高の栄誉であるサイ・ヤング賞を獲得した実績通りの成績を残したといえるのではないだろうか。
近年の日本球界は完投数が減り、先発投手の球数も少なくなった。メディアでは盛んに「メジャー流」と報道されているが、バウアーはこうした風潮に一石を投じたのではないだろうか。
最後にベストナインと言いながらもDHは表彰の対象となっている。投手も分業制が進み、先発、中継ぎ、抑えと部門ごとにベストプレーヤーを選んでもいいのではないだろうか。ベストナインの投手部門は、ぜひ、先発、中継ぎ、抑えで表彰してほしい。