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信頼される企業になるために、トヨタが137億円を払うワケ

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
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■“信頼される企業”になるために、トヨタが137億円を払うワケ

一昨日(3月31日)発売のビジネス誌「週刊 東洋経済」で最新のCSR(企業の社会的責任)ランキングが掲載されていたので、一部引用しながら、昨今のCSRについて傾向と対策をまとめます。

日本で一番インパクトがあるCSRランキングですので、企業経営者は必ずチェックすることをオススメします。ちなみに、タイトルの“トヨタの137億円”につきましては、後ほど詳しく解説をさせていただきます。

さて、今回の東洋経済のCSRランキングの評価方法はというと、「人材活用」、「環境」、「企業統治」、「社会性」、「財務」の大きく5つの指標でランキングを作っています。普通CSRランキングというと財務データは評価指標に入らないのですが、東洋経済のランキングは、かなり大きなポイントして財務の評価項目があります。

社会貢献の積極的でキレイ事ばかり言っていても、企業としての経済価値がなければ、社会からは信頼されませんよ〜。てな感じなのでしょうか。とても重要なポイントだと思います。

特に去年あたりから「人材活用」がCSR活動のトレンドになっていきています。キーワードとしては、女性の活躍支援、ダイバーシティ、障害者雇用、育休・産休、残業時間、人権問題、セクハラ・パワハラなどでしょうか。女性活用というキーワードは、現政権でも大きな経済対策の一つとされています。その影響もあるのだとは思います。

そもそもCSRとは社会貢献(慈善)活動だけを指すのではなく、「企業が社会に与える影響に責任を持ち、環境・経済・社会への負の影響を最小化すること」という、かなり広い範囲のことを指します。

東洋経済の「CSR企業ランキング」、「社会貢献支出ランキング」、「有給休暇取得率ランキング」を見ながら、説明させていただきます。

■CSR企業ランキング(2014年)

01位、NTTドコモ

02位、富士フィルムホールディングス

03位、日産自動車

04位、キャノン

05位、トヨタ自動車

06位、ブリヂストン

07位、JT

08位、冨士ゼロックス

09位、アイシン精機

10位、東芝

11位以下は、デンソー、ソニー、富士通、国際石油開発帝石、コマツ…と続いていきます。雑誌に載っている300位までコピペしたいですが、それすると引用ではなく盗作になるので(今、論文の引用などが世間で話題ですし)、詳しく知りたい方は、後日詳細がアップされるという「東洋経済オンライン」を待つか、「週刊 東洋経済 2014年4月5日号」をお買い求め下さいませ。

トップ10の顔ぶれは、去年と半分くらい入れ替わっていますね。去年のランキングは『2013年版「CSR総合ランキング」トップ700 “信頼される会社”は1位トヨタ、2位富士フイルム』をどうぞ。

昨年からホテルの食品偽装、宅配会社における荷物のずさんな管理、銀行の暴力団融資などの企業不祥事が相次いだ。経済状態や同業者との競争が厳しいと、手間をかけずに稼ぎたいと思うようになる。だがそうしたことを続けていると、最後にはしっぺ返しを食らうことにもなる。

出典:週刊 東洋経済 2014年4月5日号

まさにその通りだと僕も思います。不祥事って、毎年何かしら起きてます。ガバナンスが機能していないとか、そもそもコンプライアンスの感覚がなくなっているとか、匿名で内部告発してもなぜかバレた、なんて事件もあったようですし、企業のモラルとは、なんなのだろうといつも考えさせられています。

「信頼される会社」に近づくためにも、会社の規模に関係なく、「人材活用」、「環境」、「企業統治」、「社会性」、「財務」という経営指標を設けるべきでしょう。

■企業の社会貢献支出ランキング(2014年)

01位、トヨタ自動車 137億円

02位、NTTドコモ 82.7億円

03位、冨士フィルムホールディングス 82.6億円

04位、キリンホールディングス 63.1億円

05位、JT 62億円

06位、資生堂 54.4億円

07位、三菱商事 50.2億円

08位、キャノン 45.5億円

09位、日本生命保険 39.8億円

10位、武田薬品工業 39.7億円

企業の社会貢献支出トップ50」(2014年)によれば、上位のようになっております。ものすごい金額ですよね。予算の使い道は多岐にわたるのでしょうけど、トップ企業だと年間数十億円を社会貢献にブッ込むって流石としかいいようがありません。一つの企業の年間売上ですよ。

ここだけの話、137億円とか社会貢献予算に使うと、どれくらいの経済的リターン(社会的なリターンではなく)があるものなのでしょうかね?レベルが高過ぎて想像すらできません。

■有給休暇取得率ランキング(2014年)

01位、ホンダ 101.5%

02位、ダイハツ 98.5%

03位、ケーヒン 98%

04位、テイ・エス テック 95.8%

05位、トヨタ自動車 95%

06位、関西電力 94.5%

07位、ショーワ 94.2%

08位、ダイキン工業 93%

09位、中国電力 92.1%

10位、トヨタ車体 91.3%

ちなみに「有給休暇取得率ランキング」(2014年)でもトヨタ自動車は入っております。さすが、従業員にも社会にも配慮されてますね。

このランキングは直近3年間の平均の数字でランク付けされています。かなり現実的なランキングですね。年によって変動がありすぎれば、数字としての信憑性もないですし、よい指標です。CSRというと、寄付やら何やらの社外ステークホルダーへのアプローチをイメージする人も多いと思いますが、社内の従業員に対するアプローチも、とても重要なCSR活動なのです。

で、気付いた方もいると思いますが、この3つのランキングでトップ10に入っているのはトヨタ自動車だけなんですよね。どの企業もマネはできないと思いますが、CSRランキングだけに、CSR的なキングですね。

このあたりの論理に関しては、拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも紹介しております。他のCSR関連ランキングを参考にしたいのであれば「CSR企業ランキングの総集編! CSRランキング・アワード26選」をご参考までに。

■ではCSRとは?

そもそも、CSRをなぜしなければならないのか。

「信頼される会社になるため」が一つの答えとなります。だからトヨタも多額の費用かけてまで、CSRを進めているのですね。

上場会社約3500社のうち、レベルの差こそあれCSRに取組む企業は千数百社程度と言われています。「CSRって企業の社会貢献でしょ?」というような意識レベルの経営者がいる大企業って多いからなのでしょうが、CSRが企業にとってメリットがあるということが理解できていないのです。だからやらない。

例えば、環境活動を企業が一切しなかったら社会はどうなると思いますか?例えば、今の中国の都市部はどうでしょうか。連日、環境問題が話題になっています。土壌の汚染もひどく、数年後には飲み水のほとんどが確保できなくなるとも言われています。

中国の例は極端だとしても、日本でも同じです。事業活動における社会的負荷を低減し、なおかつ環境配慮した活動もする。そういうトヨタみたいな素晴らしい企業がある反面、何もしない上場会社もいるわけです。上場会社3500社は日本の最高峰企業群のはずなのですが、自分たちの直接の利益以外興味がない企業も、残念ながらいらっしゃいます。

このあたりは、私も主張したい事があるので、『4月16日:第1回東洋経済CSRセミナー「企業の社会貢献について考える」』にパネリストとして参加決定しているため、こちらのセミナーで色々お話できればと思います。

今年度はCSRを具体的に進めていこうかなと思ったそこの社長さんは、「企業の社会貢献・CSRのメリット・デメリットとCSRの意味を考えた」、「CSRの課題・問題点を総ざらい!課題解決のための8のアイディア」あたりの情報を自分で整理して、行動に移してみて下さい。

「CSR=企業の社会貢献活動」という意識レベルの方がまだまだ多いですが、そこから脱却して、社会や従業員から「信頼される会社」となるためにCSRを進めていきましょう!

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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