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瑛人の「香水」でおなじみ、「ドルチェ&ガッバーナ」って、どんなブランド?

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
2021年 春夏 ウィメンズ コレクション (c)DOLCE&GABBANA

『NHK紅白歌合戦』に出演が決まったシンガーソングライターの瑛人さんが歌うヒット曲『香水』は、「ドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ」という歌詞で有名です。

この歌をきっかけに、あらためて注目を集めたのがイタリアのラグジュアリーブランド「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」。名前は歌に使われるほど有名ですが、今回はブランドの成り立ちや持ち味、魅力などに関して解説していきます。

ステファノ・ガッバーナ氏(左) ドメニコ・ドルチェ氏(右) Photo by DOMEN VAN DE VELDE
ステファノ・ガッバーナ氏(左) ドメニコ・ドルチェ氏(右) Photo by DOMEN VAN DE VELDE

男性2人のデュオデザイナーはイタリア出身

まずは基本的なところを押さえておきましょう。「&」でつないだブランド名からも分かる通り、男性2人のデュオデザイナーが手がけています。1人はドメニコ・ドルチェ氏で、もう1人はステファノ・ガッバーナ氏。どちらもイタリア人です。ブランド名は2人のラストネームを使っています。

本社をイタリアのファッション都市、ミラノに置いています。コレクションの発表もミラノ・コレクション(ミラノ・ファッションウイーク)を選んでいて、ミラノ・ブランドの代表格です。初のコレクションは1985年に発表されました。今年はブランド創設から35年の節目にあたります。

シチリア文化をコレクションに反映

ドメニコ氏の出身地は地中海に浮かぶシチリア島です。地中海のほぼ中央に位置しています。「島」と言っても、九州の6割程度もある、地中海最大の島。古くからギリシャやローマ、イスラムなど、様々な国や民族が奪い合ってきたという、複雑な歴史があり、その結果、独特の文化が育まれました。

この故郷の文化に根差したクリエーションは「ドルチェ&ガッバーナ」の際立った持ち味になっています。ちなみにステファノ氏はミラノ出身です。

人間愛の表現がパワフル 絆がすごい

ブランドの「心の故郷」とも呼べそうなシチリア島は、家族主義の息づくイタリアの中でも、とりわけファミリー愛の濃いとされる土地柄です。地元の人たち同士の結びつきも深く、名作映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の舞台になったことでも有名です。「ドルチェ&ガッバーナ」のクリエーションにもシチリアらしいヒューマニズムが息づいています。

過去には祖母・母・娘の3世代にわたるモデルをランウェイに登場させ、家族愛のイメージを印象づけたこともあります(2019年春夏)。情熱やエモーションなど、心を揺さぶるような人間らしさをファッションに注ぎ込んでいるのも、「ドルチェ&ガッバーナ」の魅力です。

DOLCE&GABBANA 2021年 春夏 ウィメンズ コレクション  (c)DOLCE&GABBANA
DOLCE&GABBANA 2021年 春夏 ウィメンズ コレクション  (c)DOLCE&GABBANA

あでやかさと品格の融合

ダイアナ元妃の姪にあたる、貴族令嬢のキティ・スペンサーさんがランウェイを歩いたことがあるように、華やかさと品格が溶けあうブランドです。レッドカーペットや国際的セレモニーでもセレブリティーやロイヤルズが好んでまとっています。

2021年春夏のミラノコレクションではパッチワークをたっぷり盛り込んで、あでやかな装いを送り出しました。多様性を意識してランウェイモデルを起用していることでも知られています。

もともとゴージャス感のある表現を得意とするブランドですが、コロナ禍を受けて、さらにカラフルでポジティブな装いを提案。こんな時代だからこその「着るよろこび」をうたい上げました。まるで花束をまとったかのようなドレスは、ファッションを通して人間愛の大切さを語りかけているようでした。

クラフツマンシップへの敬意

イタリア各地で受け継がれてきた職人技、クラフツマンシップへの敬意が深い点でも、「ドルチェ&ガッバーナ」は特別なブランドです。センシュアルなドレスにあしらわれる刺繍やレースは、手仕事ならではの繊細さ。パッチワークやアップリケなど、丁寧な針仕事から生み出されるディテールにも、シチリア島をはじめとする、イタリアの服飾文化が薫ります。

こうした手仕事をモードに取り入れる試みは、手仕事技のサステナビリティーにもつながっています。

経営の独立性 オンリーワン的なブランド力

世界の主要ファッションブランドには、有力なブランドグループに参加しているケースが珍しくありません。たとえば、LVMHグループの傘下には、「ルイ・ヴィトン」をはじめ、「ロエベ」や「セリーヌ」「クリスチャン・ディオール」「フェンディ」などが名を連ねています。

一方、「Kering(ケリング)」グループは「グッチ」「カルティエ」「サンローラン」「バレンシアガ」「ボッテガ・ヴェネタ」「アレキサンダー・マックイーン」などを抱えています。ほかにも、「Richemont(リシュモン)」といったブランドグループが存在します。

しかし、「ドルチェ&ガッバーナ」はどのグループにも属さず、独立の立場を貫いています。それだけ広く認知され、ファンが多いことの証明とも言えるでしょう。

これらの魅力や強みを兼ね備えたブランド「ドルチェ&ガッバーナ」。コロナ禍でファッションの原点が問い直され、クリエーションにあらためて「本物感」が求められる中、ぶれないデザイナーマインドと独自の世界観は際立っているようです。

企業・ブランド名を伏せる形で歌詞を改変することのあった『NHK紅白歌合戦』で、堂々とブランド名が歌われることは「ドルチェ&ガッバーナ」の認知度の高さを証明しているとも言えそうです。

(画像協力)

ドルチェ&ガッバーナ

https://www.dolcegabbana.com/ja/

~関連サイト~

ドルチェ&ガッバーナ ビューティ

https://www.dolcegabbanabeauty.com/ja/

ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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