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藤あや子 35周年、歌と愛猫と人生の楽しみ方を語る。「私の中でスタートラインは常に“今”」【前編】

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックレーベルズ

35周年の締めくくりに、北島三郎の38年前の名曲「女がひとり」をカバー

「女がひとり」(4月26日発売)
「女がひとり」(4月26日発売)

演歌歌手・藤あや子が、昨年6月デビュー35周年を迎えた。「とにかく音楽が好き」と、演歌にとどまらずポップス、ジャズ、シャンソン、ヒップホップとジャンルに囚われることなく、その時表現したいものを聴き手に伝えてきた。しかし根底にあるのは「演歌でしか得られない自分にとって絶対的なものがある」という確信だ。だからこそ35周年の締めくくりの記念シングルとして選んだのが、尊敬する北島三郎が1985年に発表した女歌「女がひとり」(4月26日発売)だ。

38年前の曲を今、令和の演歌として藤が蘇らせた。この曲について、そして35年歌い続けてきたからこそ手にできたもの、そして愛猫との生活についてインタビュー。前・後編でたっぷりとお届けします。

「一つひとつの目標に向かっていった結果の35年だったという気がしています」

「なんでも長く続けるということは本当に難しいことだと思います。ただ歌うことが好きというだけでは続けられません。何か目標があってそこに向かって進んでいくことの積み重ねだと思います。私の場合はまず、名前と曲を全国の人にわかってもらえるまで頑張ろう、というところから始まって、次は劇場公演、その次は座長公演、『紅白歌合戦』と、幸いにも色々な夢や目標が次々と現れて、そこに向かっていった結果の35年です」。

前に進む力と前向きな気持ち――60分のインタビューの中でとにかくそのポジティブさが活動の原動力になっていることを感じた。こちらまで元気をもらい、清々しい気持ちにさせてくれた。そのポジティブさは元々のものなのだろうか。それともキャリアを重ねてきた結果手にしたものだろうか。

「私の一番の才能は“忘れる”こと(笑)。悩んでも嫌なことがあっても寝て起きたら新しいスタートって思える」

「もちろん苦労はあっても、それを苦と思うのではなく、『今頑張れば次のいい景色が見られるよ』って、自分に希望を持たせながらやってきた35年ではあったと思います。自分のことを冷静に見てみると、一番の特長は“忘れる”才能がすごいということ(笑)。前の日にいくら嫌なことがあったり、悩んだりしても、寝て、朝起きた瞬間から新しいスタートって思えるんです。引きずらない。これはある意味特技だと思います(笑)」。

「ジェニファー・ロペスに大いに刺激を受けました」

以前は毎日お酒を飲んでストレスを発散しリセットしていたが、そのお酒も5年以上前に止めたという。体を鍛え始めたこともあるが「メンタル的には今の方が楽。お酒に頼ること自体があまり解決にはならないなって気づきました」と、お酒を止め、体を鍛えることになったきっかけはあるアーティストの存在だった。

「自分が今後歌っていくにあたっては、声や体調にこれまで以上に気を遣い、鍛えなければいけないと思っていた時に『スーパーボウル』で歌い踊っている、ジェニファー・ロペスをテレビで見て『50歳なのに、こんなに美しい女性がいるんだ!』って驚きました。それで彼女のインタビュー記事を読むと『アルコールNG』と言っていて、それは自分でもわかっていたのですが、彼女の言葉が決定打になりました。『彼女がこれだけやって自分を磨いているのに、私、やらなきゃダメでしょ』『これだけキャリアがあって、何を甘いこと言ってんの、私』って自問自答の毎日でした(笑)。シュワシュワした飲みものが大好きでしたが、今は炭酸水でも同じテンションでいられます(笑)」。

「体全体が楽器。だから歌い続けるためには体を鍛えることが大事」

喉、声のためには体幹を鍛えるべきと、10年以上前からヨガを始め、ここ数年はキックボクシングやピラティスのトレーニングも取り入れている。

「自分の気持ちを切り替えて生活習慣を変えていったら、病気になることもなくなって、早朝からいい声も出るし、調子いいです(笑)。歌うためにはボイストレーニングももちろん大切だと思いますが、それ以上に体を鍛えなさいって後輩には言っています。喉も楽器だと思うので、体幹をしっかり鍛えて、体自体が丈夫じゃないと声が出ないという発見もありました。でも元々サボりたい性分なので、トレーニングだけは絶対にやることって自分に課しています。その代わり毎日続けるために、無理のない範囲でって決めてやっています。トレーニングが終わると私の心もそうなんですが、細胞が喜んでいる感覚があります」。

「60歳になった瞬間いい意味で開き直れた。できることをどんどんやろうって」

節制し、体を鍛えることを続けたことが昨年4月に発売し話題となった初の写真集『FUJI AYAKO』へとつながる。2021年に還暦を迎えた藤が、石垣島の自然の中でその引きしまった、へルシーで艶やかな美ボディーを披露。「黒ビキニ」や「下着に白シャツ」など刺激的なビジュアルに挑戦している。ここでも、年齢を重ねても輝き続けることできるというポジティブなメッセージを発信している。

「最初は写真集ではなくエッセー本ということでお受けしたお話でした。でも写真の仕上がりがすごくよかったので、結果的に写真集になったんです。カメラマンさんを始め女性スタッフで作ったので、とても自然体で臨むことができたし、それを感じていただけると思います」

「58とか59歳の60歳へのカウントダウンの時はすごく嫌でした。でも60歳になった瞬間、どういうわけかいい意味で開き直れたんです。60歳からって逆算の人生だと思うし、『やっぱり後悔のないように生きなくちゃ』ってすごく思ったし、まだ全然元気なので、不思議とこの年からできることをどんどんやろう、という欲が出てきました。それでギターも始めて、猫つながりで仲良くなったOfficial髭男dismのギター・小笹大輔さん、大ちゃんにアコースティックギターを選んでもらいました(笑)。でもエアロスミス好きの私としては、どうしてもエレキにいきたいんです!(笑)」

【後編】に続く

『otonano』藤あや子「女がひとり」特設サイト

藤あや子 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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