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鳥獣戯画の文具!原画への忠実さに目をみはる、立体的なメモ「monoii」を今こそ机の上で楽しもう

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手

特別展が中止になってしまった...

 東京・上野の東京国立博物館平成館で開催中だった「特別展 国宝鳥獣戯画のすべて」。残念ながら、4/25からは政府の緊急事態宣言をうけて、臨時休館となりました。

5月11日 追記
 東京国立博物館のWebによれば、5月14日(金)から再開されるそうです。詳細は以下でご確認ください。
同展のWebページ

5月12日 追記
 また、中止になったようです。詳細は上記Webサイトでご確認ください。

 鳥獣戯画は、日本人なら、誰でも教科書で一度はみたことがあるかと思います。念のために触れておくと、京都・高山寺に保存されている日本最古の動物絵巻です。成立年代は、12世紀。作者は鳥羽僧正とも伝わりますが、複数人の手になるという説もあり、真相ははっきりしません。

 今回の展覧会は、甲乙丙丁の4巻すべてが見られることもあって、期待が高まっていたと思います。休館の措置は、楽しみにしていた皆さんにとってはとても残念なことでしょう。

 ともあれ、美術館の中にあるものだけが鳥獣戯画ではありません。日本の美術史上もっとも有名な作品である鳥獣戯画は、同時に、書籍に収録され、文具にもなり、あるいは自分で書くことすらできる。いまやそういうものになっているのです。

 たとえば、Yahooショッピングで「鳥獣戯画 文具」と検索すれば、テープのりとかはさみとかノートなど、いろいろな種類の文具が出てきます。文具に限らなければ、マグカップとかバッグなどもあるようです。

 要するに、12世紀に成立した鳥獣戯画は、最近では一種のキャラクターグッズのような扱いになり、広くあまねく、日本人の生活の中に溶け込んでいるわけです。

机の上で鳥獣戯画を楽しむ

 今回紹介するのも、そういった鳥獣戯画文具の一つ。
 「monoii」(カミテリア)は、鳥獣戯画の甲乙丙丁各巻に登場するうさぎやかえるなどのおなじみのキャラクター(っていうか、これが日本の元祖キャラクターかも!)をモチーフに、原画に忠実に書き下ろされたメモ。

 それもただのメモではなく、立体的なメッセージメモです。

 パッケージには、1枚の栞のような状態で収納されています。そしてよく見ると、複数の箇所にある切り欠きを合わせることで、机の上で立つ構造になっているのです。
 表面には「いそぎ」「おっけー」「すまない」などの文言が大きめにプリントされています。これが置かれていたら、相手がどんなつもりなのかが一目でわかるわけです。
 さらに、メッセージ欄です。白い記入欄には「message」「date」「from」の欄があり、それぞれ伝えたいこと、日付、名前を書くようになっています。
 巧みだなと思うのは、本来平面であったものが、立体的に起こされており、それがもともとの動物のニュアンスを損なっていないことです。それどころか、三次元になることで、本来の躍動感が増している感すらあります。
 つまり、社内で誰かに渡す書類の脇にこれをおいて、その書類を渡した意図とか、お願いの気持ちなどを伝えるのに使うわけです。バリエーションは、全部で10。
 詳しくは公式サイトを見てみてください。

鳥獣戯画を読み解く本

 肝心の鳥獣戯画そのものについては、多くの謎の存在が指摘されています。
 まずその全巻の構成。作者がだれなのか。ストーリーはあるのか。どう解釈すればいいのかetc
 こういうもろもろの謎については、関連する書籍がそれぞれ分析・解説をしています。かくいう私も、この記事の参考にすべく『カラー版 鳥獣戯画の世界』(上野憲示 宝島社新書)を購入して、少しでも理解しようと読んでいるところです。
 同書には、日本人の鳥獣戯画に対する代表的な感想が登場します。

 たとえば「漫画の神様」とも言われた手塚治虫氏は、かつて、NHKの美術番組「日曜美術館」に出演した折、『鳥獣戯画』の魅力を饒舌に語った。すでに漫画家になってから全巻を見た手塚氏は、「今まで漫画とはどれくらい進歩したものだろうか。ちっともかわっていないじゃないか、何百年も前に全部やられてしまった」と、強いカルチャーショックを受けたという。
(前掲書 P22)

 現在の日本のポップカルチャーの代表であるアニメーションの基礎を作り上げた代表的なクリエイターが、12世紀に書かれた絵の表現力や先見性を評価している訳です。

 同書にはこれ以外にも成立年代や甲乙丙丁各巻の内容や筆致の違い、作者が誰でありまた何人いるのか、同時代の絵巻物との酷似、それぞれの動物の正体や、動作の意味など、これでもかというぐらいの角度から、鳥獣戯画を読み解こうとしています。

謎の多い鳥獣戯画をデスクトップで楽しむということ

 鳥獣戯画をデスクトップで楽しむというのはだから、ちょっと妙なことでもあるわけです。歴史的な成立の由来や意味はおいておき、キャラクターとして一人歩きしているものを、自分の日常生活の中に無理矢理連れてきて、メッセージ代弁させる。ここで紹介しているmonoiiはまさにそういう用途で使われます。

 元の意図も作者もわからないまま、かり出されたキャラクターやその使い方をどう捉えればいいのか。
 私はこれを以下のように考えました。
 鳥獣戯画は800年の歳月の中でそういうおおらかさを身につけたコンテンツに変容したと捉えられないでしょうか。

 12世紀より高山寺に伝わり、最近の平成の大修復をはじめとする幾度の修復の中で、多くの人に知られ、とくに印刷メディア、電波メディアが発達した20世紀以降には、もともとの意味や文脈から飛び出し、多くの人に愛されるようになった。つまり、鳥獣戯画は京都の高山寺や、そこから出てきて東京都美術館平成館にあるだけではなく、もはや日本人の日常の中で普通に愛されるものになっているのではないかと思うのです。
 ちなみに最近では、筆ペンで模写する鳥獣戯画という趣旨の書籍もあります。
 気になった人は是非探してみてください。

鳥獣戯画の御朱印帳。別の記事で紹介した鎌倉の文具店「TUZURU」で見つけました。
鳥獣戯画の御朱印帳。別の記事で紹介した鎌倉の文具店「TUZURU」で見つけました。
デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は週刊誌の書評欄総ナメ。日経新聞「あとがきのあと」登場ほか大学受験の問題に2回出題。『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。認知症対策プロダクト「おぼえている手帳」は経産省オレンジイノベーションプロジェクト事業採択。

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