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ミュージカル『るろうに剣心』でヒロイン。悩みすぎる美少女から脱皮した井頭愛海が目指すもの【後編】

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/S.K.

ドラマから展開する『映画 妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-』に出演する井頭愛海。大ヒットコミックが原作のミュージカル『るろうに剣心 京都編』ではヒロインの神谷薫役に抜擢された。「全日本国民的美少女コンテスト」出身で、キャリアを重ねつつ「悩みすぎて自分を追い込んでしまう」と語っていたこともあったが、主演映画をきっかけに変わったという。最近はイメージを覆す役も増えた。脱皮の裏にあったものは? インタビュー後編をお届けする。

『妖怪シェアハウス』について語る↓

インタビュー前編

原作マンガから舞台に飛び出たようなキャラクターに

――ミュージカル『るろうに剣心 京都編』ではヒロインの神谷薫を演じます。原作やアニメ、映画は観たことありました?

井頭 全部観させていただきました。今回は原作のマンガに忠実な台本で、私もマンガから飛び出したようにパッと見で神谷薫とわかっていただくために、どうしたらいいか考えながら稽古中です。

――神谷薫は人気キャラクターで、再現するのは大きな挑戦ですね。

井頭 そうですね。明るさとか等身大の部分は自分と重なりますけど、芯の強さや男気のあるところ、みんなを巻き込む力のあるキャラクター像をどう作るか。動きや仕草から、いかに自分に自然に落とし込めるか、すごく意識しています。

――動きではどんなことを意識しているんですか?

井頭 普段はおしとやかで、凛としてスッと立っていますけど、怒るとムキーッとなったり(笑)。休憩中も原作のマンガを読んでいます。舞台でやるシーンでの感情の動きや、舞台にはない台詞での薫の心情も体現しようと思っています。

台詞に音符が付いたように感情を音楽に乗せて

――ミュージカルということで、歌稽古もあるんですか?

井頭 はい。普通の歌と違って、台詞に音符が付いている感じで、感情を音楽に落とし込むのが難しいです。特に「○○だーーー」とか音を伸ばすときに、一本調子にならないで感情を乗せるのが、今一番苦戦しています。

――ミュージカルならではですね。

井頭 でも、音楽に助けられるところもあります。展開が速くて、さっきまで剣心に怒っていたのに、いきなりわかり合ったり、何かを決意するときに、音楽がジャーンと流れた瞬間、自分の心も変われる気がして。ドラマや映画だと後から音楽が付いて、さらに感動させられますけど、撮っている現場では流れていないので。音楽と融合してお芝居の表現ができることは、稽古場でも感じています。

――初舞台、初ミュージカルでも、稽古でそこまで悩んではいませんか?

井頭 最初は不安でしたけど、わりと楽しんでいます。もともとミュージカルを観るのが好きだったので、「自分がミュージカルをできる」とワクワクしますね。もちろん、歌もまだ完成までいってませんけど、悩むより、音楽を聴くと心が弾みます。

360度のステージで迫力あるアクションを

――ミュージカル女優さんから「新人の頃は稽古に行くのがイヤになった」という話も聞きますが、そういうことはないと。

井頭 (取材日時点では)まだ稽古で薫のシーンはそこまで多くなくて、これから重要な場面をやっていくので、もしかしたら追い込み期間で壁が立ちはだかるかもしれません。

――『京都編』は原作だと、薫も戦うシーンがあります。

井頭 舞台でも、第二幕の終わりに薫が神谷活心流の技で戦います。IHIステージアラウンド東京の(客席を360度取り囲む)舞台で、迫力あるシーンになればいいなと思っています。

――アクションのレッスンは以前から受けていたんですよね。

井頭 はい。木刀を使った殺陣はやったことがあって、近い部分はすごくあります。神谷道場の歌もあるので、楽しみにしていただきたいです。

深く考えすぎず感じたままやる感覚がわかって

――愛海さんは「考えすぎ、悩みすぎ」なところがあるとのことでしたが、『妖怪シェアハウス』や『るろうに剣心』に関しては、そんな状態にはなっていないわけですか?

井頭 『鬼ガール!!』でめちゃくちゃ悩んでからは、自分の中にスンと入ってくるように変わりました。昔は本当に自分を追い詰めてしまうところがあったのが、今は深く考えすぎず、自分の感じたままにやればいい感覚がわかってきて。現場で皆さんとのセッションを楽しむようになりました。

――ごはんが食べられなくなるようなこともなく?

井頭 もう全然なくなりました。『鬼ガール!!』で自分にとって過酷な現場を経験したからこそ、次の現場からは何かあってもすぐ消化できるようになって。精神面で成長できたように感じますし、その後の作品で「良かったよ」と言ってもらえることが増えました。

――『妖怪シェアハウス』の小梅だったり、Huluの『瑠璃とカラス』のヤンキー役だったり、役幅も広がってきたようですね。

井頭 いただける仕事は何でもやりたいと思っています。自分でもいろいろなジャンルに挑戦するのは、やり甲斐を感じて。やったことのない役だからこそ、やりたい気持ちはあるので、これからも変な役や(笑)、個性的な役を演じられたら。クールにキメた会社員とか、小悪魔とか、山の中で育った少女とか、やってみたいです。

――お嬢さまイメージから脱皮したい、という想いもあったり?

井頭 最初の頃はいいとこのお嬢さんとか、おとなしい役が多かったのが、最近は明るい役やちょっと変わった役もやれているので、さらにもう一段階、違う印象の役にも挑戦したいですね。初めてのヤンキー役も、ミスマッチが良かったのかなと。やりすぎくらいをいつも意識しています。自分の限界を突破して、本当にやりすぎなら抑えればいいので。

同年代の活躍に焦ることはなくなりました

――「このままではいけない」みたいな危機感を持つこともありました?

井頭 高校生の頃は芸能コースに通っていたこともあって、同年代の子が活躍して、いろいろな作品に出ているのを見て、「私ももっとやりたいけど、どうしたらいいんだろう?」と思っていました。今はそういう焦りはなくなって、自分のペースで役に向き合っています。同年代は良い刺激になりますけど、昔みたいに「私もやってやる!」という感じではなくなりました。

――映画やドラマを観ていて、刺激を受けることもありますか?

井頭 最近、ゾンビ系が面白いなと思って(笑)。一時はホラーにめっちゃハマっていました。『Sweet home』という怪物が出てくる韓国ドラマがあって、そういう極限状態の役はやってみたいです。ゾンビのほうの役でもいいですし(笑)。

――怖い系は平気なんですね。

井頭 昔はホラーは大嫌いでしたけど、友だちに強制的に見せられ続けていたら、面白くなってきました(笑)。『死霊館』とか、チャッキーの『チャイルド・プレイ』とか、『ドント・ブリーズ』とか。最近だと『クワイエット・プレイス』とか、公開された海外のホラーは、よく映画館に観に行きます。

――いずれ自分で出ることになったら、役立ちそうですね。

井頭 もっと深みがある芝居をできるようになりたいので、ヒューマンストーリーにも憧れます。『湯を沸かすほどの熱い愛』もすごく好きで、家族の物語や、フィルムで撮った感じの自然体の中に収められているような作品にも出たいです。

――やりたい役がいろいろ出てきましたが、仕事以外で身に付けたいこともありますか?

井頭 もっと大人になりたいので、何か勉強をしたいとはすごく思っています。朝ドラの『カムカムエヴリバディ』の影響で、ラジオの英会話講座を聴いてみようかと考えています(笑)。

撮影/S.K.

Profile

井頭愛海(いがしら・まなみ)

2001年3月15日生まれ、大阪府出身。

2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞。2013年に映画『おしん』で女優デビュー。主な出演作は、ドラマ『べっぴんさん』、『明日の約束』、『さくらの親子丼2』、『少年寅次郎』、『サムライカアサン』、映画『鬼ガール!!』など。ドラマ『瑠璃とカラス』(Hulu)が配信中。5月17日より上演のミュージカル『るろうに剣心 京都編』、6月17日公開の『映画 妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-』に出演。

ミュージカル『るろうに剣心 京都編』

5月17日~6月24日/IHIステージアラウンド東京

公式HP

(C)和月伸宏/集英社
(C)和月伸宏/集英社

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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