「鬼滅の刃」のブレーク ビッグデータから解析 “失速”の理由も
映画の興収が400億円を突破するなど吾峠呼世晴さんのマンガで、アニメ化もされた「鬼滅の刃」。社会的ブームとなった同作についてビッグデータから読み解いたところ、ブレークと“失速”の姿が見えてきました。
「鬼滅の刃」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で2020年5月まで約4年間にわたって連載されたマンガ。人食い鬼を倒す「鬼殺隊(きさつたい)」になった竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、鬼になった妹を人に戻そうと仲間とともに奮闘する和風ダークファンタジーです。
「鬼滅の刃」ブームの流れを整理すると以下の通りです。
<2019年>
4月~9月 テレビアニメ「立志編」放送
秋ごろ コミックスが売り切れ状態に
<2020年>
5月 マンガが完結
10月 アニメ映画「無限列車編」公開
テレビの情報番組や一般紙が取り上げる
<2021年>
5月 映画の興収が400億円を突破
9月 アニメ映画「無限列車編」地上波初放送
10月~11月 「無限列車編」のテレビアニメ版放送
12月 「遊郭編」放送開始(~2022年2月)
<2022年>
2月 「遊郭編」最終回で「刀鍛冶の里編」のテレビアニメ化発表
◇大きな三つのピーク
今回調査に使ったのは、ヤフーの行動ビッグデータを元に、生活者の実態や動きを可視化するインターネットサービス「DS.INSIGHT」です。ちなみにヤフーで検索された実数ではなく推計値となります。
「鬼滅の刃」を検索すると、2019年の検索ボリュームは158万、2020年は800万、2021年は455万となります。男女比は女性が優位で55%前後で推移。年代割合は、40歳代の30%が最大ですが、最小の70歳代でも5%のリーチがあるなど、老若男女問わないことが分かります。
月ごとで見ると、大きく三つのピークがありました。最大は映画公開時(2020年10月)の266万。次のピークが映画「無限列車編」の地上波初放送(2021年9月)の139万。最後に、原作マンガ終了時(2020年5月)の118万です。
惜しいと思うのが、「無限列車編」の地上波初放送時(2021年9月)の盛り上がりを、「遊郭編」(2021年12月~)にうまくつなげられていないと判断できることです。139万の余勢をかってスタートしたテレビアニメ版の「無限列車編」ですが、新規カットがあるとはいえ、実質はほぼ同じ内容だったこともあってか、10月は80万、11月は32万と“失速”しています。
「遊郭編」が始まった12月は51万、クライマックスで盛り上がった2022年2月は63万まで盛り返していますが、一度視聴習慣がなくなって、離れたライト層の興味を再び取り戻すことは大変だったのかもしれません。もちろん「鬼滅の刃」の元々のボリュームが、他のコンテンツより巨大なので、まだまだ圧倒しているのですが……。このレベルのコンテンツはそうそう生み出せないだけに、惜しいとも言えます。
◇直近の注目ワードは…
なお2021年の1年間に「鬼滅の刃」と共に検索されたのは、以下のようになります。「アニメ」「テレビ」「遊郭編」などのワードが上位に並びます。「ローソン」などのワードからは、タイアップキャンペーンが人気だったことも分かります。
そして直近1カ月(2022年4月)ですが、検索ボリュームは13万でした。規模的には、2019年7月のテレビアニメ放送時のレベルですね。「鬼滅の刃」のワードと共に何が検索されたのかを可視化した「詳細キーワードマップ」を見ると、アニメ「刀鍛冶の里編」に興味が向いているのが分かります。人気商品の「一番くじ」や、出演声優のワードもありました。バリエーションに富んでいるのもポイントでしょう。
午後11時放送だったテレビアニメの視聴率と同様、ビッグデータを見ても、「10月にすぐ『遊郭編』がスタートしたら違った結果があったのでは」と思わずにはいられません。もちろん制作期間などの事情はあったのでしょうが、「戦略ミス」と言う声はどうしても出るでしょう。
もちろん、世の中はすべて成功というわけにもいきません。知名度の高いコンテンツだけに「刀鍛冶の里編」のアニメが始まって、施策次第ではブームの復活もあり得るでしょう。変わらず注目したいところです。
ヤフー・データソリューション | DS.INSIGHT
※この記事は、Yahoo!ニュース 個人編集部、ヤフー・データソリューションと連携して、ヤフーから「DS.INSIGHT」の提供を受けて作成しています。
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