コロナ感染でみられる特徴的な皮膚症状〜COVID toe(コロナのつま先、コビットつま先)とは?

新型コロナウイルスに感染すると約20%の患者さんに皮膚症状が出現するとの報告があります。(文献1)
この皮膚症状にはいくつかのパターンがあります。
皮膚症状のタイプですが、18名中の14名がよく見られる赤いぶつぶつ(紅斑性皮疹)、3名がじんま疹のような症状、1名が"みずぼうそう"(水疱瘡)のような発疹でした。これらは体幹を中心に出現し、かゆみはあまりないようです。
最近になり、"しもやけ"に似たCOVID toe(コロナのつま先、コビットつま先)と呼ばれる特徴的な所見が出現することもわかってきました。
さて、コビットつま先とはどういう症状なのでしょうか?
63例の"しもやけ"様の皮膚症状を集めた解析結果
コビットつま先は名前の通り、つま先に"しもやけ"のような症状が出現した皮膚症状です。新型コロナウイルスに感染した患者さんにみられる特徴的な皮膚症状として報告されています(2020年4月末現在)。
しかし、足のつま先だけでなく踵(かかと)や手の指先にも症状が出現します。
つい先日、イタリアから63例の"しもやけ"様の皮膚症状を集めた解析結果が報告されました。(文献2)
性別:男性 57.4% vs 女性 47.6%
平均年齢:14歳
症状の出現部位:足のみ 85.7% 手足の両方 7% 手のみ 6%
皮膚症状に関して:
赤くぷくっと膨れた皮膚症状(紅斑性浮腫性病変)57%
水ぶくれの病変 43%
自覚症状
かゆみ 27% 痛み 27% 痛みとかゆみの両方出現 20.6%
皮膚以外の症状
下痢や気持ち悪いなどの消化管症状 11.1%
咳や呼吸が苦しいなどの呼吸器症状 7.9%
発熱 4.8%
以上のことから、若い年齢に"しもやけ"様の皮膚症状が出現することがわかります。
また、痛みやかゆみ、そして皮膚症状は比較的長く持続すると報告されています。
コビットつま先はどうして起こるのか?
新型コロナウイルスに感染した際、コビットつま先が出現するメカニズムについてはこれまでの研究報告から推測できます。
まず、新型コロナウイルスに感染すると小さな血管に炎症が起こることが報告されています。(文献3)
さらに、新型コロナウイルスは血管内皮細胞に感染し内皮細胞に炎症を起こすこと(文献4)、血液が塊やすくなり、血の塊である血栓が起きることも報告されています。(文献5)このように、血管の炎症や血栓によって指先の血流が悪くなった結果、"しもやけ"と同じ様な皮膚症状が出現するメカニズムが考えられています。
コビットつま先が出現したら新型コロナウイルスに感染しているのか?
ではそうなると、コビットつま先が見られたら必ず新型コロナウイルス感染症なのか?という疑問が生じます。
"しもやけ"様の症状ということから、最初に本当の凍瘡(しもやけ)ではないかと考える必要があります。
"しもやけ"は寒いところに長時間ゆび先がさらされると起こります。まずはそのような経験がないか思い起こす必要があります。
他に凍瘡様ループスといった膠原病やリンゴほっぺ病などのウイルス感染でもこのような"しもやけ"様の症状が出現します。こういったことから、皮膚症状に関しては皮膚科専門医の診察が必要です。
スペインからは、"しもやけ"様の皮膚症状が出現した132名の患者さんを解析して、新型コロナウイルス感染症との関連を調べた報告があります。(文献6)これは、これまでの新型コロナウイルスに感染している患者さんを調べて、コビットつま先を見つけたという流れではなく、先に"しもやけ"様の皮膚症状があるかどうか確認し、その患者さんが新型コロナウイルス感染症と関連するかどうか調べた論文です。
この報告によると、54人の患者さん(40.9%)は新型コロナウイルス感染症が確認された患者との濃厚接触者であり、28人の患者さん(21.2%)は医師や看護師などのヘルスワーカーと密接な接触があり、19人の患者さん(14.4%)は新型コロナウイルス感染症と臨床的に診断されていたようです。
つまり、"しもやけ"様の皮膚症状が出現した76.5%の人が新型コロナウイルスになんらかの関係があるという報告でした。
一方で、"しもやけ"様の皮膚症状が出現した11人の患者さんにPCR検査を実施したところ、2名の患者さんしか陽性にならなかったとしています。ただし、この陽性率の低さについては、"しもやけ"様の皮膚症状が新型コロナウイルスの感染の後半に出現するためPCRでは検出できなかったのではないかと筆者らは考察しています。
まとめ
新型コロナウイルスに感染した際、しもやけの様な症状(コビットつま先)が出現することがわかってきました。この症状は、特に若い世代に多いようです。
しかしながら、コビットつま先が出現したからといって必ず新型コロナウイルスに感染しているというわけではありません。下痢や吐気、咳などの症状がないか体調管理を行いつつ、感染を拡大させない努力が必要です。
日本国内の感染者数が減少してきた今、ひとりひとりがもう一度気を引き締めて行動する必要があります。
参考文献
文献1: J Eur Acad Dermatol Venereol. 2020 Mar 26. doi: 10.1111/jdv.16387.
文献2: J Eur Acad Dermatol Venereol. 2020 Apr 24. doi: 10.1111/jdv.16526.
文献3: Transl Res. 2020 Apr 15. pii: S1931-5244(20)30070-0. doi: 10.1016/j.trsl.2020.04.007.
文献4: Lancet. 2020 Apr 20. pii: S0140-6736(20)30937-5. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30937-5.
文献5: Am J Hematol. 2020 Apr 8. doi: 10.1002/ajh.25822.
文献6: Journal of the American Academy of Dermatology (2020), DOI: https://doi.org/10.1016/j.jaad.2020.04.093