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グーグル、「発展途上国に安価なネット接続を」、「人工衛星」「気球」「無人飛行機」を使った通信網構築へ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

ウォールストリート・ジャーナルによると、米グーグルは10億ドル以上を投じ、人工衛星を使ったインターネット接続事業を進める計画だという。

インターネット接続のインフラがなかったり、インフラがあっても高額な料金がかかる発展途上国などに向けてサービスを提供するのが狙いという。

同紙によると、計画の詳細は流動的だが、グーグルはまず180基の小型衛星を打ち上げ、その後数を順次増やしていく予定。

またこのプロジェクトにかかる費用の総額は10億〜30億ドルと見られている。費用は最終的なネットワークの規模によって大きく異なり、計画の最終段階で衛星の数が当初計画の2倍になる可能性もあると同紙は報じている。

上空20キロメートルを飛ぶ気球や無人機

一方でグーグルは昨年6月から「プロジェクト・ルーン(Project Loon)」と呼ぶ、気球を利用したインターネット接続環境構築の研究を進めている。

これは、旅客機の高度より2倍高い上空20キロメートル付近の成層圏風に、直径15メートルほどの一連の気球を漂わせ、地上に電波を発信してインターネット接続を提供するというもの。気球の動力には風力と太陽光を利用するという。

またグーグルは今年4月、無人飛行機のメーカー、米タイタン・エアロスペースを買収した。

このタイタン・エアロスペースが手がける無人飛行機は、前述の気球と同じく約20キロメートル上空を飛行する。機体に張りめぐらされた太陽光電池パネルによって駆動し、着陸や燃料補給することなく5年間飛行できるという。

ウォールストリート・ジャーナルによると、タイタン・エアロスペースの無人飛行機はやがて気球に取って代わる可能性がある。一方で無人飛行機と衛星は互いに補完するという。

無人飛行機は比較的人口の多い狭い地域に向けて、大容量で高品質の通信サービスを提供できる。人工衛星はより人口の少ない比較的需要の低い地域を広範にカバーできるとしている。

衛星通信の専門家がグーグルに移籍

なお今回の人工衛星プロジェクトに関連し、O3bネットワークスという衛星通信サービス企業の創業者と、前最高技術責任者(CTO)がグーグルに移籍した。また同社は、商業衛星通信システムの設計・製造を手がける米スペースシステムズ/ロラールの技術者も雇い入れている。

現在、有線のインターネット接続はカバー範囲が限定的。また携帯電話通信網は世界規模で見れば、ごく狭い範囲でしか利用できない。

グーグルによると、まだ地球上の3分の2の人々が手頃な価格の高速インターネット接続を利用できない状況。とりわけ南半球の大半の国では高速インターネットの利用料が1カ月の給与を上回るほど高額。「研究は、そうした地域や遠隔地の人々に安価なサービスを提供することを目指している」としている。

ウォールストリート・ジャーナルは、グーグルのプロジェクトが成功するかは分からないが、もし成功すれば、発展途上国のインターネットアクセスを180度転換できると伝えている。

今のグーグルはこの分野のリソースを持っており、多くの業界関係者がその進捗を見守っていると同紙は報じている。

JBpress:2014年6月4日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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