「何でも跳ね返す」おばあちゃん

［ロンドン発］2つの世界大戦を経験した106歳のコニー・ティッチェンさんは3月中旬に肺炎の疑いで英バーミンガム・シティー病院に入院し、その後間もなく新型コロナウイルスに感染していると診断されました。

イタリアでは80歳以上の感染者の致死率は20.2%、70～79歳は12.8%。免疫力は年齢とともに低下すると言われています。

サンドウェル&ウエスト・バーミンガムNHS（国民医療サービス）トラストによると、コニーさんは新型コロナウイルスを克服した英国最高齢の患者になるとみられています

バーミンガム在住のコニーさんは約3週間、新型コロナウイルスと戦い、今週、陰性の健康診断書を受け取りました。コニーさんは看護師らの拍手に送られて今月14日に退院。

コニーさんは「新型コロナウイルスに打ち勝ったのはとても幸運でした。今は家族に会うのが待ちきれません」と目を輝かせました。

孫のアレックス・ジョーンズさん（40）は「おばあちゃんは何でも跳ね返してきました」と言います。ダンス、サイクリング、ゴルフをするのが大好きなコニーさんは活動的な人生を送ってきました。

「おばあちゃんはいつも自炊してきました。でも実はマクドナルドが好きなんです。でも今はロックダウン（都市封鎖）でマクドナルドが閉まっていることをおばあちゃんには伝えていません」とアレックスさん。

新型コロナウイルスをも退けた健康の秘密は、コニーさんはいつまでも若々しく活発で非常に自立していることだそうです。

コニーさんは昨年12月に腰の手術を受け、30日以内に再び歩いていました。「おばあちゃんは本当に素晴らしい。家族全員がおばあちゃんとの再会を心待ちにしています。ファンもかなりいます」とアレックスさんは笑顔を浮かべました。

アレックスさんはこうも付け加えました。「おばあちゃんが病院で受けた看護は素晴らしく、それを忘れることはできません。入院中、看護師から常におばあちゃんの状態が伝えられ、私はとても幸せでした」

第二次大戦の生き残り兵が13億円の寄付集める

第二次大戦の生き残りである元英陸軍大尉トム・ムーア氏（99）は100歳の誕生日を目前に控えてNHSのために1000ポンド（約13万5000円）を目標に自分の庭の端から端まで約25メートルを100往復するチャリティーを始めました。

これまでに約47万8000人超から950万ポンド（約12億8000万円）の寄付金が集まりました。

ムーア氏は英イングランド北部ヨークシャーのキースリーで生まれ育ちました。地元の公立進学校グラマースクールに通い、土木技師として見習いを終えました。第二次大戦で英王立装甲軍団第145連隊に入隊、将校の訓練に選ばれました。

後にインドに配属され、旧日本軍が降伏した後にインドネシアのスマトラ島に行き、英ボービントン駐屯地に戻って装甲戦闘車両学校の講師を務めました。

ムーア氏は以前、がんと腰の骨折を治療してくれたNHSスタッフに感謝の気持ちを伝えるため、ロンドン北郊ベドフォードにある自宅の庭を、歩行器を使って往復するチャリティーを開始。英TVニュース番組で紹介されると瞬く間に寄付が増えました。

ムーア氏は「NHSの看護師や医師ら全てのスタッフは今ほどみんなの支援を必要とする時はない」とツイート。庭をもう100往復すると張り切っています。

英国では45人の医療従事者が犠牲に

新型コロナウイルスの重症・重篤患者を至近距離で看護しなければならない医師や看護師の感染し、殉職するニュースが跡を絶ちません。疲労とストレスで免疫力が落ちている上、ウイルスの曝露量が多いことが原因です。英国ではすでに45人のNHSスタッフが亡くなっています。

ルートン&ダンステーブル病院で5年働く看護師メアリー・アゲイワ・アギャポンさん（28）は新型コロナウイルスに感染していることが確認され4月7日に入院。緊急の帝王切開を受け、女児は無事誕生しましたが、メアリーさんは12日に死亡しました。

女児が陽性かどうかは分かっていないそうです。メアリーさんの夫は感染が確認され、自己隔離中です。同僚は「彼女には基礎疾患はありませんでした。理想的な素晴らしい看護師でした」と英メディアに話しています。

メアリーさんは少なくとも3月12日まで病院で勤務していました。医療従事者は使命感が強く、体力に自信を持っている人が多いため、治療を受けるのが遅れてしまうことがあるようです。

NHSの病院では新型コロナウイルスの感染を防ぐフェイスシールドやゴーグル、N95マスク、防護服、手袋など適切な防護具が不足しています。PCR検査のキャパシティーも十分ではないため、どこに感染者がいるのか突き止めることができず、病院がホットスポット化してしまう恐れがあります。

（おわり）