Yahoo!ニュース

学校の先生たちに聞いた 保護者やPTAのこと、本音でどう思っている?

大塚玲子ライター
子どもが通う学校で先生の本音を聞くことはなかなか難しい(※写真はイメージです)(写真:アフロ)

 PTAはその名前からして「P(保護者)とT(先生)が協力する場」と理解されているが、活動としては「保護者の団体」という性格が強く、先生の存在はスルーされがちだ。

 先生たちは保護者との関係やPTAについて、どう感じているのか? 今回、中学や高校で教える5名の先生に話を聞かせてもらった。学校ではなかなか聞けない先生たちの本音。今回、その一部を紹介させてもらいたい。

*一部の難しい保護者との関係

 よく言われる通り、難しい一部の保護者とのコミュニケーションに頭を悩ませる先生はやはり多かった。

 「難しい保護者の方が僕らの学年に一人いらして、そのお子さんには直接関係ないことで電話をしてくるんですが、それがけっこう長い。たとえば、そのお子さんが仲良くしている別の生徒が柔道が苦手で体育の時間に困っているとか。でもその困っているという生徒本人の保護者は何も言ってきていないんです。最初その方の対応は担任がしていましたが、いまは『管理職マター』になっています。

 スタートライン(入学時点)から学校に不信がある保護者の方の場合、こちらの言いたいことが伝わらなかったりすることもあります」(県立高校勤務A先生♂・教員歴約10年)

 「気を遣わなければいけない保護者が昔より増えている、という実感はあります。学校への要望がかなり厳しくなっているなと。以前いた学校では、保護者の交際相手だったコワい男性が学校に怒鳴り込んできたり、毎晩携帯に電話をかけてきたりして、怯えたこともあります。携帯の番号は部活動の引率の際、緊急用として伝えていましたが、あれ以来絶対にメアドしか教えません」(公立中学校勤務まる子先生♀・関西地方・教員歴約30年)

 「教育困難校に勤めていますが、欠席する生徒のご家庭から連絡が来ないことが多いです。こちらから電話をしてもなかなかつながらず、子どもが休んでいるのを親が知らないこともたびたびある。お仕事で朝早く出て夜遅く帰るご家庭もあれば、ネグレクトなど、親子関係そのものに問題を抱えていらっしゃることもあります。連絡をする際は言葉を慎重に選びますが、最初から学校に不信感をもっている方の場合『なんでそんなことで連絡をしてくるのか』と返されてしまうことも。

 2年前からスクールソーシャルワーカーさんが定期的に来るようになり、多少楽になりました。教員が全てを抱えこまなくてもよくなったので」(県立高校勤務T先生♂・東北地方・教員歴約25年)

 「お休みをしている生徒のご家庭に、学校の配付物をお渡ししたいと伝えたところ、『自分の職場に持ってきてほしい』と言われ、担任が届けざるを得なくなることがあります。学級の中で、かなり気を遣わなければいけないのは、2、3人。その対応が日々の業務を圧迫します」(公立中学校勤務momo先生♀・教員歴約10年)

 これは先生たちも大変だなぁ……、と思うが、その他大勢の保護者としては特にできることがない。こういった話を聞くと、大人しい保護者はより発言を控えがちになってしまうが、しかし、言うべきことは言わねばならない面もあるだろう。萎縮し過ぎるのも、別の問題を生む。

*その他大勢の保護者との関係づくり

 一部の難しい保護者を除く、その他大勢の保護者たちとの関係づくりについては、それぞれの先生が試行錯誤している印象だった。

 「(その他の保護者とは)あまり関わる機会がないです。入学式のあとの懇談会とか、保護者会とか、進路や修学旅行の説明会とか、その程度です。電話がかかってくることもそんなにないので、こちらからかけるほうが多い。でも保護者の皆さんも忙しいので、なかなか連絡がつかないこともあります。気になることがあったら、もうちょっと遠慮せず電話してもらえたらとも思います」(県立高校勤務A先生♂・教員歴約10年)

 「保護者にメアドをお知らせしています。いつもおうちの方とつながっている感があるし、保護者の方も連絡しやすいようで、私としてはいいですね。協力し合う体制が整うというか。特に不登校の子の保護者とは毎日のようにメールをやりとりしています。

 部活動指導のときは電話で呼び出されたりすると、体育館から職員室まで走ったりしていましたし、学校は多くても電話回線が2本しかなくすぐ埋まってしまう。昨日も『体育で怪我をして冷やしていますが、おうちでみてください』とメールしましたが、すぐ済んで便利です。電話はつながらないことも多いので。

 朝は欠席連絡の電話の嵐になるので、アプリがあるといいですね。メールだと振り分けないといけないので」(公立中学校勤務まる子先生♀・関西地方・教員歴約30年)

 「保護者と教員は、利害が対立するところがあると思います。たとえば、何か問題が起きて、保護者が学校に来なければいけないとき、保護者は仕事が終わってからの時間を希望するけれど、そうすると教員は勤務時間を過ぎて残らざるを得ない。それが当たり前になってしまっています」(公立中学校勤務I先生♂・中部地方・教員歴約15年)

 なお、よく「保護者が学校に『部活動をもっと長くやれ』と言ってくる」という話を聞くが、これについては「ここ数年は減っている」という声を、2人の先生から聞いた。

 「以前は夏休み中など、部活が休みの日を作ったりするとたちまち苦情が来ましたけれど、ここ2、3年はそういうのは減っていますね。今年久々にクレームが入って、最近では珍しいよね、と他の先生と話していました。いまは『あまりやってほしくない』という保護者もいますが、この方たちは声が小さいです(笑)」(公立中学校勤務まる子先生♀・関西地方・教員歴約30年)

 「いまは顧問が『活動を縮小します』といえば、『そうですか』という感じです。そんなに要望は多くないです」(県立高校勤務A先生♂・教員歴約10年)

 これはつまり、マスコミで取り上げられるなどして、先生たちが困っていることがわかれば、保護者だって理解する、ということだろう。部活以外の問題についても、まずはもっと知らせること・知られることが必要と考えられる。

*PTAについて思うこと

 PTAについては、皆さんはっきり言わないものの、あまり必要性を感じないというのが本音のようだ。

 「昔とはちょっと違うので、教員のほうは求めていないというか。給食試食会とか勉強会とか、去年やったから今年もやる、という感じですよね。正直もうちょっとダイエット(業務削減)できるのかなと思います。清掃や草むしりは外部に出すとお金がかかるので、教員や生徒保護者でやるでいいと思いますし、いまPTAがやっていることは、組織でなくても可能では。

 PTA会費は毎月給与から天引きされています。加入申込みはしていません。このお金が部活動にまわっているんですよね。教員は(部活動で)タダ働きをしたうえ、お金まで払っているわけで、それはどうなのかなと思います」(公立中学校勤務momo先生♀・教員歴約10年)

 「いまの活動内容はもうちょっと見直してもいいのかなと。研修で講師を呼んだり、劇を観に行ったりというのは、PTAじゃなくてもできるのでは。3年の模擬試験の監督をPTAの保護者に任意でやっていただいているのは助かります。

 PTAはもうちょっと物申してくれてもいいのかなと思うこともあります。うちの自治体は首長が教育行政にかなり入ってくるので、PTAが保護者代表として意見してくれたほうがいい面もあるんじゃないかなと。

 給与明細を確認したら、PTA会費は引かれていませんでした。加入の意思確認もなかったです」(県立高校勤務A先生♂・教員歴約10年)

 「自分の子どもの学校でPTA役員をやったとき、忙しくてなかなか参加できなかったんですが、(母親たちの)あの空気の中ではなかなか否定的なことを言いづらいですよね(苦笑)。昔と違っていまは共働きの家庭が多いし、大変な状況の方もいっぱいいらっしゃる。廃止したらどうですかね、という意見です(苦笑)。学校にお金が足りないのは確かなので、部活関連は別途お金を集めたり、寄付を募ったりする必要があると思いますが。

 PTA新聞などそこまで頑張らなくてもいいのにと思いますし、教員もテストを作らないといけない時期に講演会への参加を強制されたり。保護者もやりたくない役員をやったりしているので、こんな大変なことやめればいいのに、といつも思ってます。でも、やめようと言える、発起人になれる人はなかなかいないですよね……」(公立中学校勤務まる子先生♀・関西地方・教員歴約30年)

 「PTA事務局長をやっていますが、会計や連絡調整など、けっこう仕事が多いです。会長さんとは基本メールでやりとりしますが、ほかの役員さんには文書を郵送しています。メールアドレスを伝えていますが、なかなかメールでは返事が来ないので(苦笑)。集まりはどうしても夕方になるので、教員も勤務時間外になりますし、保護者も仕事を早めに切り上げて来るので負担ですよね。

 PTAについては、以前学校諸経費の集金業務を担当したとき、『加入が任意のはずなのに、どうして全員から会費を集めるのか?』と疑問に思って。諸経費を納めてもらえないご家庭には、督促状を出したり家庭訪問をしたりして納入をお願いするんですが、そのなかにPTA会費が含まれていたんです。任意加入なのに、おかしいですよね。

 集めた会費の使いみちについても、疑問に思うところはあります。会計簿を見ると、生徒に還元しないようなものも支出している。たとえば教員の教育研究会の費用とか。教員もPTA会費を払っていて、ちょうどそれと同額くらいではありますが、本当はPTAを介さず、直接(研究会費を)払ったほうがいいですよね。

 いままでのようなPTA組織の必要性を、私はあまり感じないです。特に高校は、実質全部、教員がやっている状況なので。でも『PTAは必ずやるもんだ』という方が会長さんになるので、『なくしてもいいのでは』みたいなことを言っても受け止められないですよね(苦笑)。少しずつ解きほぐしていかないと、と思います」(県立高校勤務T先生♂・東北地方・教員歴約25年)

 先生たちの本音、どう感じたろうか。筆者同様、聞けば納得、という保護者も多いのではないだろうか。今後も協力関係を築いていくうえで、参考にされたい。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

大塚玲子の最近の記事