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知っておきたい「親」の相続~親の「遺言書」を見つけ出す方法 

竹内豊行政書士
せっかく親が遺言書を残しても、見つからなければ意味がありません。(写真:アフロ)

親が生前に「残した」と言っていた「遺言書」が見つからない・・・。

亡くなった親が遺言書を残していたのかハッキリしない・・・。

そんなときあなたはどうしますか?

そんなモヤモヤした気分を解消するために、亡親の遺言書の見つけ方をご紹介します。

公正証書遺言の場合~「遺言検索システム」を活用する

公正証書遺言の場合、遺言書の「原本」(遺言者と証人が署名・押印した遺言書)は、全国の公証役場の本部である日本公証人連合会が管理する「遺言検索システム」で厳重に保管されています。

「遺言検索システム」を利用すれば、次のことが分かります。

・公正証書遺言の有無

・公正証書遺言が存在している場合は、遺言書を保存している公証役場の名前

「遺言検索システム」は、全国のどの公証役場からも公正証書遺言の有無を確認できます。

遺言検索システムが活用できる期間

遺言検索システムで確認できるのは、1989年(昭和64)1月1日以降に作成された遺言書に限られます(ただし、東京都内の公証役場で作成された遺言書に限り、1981年(昭和56)1月1日以降に作成された遺言書も検索・照会が可能)。

したがいまして、1989年(昭和64)1月1日以前に作成された遺言書の有無は、遺言書を作成したと思われる公証役場に個別に問い合わせするしかありません。

遺言検索システムの利用方法

遺言検索システムの利用方法をご紹介します。

利用できる者:相続人等の利害関係人

窓口:全国どの公証役場でも受け付けします

 事前に電話で予約を入れておくと待ち時間もなくスムーズに行えます。

必要書類

・亡親の死亡が記載された戸籍謄本

・亡親との相続関係を証する戸籍謄本

・請求者の運転免許証等の官公署が発行した写真付きの身分証明書と印鑑(朱肉で使用するもの)等

遺言検索システムを利用した結果、遺言書の存在が明らかになれば、亡親が遺言書を作成した公証役場に「謄本」(遺言書の写し)を請求します。これにより遺言書を入手できます。

親の生前中は利用できない

親が公正証書遺言を残していたとしても、親が生存している間は、たとえ子どもから問い合わせがあっても、公証役場は一切回答しません。つまり、親の生存中は遺言検索システムを利用することはできません。

自筆証書遺言の場合~探し出すしかない

自分で書いて残す「自筆証書遺言」の場合は、ひたすら探し出すしかありません。次の場所で見つかることがあります。

・貸金庫

・仏壇

・書斎

もし、生前親が懇意にしていた法律専門家がいた場合はその者が保管していることもあります。念のため問い合わせをしてみましょう。

「遺言書保管法」が成立~法務局が自筆証書遺言を保管してくれる

せっかく残した自筆証書遺言の紛失等を防止するために、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が今年7月6日に成立しました(同年7月13日 公布)。

この法律により、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことが可能となりました。

なお、遺言書保管法は、公布の日から2年以内に施行されます(今後、政令で施行期日が決まります)。施行前に自筆証書遺言を法務局に持ち込んでも保管してくれませんのでお気を付け下さい。

亡親の遺言書の有無が確認できない場合は、まずは「遺言検索システム」を利用すること。遺言検索システムで調査した結果、公正証書遺言の作成の事実がない場合は、自筆証書遺言を探し出すという手順で探し出してください。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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