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『冬のソナタ』から丸15年…韓国ドラマはなぜ日本で愛され続けるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ペ・ヨンジュン(写真:YUTAKA/アフロ)

日本の韓流ブームのはじまりとなったコンテンツは、韓国ドラマだろう。

2004年に『冬のソナタ』がNHK総合で放送されて以来、韓国ドラマは日本のエンタメのひとつのジャンルとして定着している。

なぜ韓ドラは日本で愛されるのか

韓国の人は世界で一番ドラマを見続けるともされ、多くのドラマが日々作られているのだが、そんな韓国ドラマはなぜ日本で長く愛されているのか。

(参考記事:韓国の人が世界で一番ドラマを見続けるのはなぜ?

日本に初めて韓国ドラマを本格的に輸入したパイオニアでもあるコンテンツセブン代表取締役の成七龍さんは、韓ドラが日本で愛される理由を大きく6つに分析する。

「まずは“少女マンガのような世界観”ですね。ここまで悲劇のヒロイン、王子様の登場、明確な悪役といった、コテコテのドラマは日本にありませんでした。それが新鮮で、自分の叶えたかった世界が広がっているわけです」

「次に“先が読めない展開”。韓国ドラマは毎話最後の5分で展開が変わるため、続きが読めず、気になる。時代劇に関していえば、“大河ドラマのような重厚感”が日本のファンに支持されています。日本では大河ドラマが年に1作品しか作られませんが、韓国には何作品もあるため、いろいろと楽しめるのです」

(参考記事:『オクニョ』最終回前に総まとめ!ドラマは歴史的事実をどこまで反映していたのか)

実際に韓国では時代劇ドラマが次々と作られており、ヨ・ジングやチョ・ジョンソクら人気俳優が“韓流時代劇ブーム”を導いているという。

「魅力的な“サントラの存在”も重要。韓国ドラマの挿入歌は、単体として聴きたいと思える歌ばかり。映像と音楽が相まって、ドラマのシーンが五感に刷り込まれ、思い入れも強くなります」

ここまでをドラマ自体が持つ内的な理由とするならば、残る2つは外的な理由もあるという。

ファンミーティングも韓ドラならでは

「日本では韓国ドラマを“習慣としての視聴”が叶います。BS局を中心に、毎日韓国ドラマが放送されているのです。朝9時になったらこのチャンネル、12時になったらこのチャンネルと、視聴習慣がついている。一日中、韓国ドラマばかり観る年配の方がたくさんいるくらいです。さらにコアな人たちは、有料チャンネルを利用します。そこに加入して、最新のドラマを見るわけです」

「最後に“ファンミーティング”。日本にはドラマの主演俳優と会えるファンミーティングという文化がありません。でも韓国ドラマは大きい作品から小さい作品まで、主演俳優たちが日本に来て、ファンと触れ合う機会がたくさんある。画面越しにしか接することができない憧れの俳優を間近で見る体験をしたら、ますますのめり込むでしょう」

『雲が描いた月明かり』『ボーイフレンド』などで人気絶頂のパク・ボゴムも2月に日本でファンミーティングをしていたが、トップスターと身近に接する機会があることは、ファンには非常にうれしいことだろう。

こういった要素が複合的につながっているため、韓国ドラマが日本でブームを起こし、今でも人気といえるのだ。

今やブームではなく、完全に日本のエンターテイメントのひとつの「ジャンル」として定着した韓国ドラマだが、まったく課題がないわけではない。

課題も少ないわけではない

日本では韓国ドラマ視聴者の年齢層が、それほど広がりを見せていないのだ。日本の若者はK-POPは好むが、韓国ドラマは「お母さん世代が観るもの」と感じているそうで、確固たるジャンルとして定着しているがゆえに視聴者層も固定化しているのだ。

そして、そんな視聴者たちが望むのは、『冬のソナタ』のような“古典的な韓国ドラマ”。そこに現在韓国で制作されているドラマとのギャップが生じている。

「最近の韓国ドラマはラブがない、ジャンルモノ、職業モノの作品が増えています。それが既存の日本の韓ドラファンにはなかなか響きません。それは日本のテレビ局も同じで、“もっと胸がキュンキュンするような作品はないの?”と。私も何度かジャンルモノにチャレンジしているのですが、難しいところです」

(参考記事:日本で人気を呼んだ韓流ドラマの変遷は?【日本の中の韓流、15年目の現在地】)

また、他の韓流コンテンツに比べて、政治的な影響を受けやすいのも韓国ドラマならではの課題かもしれない。日本のK-POPファンは政治とコンテンツを完全に切り分けているが、ドラマファンは若干違う。

コンテンツセブンの成七龍さん(撮影協力:スポーツソウル)
コンテンツセブンの成七龍さん(撮影協力:スポーツソウル)

「いくらエンタメといえども影響はあります。日韓関係が悪化すれば、韓国ドラマに対しての“しんどさ”を持つ人が出てきます。年配の方々だからか、政治的なことには敏感です。日本のテレビ局にも、“なぜ韓国ドラマを流すのか”といったクレームが来るかもしれません。最近はあまりにも日韓関係が悪いので、なんとか改善されてほしいですね」

『冬のソナタ』から15年、ブームを超え、日本でひとつのジャンルとして確立された韓国ドラマ。今後いくつかの課題を解決して、その立ち位置をさらに磐石なものにするのか注目してみたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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