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「ケンタは来季のサイ・ヤング賞有力候補」とMLB経験16年のベテラン左腕が断言

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
来季のサイ・ヤング賞有力候補に挙げられたツインズの前田健太(撮影:三尾圭)

 メジャーリーグで16年間の経験を誇るベテラン左腕のリッチ・ヒルが、「フルシーズンを戦う来季、彼(前田健太)はアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞の有力候補の一人だ。彼は本来あるべき姿を取り戻した。彼の才能と投球術は無限の可能性を持っている」とマエケンが今季以上の活躍をして、日本人投手初となるサイ・ヤング賞を手にすると断言した。

 ヒルはメジャーで16年間プレーしただけでなく、何人ものサイ・ヤング賞投手の投球を近くで見続けてきた。

 2005年にシカゴ・カブスでデビューしたヒルだが、そのときチームメイトだったのがサイ・ヤング賞を4度取っているグレッグ・マダックス。精密機械と呼ばれた制球力と緩急をつけた投球で打者を手玉に取り、近年最高の投手の一人に挙げられる。

 2013年にクリーブランド・インディアンズで一緒にプレーしたのは、14年と17年の2度サイ・ヤング賞に選ばれたコーリー・クルーバー。今季、ダルビッシュ有との争いを制して、ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞を獲得したトレバー・バウアーはこの2013シーズンはインディアンズとマイナーを行ったり来たりして、ヒルと一緒にプレーしている。

 2015年はボストン・レッドソックスでリック・ポーセロとチームメイトで、ポーセロは翌16年にサイ・ヤング賞を獲得。

 2016年シーズン途中から19年までは、ロサンゼルス・ドジャースの先発ローテーションに加わり、サイ・ヤング賞を3度受賞しているクレイトン・カーショウとも一緒にプレーした。

サイ・ヤング賞投手とのプレー経験が多いリッチ・ヒル(写真:三尾圭)
サイ・ヤング賞投手とのプレー経験が多いリッチ・ヒル(写真:三尾圭)

 これだけの数のサイ・ヤング賞投手と一緒にプレーをして、彼らのマウンド上、そして舞台裏での姿を観察してきたヒルの言葉なので、説得力は高い。

 ヒルと前田はドジャースで3シーズン半をチームメイトとして過ごし、昨オフにヒルはフリーエージェント(FA)として、マエケンはトレードでミネソタ・ツインズに移籍。ヒルは誰よりもメジャーでのマエケンを見てきた投手でもある。

 「投げている球種はドジャース時代と変わらないが、その使い方が変わった」とヒルは説明する。

 「今季は相手打者が右でも左でも関係なく圧倒した」とヒルはマエケンが成長した部分を語るが、確かにドジャース時代は左打者を若干苦手にしていたイメージはあった。

 2019年は右打者相手の被打率は.158と優秀だったのに、対左打者は.247と9分ほど高く、三振/四球比率は左が2.17で、右は倍以上の4.95だった。

 それが今季は対右打者が.149と昨季よりも少し良くなり、左打者も.182と2割を切った。三振/四球比率は左が4.56で、右は39.00(39奪三振、1与四球)と驚愕の数字を残した。右打者はほぼ完璧に抑え、左打者も一流投手並に抑えたのが今季のマエケンだった。

 「一球一球の裏にある信念は驚くべきものだった」とマエケンの投球術をヒルは絶賛する。マダックスと一緒にプレーしたヒルが感心するほどに、マエケンの投球術はマダックスに近付いてきている。

 前述したように、クルーバーとポーセロはヒルが移籍してチームを離れた年の初めてのサイ・ヤング賞を獲得。ツインズと1年契約を結んだので、今オフは再びFAとなり、チームを移籍する可能性は高い。来季開幕前に41歳になるヒルは現役続行を望んでおり、レッドソックス復帰など複数のチームが獲得に興味を示している。

 「二度あることは三度ある」とばかりに、マエケンには来季こそサイ・ヤング賞を手にしてもらいたい。

 このヒルの発言は、私が写真を寄稿した「Bet America」のリモート・インタビューでのもの。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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