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不正行為から復帰の韓国女子ゴルフ“年間女王”は竹田麗央や山下美夢有のライバルになり得るか?

金明昱スポーツライター
韓国ツアー3冠のユン・イナは米ツアー最終予選会に出場する(写真・KLPGA)

 今季の韓国女子ゴルフツアーで大賞(年間MVP)、賞金女王、平均ストローク1位の3冠を手にしたのは21歳のユン・イナだった。2022年の同ツアーで誤球を隠した不正行為で出場停止が続いていたが、今季の国内開幕戦から1年8カ月ぶりに復帰し、優勝1回、トップ10入り14回と圧倒的な強さで頂点に立った。

 当時は復帰へ懐疑的な見方も多かったが、結果を残したことでそうした声も少しずつ薄れていった。先月27日に行われた「KLPGA大賞 授賞式」でユン・イナは「2024年は私にとって忘れられない1年になりそうです。この場を借りて、一番感謝の気持ちを伝えたい人たちがいます。我慢強く、常に側にいてくれた両親には感謝を伝えたい。そして絶対に欠いてならないのはファンの方たち。私にとっては家族のような存在です」と涙を流していた。

申ジエからたくさんのアドバイスをもらう

 韓国ツアーのゴルフ関係者によると、一時は日本や米国でのツアー参戦も構想にあったようだが、あえて国内ツアー復帰を選んだ。もちろん国内では猛烈な批判とバッシングがあったことは、想像に難くないが、あえて茨の道を選択した。

ツアー出場停止中には、元世界1位の申ジエとはオーストラリアで合宿したことも明かしており、彼女からたくさんのアドバイスをもらっている。

 今年4月の全米女子オープン日本予選に出場していたユン・イナに会った時、こんな話をしていた。

「申ジエさんと過ごした時間は本当に貴重で、いいアドバイスをたくさんしてくれました。ゴルフや生活に関することもそうですが、これから続く人生についての話が響きました。もっとも記憶に残っているのは、『自分の悪い部分や罪は認めたうえで、これからどのように行動するのかが重要。これから模範的な人間になること』という言葉。本当に申ジエさんのような選手にならないといけないと思いました。もちろん簡単なことではありませんが頑張っていきたいです」

とはいえ、実戦から1年以上も離れたあとのツアー復帰から、実力で3つのタイトルを取ったのだから、忘れられない1年になって当然だろう。

米ツアー最終予選会に出場するユン・イナ「合格する自信はある」

 ユン・イナの人気や注目度は高く、もちろんこのまま来季も韓国ツアー人気を牽引する存在になれるのは間違いない。ただ、次の挑戦は米女子ツアーと早くから気持ちは傾いていた。12月5日から9日まで、アラバマ州のマグノリアグローブGCで行われる米女子ツアー最終予選会(Qシリーズ)に出場する。すでに先月28日には米国に飛び、現地入りしているが、韓国を離れる前に韓国メディアに向けて「合格する自信があるし、LPGAでもやっていける自信があります。結果がでるまで努力を続けていきたいし、努力し続ける自信もあります。来年は新人賞獲得のためにがんばりたい」と強気のコメントを残している。

 今季の「TOTOジャパンクラシック」で優勝した年間女王の竹田麗央は来季米ツアー出場権をすでに獲得しているが、今週から始まる米女子ツアー最終予選には、多くの日本人選手が出ることでも注目度が高い。そのほか山下美夢有、岩井明愛、岩井千怜、吉田優利、原英莉花、山口すず夏、馬場咲希らが出場するが、ここに韓国ツアーからは“年間女王”のユン・イナのほか、2次予選を突破した22歳のシン・ビと26歳のイ・セヒが出場する。

“飛ばし屋”ユン・イナのスタッツは?

 日本選手の動向とともに、気になるのはユン・イナの成績だ。今季の韓国ツアーでの主なスタッツを見ると、平均ストローク1位(70.0526)、ドライビングディスタンス2位(254.9820ヤード)、パーオン率2位(78.3636%)、サンドセーブ率1位(70.5882%)。一方で、フェアウェイキープ率は63位(69.1756%)、平均パット数は31位(29.9079)。

 ドライバーは飛ぶがティショットの精度が課題で、パターの調子もいいとは言えない。ただ、アイアンショットの精度とバンカーに入れてもきっちりとピンに寄せられる技術は高い。米ツアーの最終予選会で飛距離は武器となるが、ティショットの精度をどれだけ上げられるのかが、上位フィニッシュのカギとなりそうだ。

 同予選会は上位25位までの選手が限定的な出場資格を手にいれられる。無事に出場権を手にすれば、来季米ツアーでは日本選手のライバルになるのは間違いないだろう。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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