【ポメラ】先代から6年ぶりに登場した正常進化モデル。DM250は“令和のデジタル原稿用紙”である!
ポメラは2008年の初代モデル発売以来、文章を書く人に愛されてきました。
職業的なライターや小説家などが、文章を書くことに特化したこのガジェットを支持してきました。
そのポメラの最新モデルDM250がこの7月12日に発表されました。先代DM200から実に6年ぶりの新製品となります(※1)。DM250は、ノートPCのようなスタイルのDM200を正常進化させたモデルです。
※1 この間には折りたたみモデルDM30も登場。もともとポメラは折りたたみ式のキーボードに特徴があり、DM30はそれを継承した久しぶりのモデルという意味もあった。
こんにちは。デジアナリスト・手帳評論家のたてがみたつひこです。
今回はポメラDM250の本質について考えてみたいと思います。
結論から言えば、これは“令和のデジタル原稿用紙”ではないかと思います。
といっても何のことだか分からないので、順に説明していきましょう。
まずは今回の機種のスペックと改良点、特徴について。
DM200からの正常進化
サイズは263(W)×120(D)×18(H)とDM200とまったく同じです。筐体はほぼ踏襲されたわけです。ともあれ中身は新設計だそうです。重さは620gと40g増えました。その代わりと言うべきか、バッテリー駆動時間は24時間と先代モデルから25%アップ。充電用の端子はMicro-USBから、より汎用性の高いUSB-Cが採用されました。さらに本体メモリーは128MBから、1.3GBに。1つのファイルの文字数の上限は10万字から20万字になりました。
ソフトウェア面では、日本語入力プログラムのATOKをさらに改良・強化。ATOKはパソコン用のIMEとしても定評のあるソフトウェアです。その歴史は、Windows登場よりも前、MS-DOS時代にまで遡ることができます。古くからのパソコンユーザーには絶大な信頼を誇るものです。長い年月の間に日本語入力用ソフトとして改良・進歩してきた経緯があります。
さらにスマホ連携アプリ「pomera Link」が改良されました。これまではポメラで作成した文書は専用アプリに送る事しかできませんでした。
今回の改良によって、ポメラとスマートフォンとの間で双方向に文書をやりとりできるようになりました。
バックアップ領域の新設によるゴミ箱機能や、シナリオモードなども追加されました。おおよそ文章を書く人にとっての各種の便利な機能が、強化・追加されているわけです。
で、これらのことをトータルで考えると、DM250は令和の原稿用紙だと思います。
念のために最初に断っておくと、原稿用紙の表示モードがあることは、あまり大きな理由ではありません。この機能は、以前のポメラから搭載されている、いわば伝統みたいなものです。
現時点でのポメラとはなにか?
どこが令和の原稿用紙なのか。以下に説明していきます。
まず令和です。これは2022年の日本ということです。日本語を使う人が多く住んでいる。また、インターネットやそのためのWi-Fiなどのインフラがあり、ビジネスパーソンならば(それ以外の人も)スマートフォンを持っている。そういう国の時間という意味です。
さらに言えば、パソコンとそれを取り巻く技術が発達・成熟している時代でもあります。パソコン的なもの(液晶ディスプレイのような表示装置と、入力装置としてのキーボード、またソフトウェアとデータの保存・格納装置としての記録媒体)の製造技術やソフトウェアの技術が普及・成熟しており、それなりに安価に利用・調達できることでもあります。
では、どこがデジタル原稿用紙か。
これは、職業的に文章を書く人のためのツールという意味です。
原稿用紙には、文字を書くための記録媒体という基本的な性格があります。
歴史的には、ポメラは小説家やライターなどに愛用されてきました。また、今回のモデルに至るまでに磨き上げられた各種の文書作成や入力をサポートするソフトウェアの存在もまた、デジタル原稿用紙であることのあかしなのではないと思います。
初代モデルは社外取締役の強い推しがきっかけで誕生
そもそも2008年の初代モデル登場前夜、ポメラの製品案は社内ではあまり芳しい反応ではなかったと言います。そして当時の社外取締役の1人だった大学教授が「いくら出してもいいから、これは欲しい」と言ったことがきっかけで、開発・誕生したという経緯があります。つまり、そもそも職業的に文章を書く人に支持される素地がこの時点でありました。また発売後は、ライターや小説家といった人たち(およびその予備軍)に支持されてきました。
文章を書くための機能や支援ソフトなどをひとまとめに搭載=デジタル原稿用紙
そしてたとえば、日本語入力プログラムのATOKの改良・強化(ATOK自体は以前のポメラでも採用)や今回のバックアップ・ゴミ箱の機能などは、すべて原稿を書くために採用されたものだと言えます。
さらに、DM200以来のアウトライン機能や、今回搭載されたシナリオモードなど、いずれも職業的に文章を書く人に役立つ機能です。それぞれについてやや簡素だという批判もあるかもしれません。ですがプレーンだからこその使いやすさはあります。
内蔵された「角川類語新辞典.S」「明鏡国語辞典 MX」「ジーニアス英和辞典 MX」「ジーニアス和英辞典 MX」も、執筆のサポートに役立つものです。
そしてこれが一番大事な点ですが、基本的には文字を書くという機能に特化していることがあげられます。応用としてはカレンダー機能や、アウトライン機能を使ったタスクの整理などもできます。ただこれらはあくまで副次的、あるいは応用の機能です。
これらの仕様から言えるのは、このポメラ、DM250が本質的に、職業的な文章を作成するためのツールだということです。
Webブラウザもメーラーもなく、搭載されているWi-Fi関連の機能も、あくまでもファイルのやりとりのみに機能が制限されています。またそもそも作成されるファイルもテキストファイルです。これこそが、ポメラが“デジタル原稿用紙”と呼べる証ではないでしょうか。
キーボードでの文字入力を基本としつつ、デジタル的な各種しくみ(ATOKの校正支援、バックアップ、シナリオモードetc)や、リファレンスとしての国語事典など。原稿を書くためのツール、環境一式を620gのクラムシェル型の筐体に盛り込んだツール。これこそが令和のデジタル原稿用紙と言えるのではないかと思うのです。