コロラド州に奇妙な竜巻発生、その名は「ランドスパウト」
7日(月)アメリカ・コロラド州の竜巻常襲地帯に、奇妙な形をした竜巻が発生しました。この竜巻は一体何ものなのでしょうか。
竜巻の詳細
現地時間7日(月)夕方、コロラド州デンバー近くのウェルド郡に巨大な竜巻が発生しました。2軒の家屋が倒壊したほか、複数の家屋が被害を受けました。幸い死者やけが人は出ませんでした。瓦礫の下からは、かわいい子猫も救出されています。
この竜巻は30分間にわたり、10キロ近く移動したようです。報道によれば、40キロ先からも見ることができたのだそうで、多くの人々がその姿をSNSに投稿していました。
下がその竜巻の映像です。
「ランドスパウト竜巻」
全体を見てみると、なんだか妙な形をしていることに気が付きます。
下部は赤茶色の砂埃が筒状に回転していますが、その上部は白いロープ状になって雲につながっています。通常テレビなどでよく見る竜巻は、上空ほど太く、地面に近づくほど細い、逆三角すいの形が多いですが、今回の竜巻はどうやら様子が違うようです。
この竜巻は発生過程も一般の竜巻とは異なっていました。地面付近で渦を巻き始め、それがどんどん上空へと伸びていって、雲に達したようです。多くの竜巻は「スーパーセル」と呼ばれる超巨大な積乱雲が親雲となって、空から地面に向かって竜巻が下りてきます。
こうした竜巻はアメリカでは「ランドスパウト竜巻」と呼ばれます。1985年アメリカ人気象学者のハワード・ブルースタイン博士が命名したとも言われています。
ランドスパウト竜巻は比較的弱いものが多く、壊滅的な被害が出ることは多くありません。今回の竜巻も、見た目こそ度肝を抜く迫力でしたが、推定風速は44メートルと、6段階ある竜巻のスケールで下から2番目の「EF1」でした。
世界で最も竜巻が発生しやすい地域
ところで、この竜巻が起きたコロラド州ウェルド郡は、全米でも一位、二位を争う竜巻常襲地帯です。つまり、地球上でもっとも竜巻が発生しやすい場所と言っても過言ではないでしょう。
理由はその地理的要因にあります。すぐ西にはロッキー山脈がそびえ、そこから吹き下ろす乾いた西風が、メキシコ湾を起源とする暖かく湿った空気とぶつかりやすい位置にあるのです。「デンバー収束渦ゾーン」などという難しい名前がつけられるほど、竜巻が発生しやすい地域なのです。
そのうえ、ウェルド郡は10,000平方キロと面積も大きいので、その分発生数も多くなります。
竜巻の危険地帯に人が住む理由
余計なお世話とは思いますが、なぜそんな危険な地域に人々は住むのでしょうか。同郡の人口は25万人以上とされています。
こんな研究があります。アイオワ大学などが2013年に発表した論文によれば、竜巻の直撃を受けた地域の住民は、直撃を受けたことのない地域の住民と同程度に「将来、竜巻には直撃されない」と考える傾向があるといいます。
つまり、一度危険な目に遭ったのだから、もう再び遭遇することはないだろうと、楽観的な考え方をするのだそうです。一度パチンコで勝つと、また勝つような気がするという心理とは正反対です。人は都合のいい生き物なようです。
地震、火山、台風と危険だらけの日本に住み続けるのも、同じような理由が隠れているということでしょうか。