焼肉屋と思いきや定食屋？横手の老舗食堂『やき肉太郎』とは？

「おおきに」「ありがとね」

店主のこんな言葉が聞きたくて、常連さんは足を運ぶ。『やき肉太郎』は横手で40年以上の歴史を重ねた「愛され食堂」だ。11月某日、今日も元気に腹を空かせた私は国道13号線から脇道に入り噂の店へと向かった。今日は昭和から続くこの老舗食堂で、のんびり昼飯といこう。

店の入口から漂うのは、長い時間をかけて積み上げてきた歴史と焼肉の良い匂いだ。腹ペコの私は食欲をそそるその匂いに誘われるまま、年季の入った青色の暖簾をくぐり抜けた。

店内に入ると、店主のお母さんと娘さんが迎えてくれた。昭和感あふれる店内の石油ストーブにはヤカンが置かれ、壁には品書きと一緒に栓抜きがスタンバイ。この栓抜きを使い、慣れた手つきで瓶ビールを開ける常連さんの姿が目に浮かぶ。

品書き

焼肉定食

A定食（牛ロース）：1,100円、B定食（豚ロース）：880円、牛バラ定食：780円、豚バラ定食：680円

各種定食

エビフライ定食：880円、トンカツ定食：780円、チキンカツ定食：780円、ホルモン定食：680円、レバ焼定食：680円、野菜いため定食：580円、唐揚げ定食：680円など。

ご飯物

牛丼：580円、肉丼：580円、カツ丼：580円、親子丼：530円、チャーハン（スープ付き）：430円、カレーライス：430円、カツカレー：580円など。

麺類

ラーメン：380円、チャーシューメン：530円、焼肉ラーメン：530円、味噌ラーメン：600円、ホルモンラーメン：600円など。

店名からは焼肉屋さんを思い浮かべるが、その正体は100種類近くの豊富なメニューを誇る定食屋さんだ。そして特筆すべきは、その学食並の安さである。チャーハンはスープ付きで430円、ラーメンにいたっては380円だ。

定食から麺類まで充実のラインナップだが、今日の私はガッツリ肉気分。牛バラ定食でファイナルアンサーだ。

こういうのがウマいのよ！横手の昭和な食堂『やき肉太郎』の牛バラ定食とは？

牛バラ定食が到着。さっそく私は甘じょっぱいタレをまとった焼肉に箸を伸ばした。そしてすかさず白飯だ。ウマい。こういうのがウマいのよ。グルメ記事としては、もっとシャレた表現をしたいところだが、今日はきっとこれで伝わるはずだ。

肉、メシ、肉、メシ、時々味噌汁。腹と幸せを満たすお馴染みのルーティン。肉もウマいがご飯の炊き加減も抜群で、味噌汁も良い塩梅。小上りのテーブルに置いてあったスポーツ新聞の一面は、メジャーリーガーの大谷翔平だったが『やき肉太郎』も安くてウマいの二刀流だ。

店内には私のほかにも数名の常連さん。小上りのお客さんは、新聞をお供に焼肉定食。カウンターのお客さんは、お店のお母さんと談笑しながら絶賛チャーハン中だ。思い思いに過ごす人情食堂の良き風景。そんな私もすっかりお腹いっぱいだ。

「おおきに」「ありがとね」

お腹を満たしたお客さんに、そう声をかけるのは優しい雰囲気があふれる店主のお母さん。このお母さんの人柄に惚れて、店に通う常連さんも多いようだ。

「元気にいってらっしゃい」

そして帰り際、そう私に声をかけてくれたのは、お母さんと二人三脚で店を営む娘さんだ。

優しいお母さんと明るい娘さんが織り成す温もりあるひととき。横手でまたひとつ「良い店」に出会った私である。