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WBC準決勝で日本を相手に投げるのはサイ・ヤング賞投手……ではなくてその代役

宇根夏樹ベースボール・ライター
タナー・ロアーク(ワシントン・ナショナルズ)Jul 1, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

もしかすると、WBCの準決勝で日本の打者が対戦するのは、サイ・ヤング賞投手のマックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)だったかもしれない。

昨年11月、シャーザーは2013年に続いて2度目のサイ・ヤング賞を受賞する直前に、WBCへの参加を表明した。ところが、右手薬指の亀裂骨折により、年明け早々に出場辞退となった。代わってロースター入りしたのが、シャーザーのチームメイト、タナー・ロアークだ。準決勝の日本戦で、ロアークは先発マウンドに上がる。

ナショナルズには、シャーザーだけでなくスティーブン・ストラスバーグもいる。ロアークの立場は、先発3番手もしくは4番手といったところだ。今回のWBCでは、1次ラウンドのドミニカ共和国戦でリリーフとして1登板しただけ。この試合では1.1回を投げ、降板時に残した走者を含めて3点を失った。

だが、ロアークは昨シーズン、200イニングをクリアし、2点台後半の防御率を記録した。これはシャーザーと同じだ。ロアークは210.0回で防御率2.83、シャーザーは228.1回で防御率2.96だった。ロアークはサイ・ヤング賞の投票でも、ピッツバーグ・パイレーツのビート・ライターによる5位票の1ポイントのみながら、10位に入った。ちなみに、ストラスバーグは200イニングどころか規定投球回にすら届かず、防御率3.60に終わった。

ロアークは、シャーザーやストラスバーグのような快速球は持たず、抜群の制球というわけでもない。昨シーズンの奪三振率7.37と与四球率3.13は、規定投球回以上の50位に入っておらず、後ろから数えた方が早い。昨年4月には1試合で15三振を奪ったが、ロアークの持ち味はそこではなく、2シームの速球にスライダー、カーブ、チェンジアップ(と4シームの速球)を織り交ぜ、ゴロを打たせる投球にある。

昨シーズン、ロアークが打たせた併殺打(GDP)28本は両リーグで3番目に多く、併殺打率16.3%(併殺打/併殺打の機会)は9位にランクインした。また、全打席における本塁打率2.0%は6番目に低く、長打率4.6%はベストだった。

侍ジャパンも、下手をすると、塁上を賑わせながらホームが遠いということになりかねない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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