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スピードスターのハミルトンが驚きの盗塁。捕手が投手に返球する間に、二塁から三塁へ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ビリー・ハミルトン(シンシナティ・レッズ)Jun 29, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ビリー・ハミルトン(シンシナティ・レッズ)が走りまくっている。前半戦の44盗塁は両リーグ最多。2位のディー・ゴードン(マイアミ・マーリンズ)より11盗塁も多く、レッズの盗塁の半分以上はハミルトンによるものだ。ハミルトンより盗塁が少ないチームは14を数える。

ハミルトンは2012年にA+とAAで計155盗塁を稼ぎ、マイナーリーグの年間最多記録を塗り替えた。翌2013年はAAAとメジャーリーグで計88盗塁。開幕からメジャーリーグでプレーした昨シーズンは、盗塁死こそ両リーグ最多の23度ながら、ゴードンの64盗塁に次ぐ56盗塁を記録した。

そこから、ハミルトンの盗塁は進化している。今シーズンの盗塁死は6度しかなく、これはゴードンの半数に過ぎない。88.0%の成功率は、盗塁+盗塁死=20度以上の13選手のなかで最も高い。

さらに、ハミルトンの盗塁には数や成功率以上の驚きもある。7月11日のマーリンズ戦で二盗を決めたハミルトンは、その2球後、投球を受けた捕手が投手に返球する間に、三塁を陥れた。確かに、J.T.リアルミュートが両膝を着いたまま投げ返したボールは、ゆっくりとした山なりだった。とはいえ、これはルーティンの範疇で、落球や悪送球があったわけではなく、ハミルトンがスタートを切ったのはリアルミュートが投げた後だった。打者は左打席にいて、リアルミュートとリードをとっていたハミルトンの間に、視界を遮るものは何もなかった。

また、6月8日のフィリーズ戦で出塁したハミルトンは、次打者の3球目に二盗、6球目に三盗を決め、7球目には本塁も陥れた。フルカウントから打者がハーフスウィングをして、捕手は手前に落球。三振と思った捕手が拾って一塁へ投げるや、ハミルトンはホームへ突っ込んだ。結局、スウィングはしていないということで打者は四球に。一度は記録されたハミルトンの本盗もフィルダース・チョイス(野選)に変更されたが、そのままであれば、2011年のゴードン以来4年ぶりの「二盗→三盗→本盗」となっていた。

もっとも、ハミルトンはオールスター・ゲームには選ばれていない。それもそのはず、あまりにも出塁率が低いのだ。昨シーズンも出塁率は3割に届かなかったが、今シーズンはさらに落ち込み、両リーグ・ワースト10位の.269しかない。ハミルトンは5月半ばにリードオフから外され、現在は打順9番を定位置としている。

今シーズンのハミルトンは、80盗塁を超えるペースだ。出塁率さえ上がれば、近い将来、1987年のビンス・コールマンを最後に途絶えているシーズン100盗塁も軽々と達成できるだろう。ちなみに、ハミルトンが塗り替えたマイナーリーグの年間最多記録は、コールマンが1983年に樹立した145盗塁だった。

メジャーリーグ13年間で752盗塁を稼いだコールマンも、出塁率はそれほど高くなかった。それでも、通算出塁率は.324。3年連続100盗塁以上の1985~87年も、シーズン出塁率はすべて3割をクリアし、3年間で最も低い1986年でも.301だった。

これまで、シーズン100盗塁は20度か21度――19世紀の記録に不確かな部分がある――達成されているが、1986年のコールマンの出塁率はそのなかで最低だった。つまり、シーズン出塁率3割未満で100盗塁に到達した選手は、過去に一人も存在しない。盗塁成功率を上昇させたハミルトンは、それに続いて出塁率も上げることができるだろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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