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アマゾンの投資はまだまだ続く 1〜3月期はコスト増で37%減益も投資家は楽観的

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米アマゾン・ドットコムが先週発表した今年1〜3月期の決算は、売上高が160億7000万ドル、純利益が8200万ドルだった。

売上高は市場予想を若干下回ったものの、家電や日用品販売が好調で1年前から22%増えた。

また純利益は投資コストがかさんで同37%減と大きく落ち込んだが、減少幅は市場予測を下回った。これを受け決算発表日のアマゾンの株価は時間外取引で一時上昇した。

減益続きでも株価が上昇した理由

アマゾンの四半期決算は昨年4〜6月期まで6四半期減益が続いた後、7〜9月期は2億7400万ドルの赤字を計上し、その後2四半期連続で減益となっている。

こうして見るとアマゾンとは実に不思議な企業と言えるのかもしれない。例えば米ニューヨーク・タイムズは、アマゾンの116倍の利益を出す米アップルは株価が過去1年間で33%下落していると指摘している。これに対しアマゾンの株価は38%上昇している。

アップルは、成長鈍化への懸念を払拭することができず、株価の低迷に苦しんでいる。一方でアマゾンは極めて少ない利益ながら株価は上昇している。これはアマゾンが発するメッセージが相当の力を持って、株主を説得しているからだとニューヨーク・タイムズは伝えている。

そのアマゾンのモットーは将来の成長に向けた積極的な投資だ。ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は今はまだ利益を追求する時でないとし、攻めの手を緩めようとしない。

例えばこの1〜3月期を見ると、売上原価、物流設備、マーケティング、IT投資やコンテンツにかかる費用がいずれも増加し、これらを含めた営業経費は1年前から22%増えた。その額は158億8900万ドルで、売上高に占める割合は実に99%となっている。中でも物流設備の費用が1年前から39%増、IT投資やコンテンツの費用は46%増と大きく増えている。

米ウォールストリート・ジャーナルによると、昨年末におけるアマゾンの配送センターの数は89カ所。今年は米国の3カ所を含めてさらに拡大する計画だ。

アマゾンには「アマゾン・プライム」と呼ぶ、年間79ドルの商品配送優遇プログラムがあり、同プログラムの会員には追加料金なしで、映画やテレビ番組が見放題になる映像配信サービスや、電子書籍がレンタルできるサービスなど様々な特典を付けている。

「アマゾン・プライム」が収益拡大のカギ

同社はこのプログラムが将来の収益拡大の基盤になると見て、会員獲得に力を入れている。そして同社のコスト増の要因の1つがこのプログラムのサービス拡充にあると言われている。

例えば、配送センターの拡充は、顧客に迅速に商品を届けるのが目的。無料の映画や電子書籍を増やすのは利便性の向上が目的。アマゾンが1〜3月期に用意した無料視聴の映像作品の数は約3万8000本、無料貸し出しの電子書籍の数は約30万冊。この数は四半期ごとに増えており、これに伴ってコンテンツ調達にかかるコストも増大しているというわけだ。

なおニューヨーク・タイムズによると、アマゾンには幹部がこれまで何度も繰り返している言葉があるという。

それは「顧客第一主義が株主の継続的な利益につながる唯一の道」というもの。

今回の決算発表でも最高財務責任者(CFO)がこの言葉を述べたという。顧客サービス拡充に向けた同社の巨額投資は今後もしばらく続きそうだ。

JBpress:2013年4月30日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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