2時間歩いても行きたい!濁り湯、透明など複数の温泉と、もふもふわんこに会える秘湯 奥鬼怒の日光澤温泉
関東最後の秘湯と呼ばれる栃木県日光市の奥鬼怒温泉郷。その理由はこの土地の恵まれた自然環境を次の世代へ残すため、旅行者がマイカーでアクセスすることができないから。
この奥鬼怒温泉郷には個性豊かな4軒の宿がありますが、その中から最も素朴で自然を身近に体感できる「日光澤温泉」をご紹介します。
女夫渕駐車場から2時間歩いて「日光澤温泉」へ
取材でお話を伺った際に、「たまに知らないで予約しちゃう人がいるので、歩かないと来られない宿だって、ちゃんと書いてくれると助かります」と女将さんに言われました。
そうなのです。日光澤温泉はマイカーでアクセスできないだけでなく、お宿の送迎バスなどもありません。雨でも雪でも泊まる人は、自分の足で歩いていかなくてはなりません。
玄関口となる「女夫渕駐車場」までは路線バスがありますが、ここからは徒歩。コースは森の中の比較的高低差のないところが多く、一部、階段やゆるやかな登りがあります(駐車場を出てすぐに急な階段がありますが、ここは車道から迂回して、途中から遊歩道に合流することもできます)。
そうは言っても舗装路ではありませんから、足元は登山用の靴を履くことをおすすめします。また雨具や防寒着もきちんと準備しましょう。なめてかかって良い道ではありません。
遊歩道を進むと、まず奥鬼怒四湯の一つ、「八丁の湯」が見えてきます。次に「加仁湯」。最後の「加仁湯」から「日光澤温泉」までの坂道が地味にきついです。あと少しと思いながら音を上げそうになります。
「日光澤温泉」に到着
風情ある木造建築
坂を上り終えて到着すると、山小屋風の木造建築に感激します。なんだか昭和の時代の映画に出てきそうな佇まい。
実際に入り口付近の建物は、今のご主人夫婦の祖父の代、昭和30年ごろに建てたものだそう。この土地の木を製材して乾燥させて使っているので、とても丈夫だといいます。木材自身がこの土地の風土を知っていて耐えることができるのでしょう。
看板犬のサンボ
チェックイン手続き中に可愛らしいわんちゃんが出てきて歓迎してくれました。「日光澤温泉」の看板犬、サンボです。
タイトルに「わんこに会える」と書いてしまいましたが、サンボの体調やご機嫌によっては必ずしも会えないこともあるので先に書いておきます。
また以前はチャング、わらび、サンボと三匹の犬がいましたが、現在はサンボ一匹が看板犬を務めています。
「日光澤温泉」の館内と客室
ノスタルジックな館内を案内
木の風合いが生きているような館内は、ギシギシと床板が鳴るのも愛おしい。
玄関入ってすぐのお部屋には薪ストーブがありました。談話室として自由に使えるようです。
食堂の電球もなんだかノスタルジック。食堂の奥には囲炉裏のお部屋が見えます。
こちらも談話室として使える共有スペースです。
談話できるお部屋はありますが、玄関にはここは遊興の場ではないと書かれています。大声で騒いだり他のお客さんの迷惑になるようなことは慎みましょう。
お手洗いや洗面所は共通です。洗面所のコップをセットしてある台などはご主人の手作りだそう。ちょっと可愛い。
客室にはコタツも
5月末の訪問でしたが、お部屋にはストーブだけでなくコタツがありました。山の中は夜は冷えます。コタツはとてもありがたい。寝る時のお布団はセルフで敷きます。
お部屋にはコンセントもあるのでスマホの充電も安心です。場所にもよるのかもしれませんが、私の泊まったお部屋からはdocomoもauも電波が繋がっていました。
複数の源泉に入れるお風呂、露天風呂は混浴
男湯と女湯の入れ替え時間と、混浴露天風呂の女性専用時間
浴室へは階段を下りて行きます。向かって右が男湯、左が女湯で、露天風呂は混浴です。そして夜の19時から21時に限り、内湯の男女が入れ替えに、露天風呂が女性専用になります。
女性専用タイムがあるので、混浴でも女性が安心して入れますね。
各お風呂と使っている源泉の種類
さて、ここで「日光澤温泉」のお風呂と使用している源泉を整理したいと思います。
- 【女湯内湯】源泉:日光沢温泉(A)、泉質:ナトリウム―塩化物・炭酸水素塩温泉
- 【男湯内湯】源泉:日光沢温泉(A)・(B)源泉混合泉、泉質:ナトリウム―塩化物温泉
- 【混浴露天風呂(上)】源泉:日光沢温泉(C)・(E)源泉混合泉、泉質:含硫黄―ナトリウム・塩化物温泉(硫化水素型)
- 【混浴露天風呂(下)】源泉:日光沢温泉(D)・千枚岩源泉混合泉、泉質:ナトリウム―塩化物・炭酸水素塩温泉
お風呂は内湯2ヶ所、露天風呂2ヶ所の計4ヶ所。19~21時の間だけ男湯と女湯が交代になり、露天風呂が女性専用になりますので、宿泊すれば男性でも女性でも全てのお風呂に入ることができます。
女湯の内湯
女湯内湯に単独で使っている日光沢温泉(A)源泉は、神霊泉とも呼ばれ、日光澤温泉の源泉の中でも特に色の変化が大きいそうです。
私の滞在時は夕方も翌朝も白濁していましたが、日によっては透明なことも。特に気圧が下がる時や台風の時に透明になる確率が高いとか。温度は70度ほどとかなりの高温なので、加水しても熱いこともあるので入る時は注意してください。
正面のドアから混浴露天風呂に出られますが、19~21時の男女入れ替えで男湯になった時は、露天風呂へのドアに鍵が掛けられて露天風呂には女性しか出られなくなります。
男湯の内湯
男湯の内湯は女湯と比べると少し広いです。お湯は日光沢温泉(A)源泉に、日光沢温泉(B)源泉を混合しています。こちらも内湯から直接混浴露天風呂に出ることができます。男湯女湯切替タイムには、女性のみがこのドアから露天風呂に出られます。
なお、内湯は女湯、男湯、ともに宿泊者専用です。
混浴露天風呂(上)
混浴露天風呂は階段の上と下にあり、こちらは日帰り入浴でも利用できます。日帰り用の脱衣所からすぐなのは上の段の露天風呂。
上の段の露天風呂は、「日光澤温泉」のお風呂の中では硫黄成分が少なく、いつも透明で白濁しません。少しだけ金属のにおいがして、なにより眺めが素晴らしい。お風呂から正面に見える渓谷の岸壁が迫力満点で、紅葉の時期などはまさに絶景ではないでしょうか。
混浴露天風呂(下)
下段の混浴露天風呂は、硫黄成分を多く含みミルキーブルーにも見えるお湯の色が美しい。こちらは白濁していることが多いのですが、やはり台風の時などには透明になることもあるのだそう。それはそれでレアな姿ともいえます。
二層に分かれているのは温度調節のため。湯口のない方の浴槽は、少しだけぬるめになっています。お宿では気温や季節によって仕切りを調節して、寒い時には熱いお湯に入れるようにしてくれています。
「日光澤温泉」の混浴露天風呂は水着は禁止ですが、湯あみ着やバスタオル巻きで入ることができます。バスタオルは持参してもOKですが、300円でレンタルすることもできます。
そして全てのお風呂が源泉掛け流し。自然の恵みである温泉をたっぷりと楽しむことができます。
夕食、朝食、そして名残惜しいチェックアウト
「日光澤温泉」の夕食と朝食
お食事は華美ではありませんが、むしろ1泊2食の宿泊料金からすると、十二分です。
特に山菜や野菜がたっぷりで、おなかいっぱいいただきました。
朝ご飯の野菜も新鮮です。和食ですがハムやサラダには少し洋食っぽさもあります。お味噌汁もなめこがたっぷり。
※食事のメニューは季節などで変更になることがあります。
予約すればお昼のおにぎりも
ところで!
日光澤温泉にはお昼のおにぎりを注文することもできるのです。泊まる前日までに要予約。1人分550円。登山するときなどに助かりますね。
失礼して包みを開いて見るとおにぎりが二つ。これがあれば泊まった翌日も安心して山が歩けます。
チェックアウトのときにもサンボがお見送りに来てくれました。しんみりと名残惜しくなってしまいます。
奥鬼怒温泉郷の中でも、大自然をじっくり体感できる温泉宿「日光澤温泉」。興味を持ったらぜひお出かけしてみてください。予約は電話受付のみ。平日は不定休です。
日光澤温泉
住所:栃木県日光市川俣874
電話:0288-96-0316(問い合わせ・予約受付時間 午後8時まで)
公式サイトURL:日光澤温泉(外部リンク)
日帰り温泉(露天風呂のみ):9時~15時、大人600円、小学生以下400円