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東急歌舞伎町タワーのエントランスはボクシング・グローブによる絵画。そのワケとは?

新川貴詩美術/舞台芸術ジャーナリスト
篠原有司男「オーロラの夢」 撮影 木奥惠三

本日4月14日、新宿に東急歌舞伎町タワーがオープンする。ホテルや映画館、劇場、ライブホール、レストラン、ショップなどから成り立つ複合施設だ。地上48階、高さ約225メートルと、超高層ビルでもある。

この施設の特徴ひとつは、アートが充実している点にある。全26人/組のアーティストやアートユニットらが参加するアートプロジェクトが展開されているのである。その作品が、オープンに先立つ内覧会で公開された。

地上48階、高さ約225メートルの東急歌舞伎町タワー copyright TOKYU KABUKICHO TOWER
地上48階、高さ約225メートルの東急歌舞伎町タワー copyright TOKYU KABUKICHO TOWER

篠原有司男、大巻伸嗣、西野達、開発好明らによる作品が一堂に揃う

1階のエントランスでは、まずは篠原有司男による「オーロラの夢」(冒頭の画像)がお目見え。塗料をつけたグローブでキャンバスにパンチを繰り返す行為「ボクシング・ペインティング」の手法で描いた迫力のある一点だ。

なお、1960年代初頭、篠原は赤瀬川原平や秋山祐徳太子らと、新宿の「ホワイトハウス」(磯崎新の処女設計)に夜な夜な集っては、新しい時代の表現を切り拓いた。「ボクシング・ペインティング」もこの頃から始まった。この超高層タワーは新宿の現代史の一面も伝える。

45階のレストランとバーには、大巻伸嗣の作品「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」がそれぞれ展示。LEDが灯り、表面のモチーフを壁や床に映し出す。朝、昼、夜の時間帯によって、さらには季節に応じて、異なる表情を見せるに違いない。レストランとバーには新宿の街並みが見渡せる大きな窓があり、この作品は新宿の景色とともにある。

大巻伸嗣「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」 撮影 木奥惠三
大巻伸嗣「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」 撮影 木奥惠三

それから、このタワーの中にもうひとつのタワーを設置したのが西野達である。区役所にあった棚や紀伊國屋書店で長年使われてきたテーブル、タワーの建設地付近にあった街灯などを組み合わせ、約7メートル50センチの大型作品に仕上げた。タイトルは、その名も「新宿」だ。

大巻伸嗣「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」 撮影 木奥惠三
大巻伸嗣「Gravity and Grace: Lucidus (Lucida)」 撮影 木奥惠三

ホテルの客室内にも現代アート作品を設置

また、ホテルの客室内にも作品が設置されている。「開発好明アーティストルーム/カセットテープ」は、部屋の壁面がカセットテープ約2000本で覆われている。ラジカセも3台あり、宿泊客は壁のカセットテープを好きに聞くことができる。カセットテープ全盛期の懐かしい音楽を収録したテープをはじめ、開発が新宿を歩き回って録音した街の音も聞ける。

カセットテープで覆われた壁を背にする開発好明 photo takasix
カセットテープで覆われた壁を背にする開発好明 photo takasix

新宿の音といえば、鷲尾友公が手がけた部屋にはレコードプレイヤーとさまざまなレコードがある。部屋ごとにレコードのセレクトが異なり、輸入盤を集めた一室もある。そういえば、かつて新宿は数々の輸入盤屋があり、都内でも屈指の輸入盤のメッカだったことを思い出す。

このように、東急歌舞伎町タワーのアートプロジェクトは、新宿や歌舞伎町のかつてと今を結びつける役割も果たすのだ。

美術/舞台芸術ジャーナリスト

出版社に勤務した後、執筆活動を開始。国内外の現代アートをはじめ演劇やダンスなど舞台芸術に関して、雑誌や新聞、ウェブメディアなどに執筆。主な著書に『残像にインストール 舞台美術という表現』(光琳社出版)、主な編書に『蓬莱山 蔡國強と大地の芸術祭の15年』(現代企画室)などがある。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院情報通信専攻修了。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科非常勤講師。プロフィール画像撮影:松蔭浩之

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